ep.20 温厚な男
テイザーク旧市街にある酒場のカウンターで、温厚そうな男が嬉しそうにラム酒を飲んでいる。
「いや~、この一杯格別だな~」
中年の女性のマスターが声を掛ける。
「お客さん、えらくご機嫌だね」
「そりゃそうだ、あと少しだからな~」
「あと少しって何がだい?」
「いやな、俺はミゼルの商人なんだが、やっと商売が軌道に乗り出してよ。
それなりに蓄えも出来たから。
両親を亡くした姪っ子たちを引き取ることが出来るんだ」
「へえ~、そうなのかい」
「姪っ子たちがテイザークにいるって話を聞いたもんだから迎えに来たんだ」
「それは良かったねえ~」
「用心棒まがいのことをして、苦労しているだろうから早く見つけてやらないと。
ところで、こういう娘たちなんだが、見たことないかい?」
男は、二枚の肖像画を取り出した。
「なんか、見たことあるねえ、でも思い出せないねえ・・・」
「そいつは参ったな」
テーブルに銅貨10枚を置く。
「思い出した。
ちょっと来て!」
マスターはウエイトレスに声を掛けた。
「どうしましたマスター?」
「ほらこの娘たち、前にうちの宿に泊まっていただろ?」
「ああ、いましたね。
数日泊まって出ていきましたけど」
「どこに行ったか?
何か手掛かりになるような情報はあるかね?」
ウエイトレスが、口に手をあてて考える。
「ああ、そう言えば、なんだっけ?」
男が銅貨10枚をテーブルに置く。
「そうそう、この前、小さいほうの子がストリートの子供たちと遊んでいるのを見かけたな~」
「そうかい、そのあたり詳しく聞かせて貰えるかい?
早く、二人に会いたいなあ~」
男は、さらに銅貨10枚をテーブルに置いた。
俺はストリートの同世代の女の子に花輪の作り方を教わっていた。
初めて作ったもののそれなりに上手く出来たと思いたい。
「はい、じゃあ、かぶってみて」
俺は女の子の頭にかぶせる。
「どう似合う?」
「うん、とってもよく似合うよ」
「ありがとう」
女の子は、嬉しそうに微笑んだ。
「こっちこそ、作り方、教えてくれてありがとう」
俺も微笑み返す。
男の子が、声を掛けてくる。
「アニス、こっちでストリート相撲やろうぜ」
「うん、わかった、また優勝しちゃうよ」
「そうはいくかよ!」
そうこう言っていると、雨がぽつぽつと降って来た。
「やばい、この雲は大降りになるぞ!」
(まじか・・・)
「それじゃあ、大雨になる前に、私、帰るね」
「そうした方がいいな、俺たちもねぐらに帰ろう!」
「じゃあ、またね」
「おう、またな!」
俺は急ぎ足で、家へと向かった。




