ep.15 手練れ
翌朝、俺が目を覚ますと、エルマは出発の準備進めていた。
「おはよう姉さん」
「おはよう、アニス、こっちへおいで」
俺が鏡の前に置かれた椅子に座ると、エルマが、髪をくしでといでくれる。
「アニスの髪は、艶があってとても綺麗」
「ありがとう、姉さん」
髪が整うと、俺はマントを纏った。
背が低いのでふくらはぎが隠れるくらいまでになる。
「さあ、行くよ」
俺たちは、決戦飯を食べに出立した。
エルマお勧めのスープ麺の屋台は、繁盛しているようで、屋台の前に置かれた複数のテーブルも空きが一つだけだ。
俺が四人掛けのテーブルを確保している間に、エルマがスープ麺を買って持って来てくれた。
スープ麺は、見た目は赤い醤油ラーメンのような感じだった。
ゆっくりと口を付けると、
「辛っ・・・」
「だしと唐辛子と塩とかで味を付けているのよ。
ちょっと辛いから、ゆっくり食べるのよ」
(俺の薄い唇が、たらこになるんじゃないか、そんな気がした)
「でも美味しい!」
「そう、よかっ・・・」
「ここいいかしら?」
水色の長い髪を後ろで束ねた、二十そこらの綺麗な女性が声を掛けて来た。
その女性の手にはスープ麺、腰には剣を帯びていた。
(相当の手練れ・・・)
エルマは、箸を左手に持ち替えると、そっと剣に右手をあて、足はテーブルを蹴る準備をする。
「どうぞ」
エルマはにこやかに応じる。
「じゃあ、遠慮なく」
女性もにこやかに応じると座り、スープ麺を箸ですくって一口食べると言った。
「どうここのスープ麺、旧市街名物の一つなのよ、美味しいでしょ?」
「うん、美味しいね」
俺は無邪気に応じた。
女性はエルマを見て考えを巡らせた。
(この娘、年は17歳前後の割には、相当修羅場をくぐってるわね、間違いなく手練れだわ)
「おいしいけど、辛い~」
女性は俺の方に目をやるとスープ麺をすすった。
(連れの子のマント・・・エムリア王国ロイヤルナイトの隠密行動用のサーコートか・・・)
再びエルマのほうをちらりと見る。
(ということは、ロイヤルナイト唯一の女性、この娘がエルマ=カリンズ・・・
道理で手練れな訳だ)
「辛いけど、だんだんハマって来た・・・」
(連れている子は、おそらくアニスティア=フォン=エーメガルド。
なるほど、テイザークに亡命しようってことね)
「お嬢ちゃん、どこから来たの?」
エルマが代わりに答える。
「ミゼル王国から仕事を探しにここに来た」
「へえ、仕事?
どういう仕事を探しているの?」
「用心棒とか護衛とか」
「へえ~、それだったら仕事を紹介してあげられると思うけど、どう?」
「既にアテがあるから今はいい」
(この女、何?)
「本当は手詰まりなんでしょ。
あなたの思い通りになるかは分からないけど、当面はしのげると思うわよ」
(この女、事情を知ってる?!)
「なんのこと?」
「あなた達の考える二つの選択肢は、どちらも上手くいかない」
「へえ~、他に選択肢があるのかしら?」
エルマの瞳に殺気がこもる。
「私はサーラ=エメスティス。
あなたの探している男の護衛よ。
そんなに殺気を飛ばさなくてもよくない?」
言いつつ、女はスープ麺をすする。
「それを信じるとでも?」
「いや、どっちでもいいけど?」
(ヤバい、女の駆け引き状態じゃないか・・・これ?
だが、悪い人には思えないな・・・)
「姉さん、この人を頼ってみようよ」
女は微笑み言った。
「へえ~、お姫様は勇敢だね」
(罠かもしれないが、手詰まりなのも確か、乗ってみるか・・・)
「分かった、仕事を紹介してもらえるか」
「今晩七時、新市街にあるレストラン・ゆでカエル亭に来てもらえるかしら、私の名前で予約しておくから」
「分かった」
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