「星の王子さま」
「今日ちょっと風強いね」
「確かに。歩きにくいくらい」
「さっきコンビニの旗がめちゃくちゃ揺れてた」
「倒れそうだった?」
「そこまではいかないけど、ずっとバタバタしてた」
「風あると旗うるさいよね」
「それ見て思い出した本がある」
「また文学クイズ?」
「うん」
「ヒントは?」
「砂漠」
「砂漠?」
「あと、飛行機」
「それだけだとまだ分からない」
「じゃあもう一つ」
「どうぞ」
「小さい王子」
「ああ」
「分かった?」
「星の王子さま」
「正解」
「サン=テグジュペリ」
「読んだことある?」
「昔、途中まで」
「途中まで?」
「子供のとき」
「難しくなかった?」
「ちょっとだけ」
「分かる」
「子供向けみたいに見えるけど、結構深い」
「そうそう」
「大人になると分かるってよく言うやつ」
「ねえ」
「なに?」
「好きな場面ある?」
「うーん」
「考えてる?」
「キツネ」
「キツネ?」
「“大切なものは目に見えない”ってやつ」
「ああ」
「有名なところ」
「そっちは?」
「私は井戸」
「井戸?」
「砂漠で水見つけるところ」
「なんでそこ?」
「静かだから」
「静か?」
「うん」
「ずっと歩いて」
「やっと見つける」
「なるほど」
「ちょっと帰り道っぽい」
「それどういう意味?」
「目的があるわけじゃないけど」
「うん」
「歩いてると」
「うん」
「話が出てくる」
「……」
「確かに」
「この帰り道、最初そんな感じだった」
「最初?」
「覚えてない?」
「何を」
「最初の日」
「……」
「沈黙長い」
「考えてる」
「思い出してる」
「うん」
「たしか」
「うん」
「本の話から始まった」
「そう」
「いきなりクイズ出された」
「そんなだったっけ」
「そんなだった」
「覚えてるんだ」
「まあ少し」
「じゃあ」
「なに?」
「この帰り道って」
「うん」
「最初から続く予定だった?」
「多分違う」
「だよね」
「たまたま」
「うん」
「同じ方向」
「それだけ」
「……」
「でも」
「なに?」
「星の王子さまみたいだね」
「どこが?」
「偶然」
「うん」
「出会う」
「なるほど」
「じゃあ」
「なに?」
「この帰り道」
「うん」
「星どこ?」
「難しい質問」
「考えて」
「うーん」
「うん」
「まだ見つかってない」




