ep.18 鍛錬
俺とエルマは、レキに匿ってもらい、一時的とは言え平穏な日々を手に入れたようだ。
レキは、あまり俺たちには干渉せず、自由気ままに本を読んで暮らしているようだ。
エルマは、情勢を探りつつ、合間で俺に乗馬の稽古をつけてくれた。
武聖の血かそれとも昔のアニスが乗れたからか、俺はすぐに乗馬の技術を身に
つけることが出来た。
時間があると、戦慄の衝動が来ることもあり、俺は気を紛らわすために、棒で杖術や剣術の素振りや型稽古を行った。
俺は元の世界で長年に渡り、古武術の稽古をして来たのだ。
(生涯、使わないものと思っていたが、今や頼りの綱かも知れない・・・)
体術と短刀の連携技も創意工夫を行いながら、練習して動きを体に馴染ませる。
少しの動作や間合いに遅れをとると、それが命取りになる、真剣勝負の怖さだ。
エルマが、外で情報収集を行っており、俺はレキと残っていた。
レキが、俺に紅茶を入れてくれた、砂糖が入った甘いやつだった。
「甘くて、美味しい」
「砂糖は高級品だからな、大事に飲むんだぞ。
ところでアニス、」
「何?」
「旧市街で同世代の友人は出来たか?」
「同世代の友人?」
(それどころじゃ無かったからな・・・)
「そうだ、人とネットワークを作ること、これは大きな武器になる。
言ってる意味が分かるか?」
「うん、情報、協力、時には救いになる」
「賢い子だ。
テイザークの一番の強さはそこにある。
もし、アニスが前に進もうと思うなら、そういった力を手にしなければならない、分かるか?」
「そのための手段の源が、経験、知、武、金、人、兵法、総合力・・・」
「そうだ、その総合力をどう生かしたいのかを、まず考えることだ」
「どうしたいのか。
なにをしたいのか」
「アニス、お前は何をしたい?
復讐か?復興か?冒険か?それとも平和な生活か?
どれを選ぶのもお前の選択だ、もちろんそれ以外の選択を見つけるのも自由だ」
俺は旧市街を歩いていた。
(同世代の友人か・・・)
ドン
「ごめんよ!」
俺と同世代くらいの少年がぶつかってそのまま走り去る。
少年は路地裏に入り、すった俺の財布袋を嬉しそうに開けた。
「なんだ、銅貨3枚かよ、やっぱガキはダメだな」
「あなたもガキだけどね」
俺は、背後からにっこり微笑んで声を掛けてあげた。
「こ、これは、俺がとったから俺のものだからな!」
俺はジャブのようにさっと手を出すと、財布袋を取り返した。
「これ取り返したから私のもの」
「はあ、なに言ってるんだ!」
「おいおい、なに素人に舐められてるんだよ」
言いながら、十二、三歳くらいの少年が三人歩いてきた。
「おいお前、舐めてると痛い目みるぞ!」
そう言うと少年の一人が、俺の両肩を壁に押し付けようと両手を出して来たので、とっさに両手を回転させて投げると、少年は宙で一回転して地面に転がった。
(合気がハマった・・・)
転がった少年、他の少年たちもなにが起きたのか分からず愕然とした。
「ふ、ふざけるな!」
少年が殴り掛かって来たので、手首と襟を持って、相手の勢いそのままに背負って投げると、少年が吹っ飛び地面に転がる。
「まだやる?」
「いや、やめとく・・・」
残った少年が呟いた。
俺は、少年たちに言った。
「ねえ、さっきの技、一つ教えてあげようか?」
少年たちは、互いに顔を見合わせている。
その中でリーダ格ぽい少年が言った。
「教えて欲しい・・・」
俺たちは少しひらけた空き地に移動した。
「じゃあ、説明するね」
俺は、リーダー格の少年の手首と襟をゆっくりと持った。
少年と目と目があった、少年の顔が紅潮している。
「こことここを持って、相手の足の間に、低く入りながら振り返る」
背中の上に少年を一瞬乗せて、すぐに戻した。
俺の説明を受けつつ、少年たちはおたおたと練習していた。
けっこう、時間が経ったので、練習は終わりとなった。
「なあ、お前なんでそんなに強いんだ?」
「いっぱい練習して来たからかな」
他の少年が言った。
「また、教えてくれるか?」
「うん、機会があればね」
レキは、遠くからその様子を見ていた。




