ep.22 アニスの覚悟
俺たちは、テイザークの巡回兵に少し事情聴取をされたが、襲われた側だと証言してくれる住人もおり、その場ですぐに解放された。
この世界では喧嘩で指が飛ぶくらいは、日常茶飯事のようだった。
俺たちは、つけられていないことを確認しながら、レキの言う空き家に入った。
しばらく使われていないようで、机もベッドもほこりまみれだった。
「とりあえず、ここで乗船までの時間を稼ぐ、まずは少し休憩だ」
レキはそう言うと、マントを外し、椅子のほこりを簡単に払うと、座り込んだ。
翌朝、レキが買って来てくれた香草入り豚まんとヤギのミルクを食しながら、俺たちは現状及び今後について話し合っていた。
レキが重々しく口を開いた。
「昨日は、色々とあって言いそびれたのだが、悪い知らせが入っている」
「悪い知らせ?」
「ああ、エムリア王国の情勢だ。
王妃及びロイヤルナイト2名が討ち取られ、宰相は行方不明とのこと」
エルマは、目をつぶりため息をつくと、肩を落とした。
「更に、王妃とロイヤルナイト1名を討ち取った隻眼のアギータことアギータ=ギュスターヴが千人隊長に昇格、帝国領エムリア領主となり、エムリア国民は、三等市民となるそうだ。
まあ、抵抗したらどうなるかの見せしめだな」
「三等市民・・・」
「三等市民って何?」
「帝国の市民には3つの等級があってな。
一等市民は、特権階級や一部の富裕層がなることができる。
二等市民は、いわゆる市民権を持った一般の国民だ。
三等市民は、市民権を持たず、行動にもいろいろと制約が加えられ、税も高い、二等市民と奴隷の間くらいの位置付けだ」
「ひどい・・・」
「ひどいと言えば、アギータ=ギュスターヴだ。
残忍な性格で女、子供にも容赦がない男と聞いている」
「エムリア王国の民が、苦しむことになるの?」
「まあ、間違いないだろうな」
「アニス・・・」
俺は考えた。
(見知らぬとは言えアニスのそしてエルマの祖国だ・・・
あのアギータの変態野郎に好きにさせていていいのか?
俺には武聖の血があるのだろう?
何か出来ないのか?)
(それに今のままでは、俺たちはいつまでも命を狙われ続ける逃亡暮らしだ・・・)
「レキ、エムリア王国を救うことは出来るの?
帝国との戦いを終わらせることは出来るの?」
エルマは驚いたが、表情は冷静を保った。
レキは、静かに目を閉じると何かを考える素振りをし、しばらくして目を開いて言った。
「人が行う物事に必ずというものは無いが、その可能性を拾いに行くことは出来る。
だが、それは行う者の覚悟と行動次第だ」
「それは、私が救うための覚悟と行動をとればいいということ?」
「言うは容易いが、それを実行するのは、並大抵ではないぞ」
「エルマは、私と一緒に来てくれる?」
「私はいつでも、どんな時でもあなたの傍にいます」
「私は救いたい、エムリア王国を!」
レキは、静かに言った。
「本当にそうするのだな?
「本当にそうする」
「分かった、そのためには、まずは距離を取り、力を蓄えることだ」




