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ep.10 首実検

 エムリア王国を陥落させたアムゼント帝国軍将軍ジスト=バーグシュタインは、王城の謁見の間の玉座に腰を下ろしていた。

 玉座の横には副将であるミューゼ=ガルムラントが控える。


 王の謁見の間とはいえ、小国のそれであり、アムゼント帝国将軍クラスに与えられる謁見場よりも質素なものであった。

 その広くもない謁見の間には、千人隊長、百人隊長クラスの武官が並んでいた。


 ミューゼの横には恰幅の良い中年の男が、小刻みに震えて立っている。

 旧エムリア王国宰相・ドノバン=ホールタージである。


 将軍・ジストが、重々しく口を開く。


「それでは、これより首実検をはじめる」


 ジストの言葉を合図に、謁見の間に兵士が恭しい様子で女の首を掲げて入ってきた。


 ドノバンが震える声でミューゼに言う。

「間違いございません」


 副将・ミューゼが続ける。

「一等級、王妃・マリア=フォン=エーメガルド。

 アギータ=ギュスターヴ百人隊長の勲功なり」


 ジストは、首を確認し静かにうなずくと、深く目を閉じた。


 隻眼のアギータことアギータ=ギュスターヴは、ほくそ笑んだ。


(王族の女をなぶって、殺して一等級か・・・

 だから戦争は止められないぜ・・・)


「よい、さげよ」


 女の首がさげられると次は、男の首を掲げた兵士二人が入って来た。


 ドノバンが再び震える声でミューゼに言う。

「間違いございません」


 ジストは、首を確認し、凝視した後、うなずく。


 ミューゼが続ける。

「三等級、ロイヤルナイト・ウレイダス=ハメット。

 ミューゼ=ガルムラント副将の勲功なり」


「三等級、ロイヤルナイト・アスタロア=ロンゼン。

 アギータ=ギュスターヴ百人隊長の勲功なり」


(どうだミューゼ、一等と三等で鼻を明かしてやったぜ。

 これで千人隊長返り咲きは確実だな・・・)


「よい、さげよ」


 兵が首を持って退出する。


 ミューゼが続ける。

「この度の勝利、皆の奮戦に感謝する。

 これら以外の首は、各千人隊長をもって吟味せよ」


「はっ」

 三人の千人隊長が応じた。


 ミューゼが続ける。

「この度、重要等級の首を二つ逃している。

 一等級、第一王女・アニスティア=フォン=エーメガルド

 三等級、ロイヤルナイト・エルマ=カリンズ」


(チッ)

 アギータは心の中で舌打ちをした。


 ミューゼが続ける。

「抜け道の通路は二つあり、事前にドノバン殿より通知されていたはずだ。

 逃した抜け道の封鎖は、クレアゼス百人隊長が任されていたはずだが、なぜ逃した?」


 クレアゼスが答える。

「ドノバン殿より知らされていた場所に通路が無かったからです。

 我らは何もない場所を懸命に捜索しておりました」


 ドノバンは額を抑えながら緊張した面持ちで言う。

「も、申し訳ございません。

 何しろ古い記憶で曖昧な点がございましたから・・・

 後ほど、思い出し、すぐに近くにいたアギータ殿にお知らせしました」


 アギータが悪びれることもなく言う。

「さよう。

 情報を得て、我らがそこに赴いた時には、時すでに遅しでしたがな」


(ドノバンを抱き込んでいたか・・・

 小賢しい男だ・・・)

 ミューゼは、口にはしなかった。


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