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ep.19 進む道

 夜、部屋にある狭いベッドで俺は寝転んでいた。

 エルマは、体を濡れたタオルで拭き、寝る準備をしている。


(エルマは、細身で若く綺麗だ、肌も白くて美しい。

 本当なら恋して将来を夢見る年代なのだろう。

 それが命がけで俺の子守りか・・・)


(俺の進む道・・・

 復讐?復興?冒険?平和な日常?)


(知らない滅亡した国のために命を懸けて復讐、復興?)


(あての無い冒険、気楽な旅でなく、本当の意味で命懸けの冒険。

 一度死んだら終わり、ケガや病気も治らない、本当に痛いRPG、やりたいか?)


(エルマとレキと一緒に、ここで今のように平和な日常を過ごすのが一番性分にあっているのではないか・・・)


「ねえ、姉さん」


「どうしたの?」


「記憶を失う前の私ってどんな子だったの?」


「・・・・・・」


「遠慮なく、姉さんが感じたままに言って欲しい」


「優しい、優しすぎて人や動物、虫さえも傷つけることが出来なかった。

 武聖の血を引いて戦うことを、心から拒んでいた。

 上品で絵を描くことが好きで、紅茶をコレクションしていてよく飲ませてくれた。

 無口だったけど、私を姉のように慕っていてくれた・・・」


 エルマは、そう言うと衣服を身に着け始めた。


「なんだか、今の私とは別人だね・・・」


「・・・・・・」


 俺は、身を起こして言った。

「でも、本当の姉さんと思っているよ」


「アニス・・・」


「姉さん、記憶を失う前の私だったら、これからどうするだろう?

 復讐?復興?冒険?平和な日常?」


「・・・・・・」


 エルマは、服を着終えると俺の横に座って言った。

「私にとってはどちらも大切なアニス・・・」


「うん」


「アニスはどうしたい?」


「私は、姉さんと一緒にいたい、姉さんを失いたくない」


(危険に身を投じれば、自分はおろか、エルマを失う可能性もあるのだ。

 今の俺にとって、それが一番あってはならないことだ)


「・・・・・・」


「ここでの平和な日常を、大事にしたい、それじゃあダメかな」


「ううん、アニスがそうしたいなら、私はそれでいいよ」


「ありがとう、姉さん」



 それからまた数日、俺たちは、レキの家を拠点に日々を過ごしていた。

 俺はストリートの子供たちとも仲良くなり、友人の数は増えていった。


 エルマは、それでも情報収集と旅の準備は、常に怠らなかった。


 レキの元に鍛冶屋から棒手裏剣が出来たとの連絡があったので、俺とエルマは鍛冶屋に向かった。


「どうだ嬢ちゃん、こんなもんで。

 ただ、ちっとも壁に刺さったりせんぞ」


 俺は出来た棒手裏剣を手に取ってみた。

 子供の手に収まるよう小型になっている。


「ありがとう、あそこの壁でちょっと試してみていい?」


「おお、いいぞ」

 鍛冶屋のおやじが腕を組んで見守る。


 俺は、手の内をつくって棒手裏剣を持つと、脱力して投げてみた。


 棒手裏剣は回転しながら飛行し、ズッと壁に突き刺さった。


(うん、悪くない)


「こりゃ、たまげたな」


「おじちゃん、すごく上手く出来てるよ!」


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