ep.21 雨の日の襲撃
俺が家に着くと、雨はどしゃ降りになった。
(あぶね~)
「ん?」
家の中では、エルマとレキが慌ただしく動いている。
俺に気付いたエルマが言った。
「アニス、旅の準備を急いでしなさい」
「どうしたの?」
レキが言う。
「テイザークでお前らのことを嗅ぎまわっている者がいるらしい。
恐らく、帝国の追手だ。
私の掴んだ情報からすると、ここまでたどり着くのも時間の問題だ」
俺は急いで二階に上がると、多くはない自分の荷物を腰に結び付け、すぐに一階へと戻る。
よく見るとレキも帯剣しマントを纏って、荷物を背負い、旅の準備をしている。
「レキも一緒に来てくれるの?」
「友人に頼まれているからな。
それに女二人旅をいつまでもさせる訳にはいかないからな」
「ありがとう、嬉しい」
エルマがレキに聞く。
「この先のあてはあるの?」
「とりあえずは、旧市街の別の空き家で時間を稼ぎ、三日後のアルタージュ王国・港町セビアへ向かう船に乗る」
「船の手配は?」
「安心しろ、既に手配済みだ」
「そろそろ行けるか?」
「私が先導しよう」
レキが扉を開けると、先ほどより雨がひどくなっていた。
レキは構わず外に出る、俺とエルマもそれに続く。
レキを先頭に俺たちは雨の中を歩いた。
(うう、雨が冷たい・・・)
しばらく歩いた時、エルマが言った。
「待って、つけられている・・・」
「チッ、思ったよりも早いな、
こっちだ・・・」
俺たちが着いた先は、旧市街の広場だった。
雨が降っており、人通りはほとんどない。
「ここで迎え撃つ・・・」
雨の奥から、傭兵たちが姿を現した。
その数、6人・・・
レキが言った。
「いいか、殺さず、時間を稼げ」
「この数を殺さずに?正気?」
「正気だ、殺せばテイザークの法に触れることになる。
相手が武器を出せば、ケガさせても正当防衛だ」
傭兵たちは何も言わずに剣を抜いた。
「正当防衛成立だな」
エルマとレキも剣を抜く。
俺は無手で構える。
(雨で足場が悪いな・・・)
傭兵たちは、走り寄ってくるや俺たちを囲もうとする。
「させるか!」
エルマが囲みを乱すために進み出ると剣を振るう。
剣と剣がぶつかり打ち合いとなる、別の傭兵がエルマを側面から襲う。
俺はそいつに走りより剣を持った手を引き寄せ、手首を返すと宙を舞って転倒する、すかさず顔面を蹴飛ばした。
「ぶっ・・・」
血と歯が吹き飛んだ。
後方から別の傭兵が剣を切り下す、バックステップで斜め後ろに下がり躱すと、傭兵の両足を持って後方にすくい投げる。
傭兵は頭から地面に叩きつけられる、俺は相手の肩を踏みつけて手首を捻じり、肘関節を壊す。
「ぐあああ!」
レキと傭兵が打ち合いをしているが、レキは防戦一方で押されている。
傭兵はレキを蹴飛ばし、転倒させ、剣を振り上げる。
「待て、話せばわかる!」
俺は、腰帯から棒手裏剣を取り出し、投げつけると手首にぶっ刺さり、傭兵は剣を落とす。
「このやろう!」
レキは下から、相手の股間を蹴飛ばした。
「次!」
俺が次の相手に向かって走るとそいつもこちらに走ってくる。
二人がぶつかる瞬間、俺はそいつの足元に屈みこんだ。
そいつは足を払われ宙で一回転して地面に落ちた、俺は、首を抑えつつ顔面に肘を落とす。
鼻がひん曲がる感触がした。
エルマの剣が、傭兵の指を二本切り飛ばした。
「うがっ!」
地に落ちた指と剣が泥を跳ねさせる。
傭兵たちは、俺たちの思わぬ反撃に、警戒し一定の間合いを取って場が膠着する。
・・・・・・
「お前らそこまでにしろ!」
誰かが通報してくれたのだろうテイザークの巡回兵が、集まって来たのだ。
「ずらかるぞ!」
傭兵たちは、泥をまき散らし、散らばって逃げ出した。
「な、なんとかなったな・・・
それにしてもアニス、そんなに強いの・・・」
レキは呼吸を乱して言った。




