ep.13 自由都市テイザーク2
旧市街はエルマが言った通り、舗装されておらず土道だった。
こちらは道が狭く、建物や露店、人が所狭しといった感じだ。
建物も統一性がなく、増改築を繰り返した違法建築の宝庫のような場所だ。
「姉さん、ここには来たことがあるの?」
「ええ、以前に何度かね。
今から行く宿にはあまり期待しないでね」
(ぼろ宿でも屋根と壁があればありがたい)
エルマは入り組んだ道を、何度も曲がり、一軒の綺麗とはいえない酒場へとやって来た。
ここに来るまで、俺は人だかりの中、はぐれないように必死だった。
(これは慣れないうちは迷うな・・・)
酒場に入ると、ホールにはウエイトレスが数人おり、マスターらしき中年の女性がカウンターにいた。
昼だが、既に客で賑わっていた。
ウエイトレスが声を掛けて来た。
「いらっしゃいませ、お二人様ですか?」
「ああ二人だ。
食事と宿をお願いしたい」
「部屋は?」
「二人で入れる一番安いところで頼む。
ここには以前にも来ているから相場は分かっているので面倒な交渉を避けられるとありがたい」
「あらあらそうでしたか。
それでは一部屋銅貨40枚でご案内しますね」
「25枚」
「あら、本当にご存知なんですね。
じゃあ、25枚でご案内します。
部屋が先ですか、それとも食事を先にしますか?」
「先に食事を頼む」
「では、こちらの席へどうぞ」
俺たちは促されたテーブルへと腰を下ろす。
エルマが尋ねる。
「何か食べたいものはある?」
「姉さんに任せる、私よく分からないから」
エルマはうなずくと、ウエイトレスを呼び、注文をする。
「鶏肉のシチューと野菜ピザ、ヤギのミルクを2杯」
(そう言えば、テーブルで食事するのってこっちの世界に来てから初めてだな・・・)
しばらくすると注文の品が運ばれて来た。
「じゃあ、食べましょう」
「うん、いただきます」
鶏肉のシチューは、臭みを消すために香辛料が効いている。
俺は空腹で慌てて食べたので喉がひりひりし、慌ててミルクを飲む。
エルマは微笑むと、ピザをシチューに浸して食べた。
(なるほど、そうやって食べるのか・・・?)
俺は、マネして食べると、あっさりしたピザに濃厚な香辛料が効いて、これは美味しい。
「おいしいよ、姉さん」
「そう、それは良かった」
俺たちは食事を終えると二階の部屋に案内された。
粗末な木製のベッドとテーブルがある殺風景な部屋だった。
部屋にはもう一つあった、粗末だが壁に鏡が掛かっていた。
俺は、意識せずに鏡に映った自分の顔をみた。
・・・・・・
白く長い髪、アメジストのように紫に光る瞳、白い肌、整った目鼻立ち・・・
(むちゃくちゃ可愛い・・・
これが俺・・・?)
・・・・・・
(こんな幼い子が命を狙われているのか・・・)
・・・・・・
「アニス、どうしたの?」
長い間、鏡に見入っている俺に、エルマが声を掛けた。
「姉さん、ありがとう、
姉さんがいなかったらきっと私生きてなかった」
エルマは、少し悲しげな眼をし、俺を後ろから抱きしめてくれた。
「大丈夫、あなたには、いつも私がいるから・・・」
「姉さんにも、私がいるよ・・・」
俺がそう言うと、鏡の中のエルマは、目を閉じ、涙をこぼした・・・




