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ep.1 異世界転生と落城の日

(俺自身が蒔いた種で自業自得だが、俺の過ごす日々は過酷過ぎる。

 出来れば朝を起きたら全てが夢であれば良いのに。

 それでも現実の朝が来る)


「・・・しっかり・・しっかりなさって・・アニ・」


(なんだ、やけに騒がしいな、今日は・・・)


(人が叫ぶ声と火の匂い・・・火の匂い!火事か!)


 俺は慌てて起き上がろうとするが、頭、体のあちこちが痛い。


(痛い・・・なんだこれ?)


 額に手を当てるとヌメっとした感触がする。

 慌てて見ると血だ。


「しっかりなさって下さい、アニス様!」


(声だ、女の声?)


 目の前を見ると、中世の騎士?サーマントを羽織った赤髪の若い女性が必死に俺に向けて声を掛けているのが目に入った。


(俺は寝ぼけているのか?夢の続きか?)


 とりあえず、ありきたりだが俺はその女性に尋ねた。

「誰ですか、あなた?」


 女性は心配そうな顔をしつつ呟いた。

「先ほどの投石が頭をかすめたか・・・」


「私はアニス様付の騎士、エルマ=カリンズです。

 猶予はありません、失礼致します」


 エルマと名乗った騎士はそう言うと俺の体を片手で持ち上げて肩に担ぎ上げたのだ。


(えっ?俺八十キロはあるぞ・・・)


 そのまま石造りの廊下を走り出す。

 俺は状況把握に努める。

 自分の手を見る。


(やけに小さいぞ、子供の手か・・・)


 揺れる髪は、白くやけに長い。


(腰くらいまではあるんじゃないか?)


 目に入る範囲で自分を見ると中世のドレスらしきものを纏っているようだ。

 体が小さい、まるで少女の体だ。


 後方からは怒号と複数の金属が打ち合う音がする。


(誰か戦ってるのか?)


 騎士は、しばらく走った後、奥の小部屋へと入ると床に敷かれたカーペットをめくりあげ、床にある木製の扉を開いた。


 エルマは俺に言う。

「アニス様、歩けますか?」


「アニスって私?私は歩ける」

 俺は、理由は分からないが、アニスと言う少女と思われているようだ、あえて少女の口調を心掛けた。


「あなたはアニス様です。扉の下にお早く!」


 エルマが言うや、後方の扉が開き、剣を手にした二人の男が荒々しく入って来た。


 男の一人が荒々しく言う。

「付きの騎士とおそらく王族だ!逃がすな!」


「アニス様、先に行ってください!」


 エルマは、そう言うと腰に帯びた剣を抜いた。


(真剣での戦い・・・)

 俺は、恐怖して体が動かない・・・


 男の一人がエルマに切りかかる、エルマは上段で受け流すと、切り返し男の首元に剣を叩き込んだ、血しぶきが舞う。


(人が死んだ・・・)


 エルマが手練れと見たか、もう一人の男はゆっくりと間合いを詰める。

 男が切りかかるやエルマは下段で受け、はじく。


 エルマが突く、男がはじくが、エルマは刃を回転させ流すと男ののど元に剣先を突き立てた。

 血しぶきがあがると同時に、エルマは男を蹴飛ばした。


「アニス様、さあ、早く!」

 鮮血を浴びたエルマに手を引かれ、俺はようやく動くことが出来た。


(人が死んだ、殺した、いや、殺し合いをしているんだ今・・・)


 カビの匂いがする地下通路だった。

 エルマは俺の手を引いて必死に走る。


(俺の足は、少女の足で短い、足手まといだろうに・・・)


「アニス様、こちらです」


 エルマが通路の奥の木製の粗末な扉を開くと、日の光が目を刺した。

 目が光になれた時、エルマが呟いた。

「なぜ、お前達がいる?」


 騎馬が一騎と歩兵が六人、エルマの反応から恐らく敵なのだろう。

 騎馬の隻眼の男があざけるように言った。


「逃げそこなった王妃を拷問したら簡単に吐いたぞ。

 なかなか気高く立派な方だった」


 エルマが歯ぎしりをしながら言う。

「よくも王妃様を・・・

 隻眼の騎士・アギータだな?」


「ほう、俺を知ってるのか?」


「ああ、悪名だがな・・・」


 騎馬の男が下品な口調で言う。

「お前らに悪名通りの男ってことを教えてやろう。

 女二人か、存分に楽しませてもらおうか」


 エルマが覚悟をきめた口調で言う。

「アニス様、やれるだけやりますが、正直厳しい状況です。

 私に万一があった時は、辱めを受ける前にご自害を・・・」


 そう言うと、腿に帯びていた短刀を俺に手渡した。


(こ、これで自害しろというのか・・・

 地獄のような日常から目が覚めたら本当の地獄が待っていたっていうオチか?

 そもそもこれは夢ではないのか?)


「あの数の上、あのアギータが相手です。

 どこまでもつか・・・」


(自害って、どうすればいいんだ、首にぶっ刺すのか?

 そもそも死ななければならないのか?)


 考えた末に、俺が出した結論は・・・


「エルマ、殺られるくらいなら殺ろう・・・」


「えっ?」


「私はこんなところで死にたくない。

 どうせ死ぬなら、二人で殺れるところまで殺ってやろう」


「アニス様・・・?」


 俺は、短刀を構えた。

 初めて人に短刀を向けるが、なんとなく手に馴染む。


 アギータが言った。

「おいおい、お嬢ちゃんがやる気だぜ!」

 周りの男たちが笑い声をあげる。


「さっさと抑え込め!」

 アギータの号令一下、六人の男たちは二人を囲む。


 剣を手にした男がエルマに切りかかる、エルマは受けつつ反撃するが男も受け、打ち合いとなる。


 斧を手にした男が、エルマの斜め後ろから襲い掛かる、

 エルマは後ろ蹴りで男を吹き飛ばした。


 剣を持った男が俺の方にもやって来た。


「アニス様!」

 エルマは叫ぶが、エルマも交戦中で助けには来られない。


(エルマだけに頼っていられない)

 俺の中の血が、急に熱くたぎり、瞬時に氷のように冷めた。


(殺す、殺す、殺す、殺すしかない・・・)


 俺の頭は、自分が思った以上に冷静だ。


 剣を持った男が水平に切りこんでくる。

 生命がかかった瀬戸際だからか、やけにスローに見える。


(低く、もっと低く・・・)


 俺は、低く沈み込んで水平の剣をかわすとそのまま突進し間合いを詰めて、


(一切の容赦をするな・・・)


 相手の喉をかっさばいた。


 男は驚いた顔をしたまま、喉から血をまき散らす。


 隣の男も驚いて見ていた、そのままに俺は隣の男との間合いを瞬時に詰めわきの下に短刀を突き刺した。


「ぐわっ!」

 男が苦痛で叫ぶ。


 後方に飛びのき、間合いを取る、先ほど倒した男の剣を瞬時に拾うと構えた。

 周りの誰もが驚いている。


(このチャンス、無駄にしない)


 俺は騎乗の男に突進し、男に斬撃を見舞ったが、男は手にした槍でそれを受けた。

 とっさに対応してきた手練れだ。


「このガキ・・・」


 俺は男の顔面に剣を投げると男は槍でそれをはじいた。

 が、その瞬間に俺は騎乗の男の足首の関節を全身の回転を利用して捻じった。

 男はたまらず馬から落ちた。


「ぐわっ!」

 男は肩を地面に打ち付け、悶える。


 周りの男たちは、想像を超えた出来事に硬直した。


 それを見ていたエルマは、前方の敵を押しのけると、すぐさま馬に飛び乗った。

 判断も行動もさすがに手練れだ。


「アニス様!」


 エルマは、俺を馬に引き上げると、馬の腹を蹴って駆けだした。

 隠し通路から郊外へと逃げ落ちていく。


 後ろでは、先ほどの男たちがなにやら喚いているが知ったことか。


 しばらく馬が駆けると、城と街の方角からは黒い煙が上がり、落城したことを思い知らされた。


(何も知らない故郷が滅亡したのか?)

 俺はやけに冷静に思った。


「国が滅亡したのか?」


 エルマが力強く答えた。

「アニス様がいる限り、王国は滅びません」


「私がいる限りか・・・」

 アニスと呼ばれる俺はそう呟いた。


(ところでアニスって誰?)


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『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

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