sep3:Y〜よろず〜ハウンド-2.
帝都、エネエ工社。
「はい、これでアナタ方のもといた世界を検索できます。演算に時間がかかりますので、一週間後に来てください」
俺達万'zハウンド同様にマロウドであり、帰還装置を作った園生豊恵社長。彼女が対応してくれて帰れる目安が立つ。さあ、報酬の残りで帰るまで観光でもしよう。
「スゲェっすね。この転移ゲート……はは何仕組みしてんのか全然わかんねぇ」
「タンホイザー式星間ゲートの応用ですね。詳しい原理は……」
「ははは、わかんねぇ。景気が良い話っすね。俺らの所は地球を少し出るのがやっとなのに豊恵さん所はいくつもの星を網の目のようにつないでる」
総一の奴め……デレデレしやがってみてられん。まさか熟女趣味なんてもんを持っていやがるとは、いくら綺麗でもおばさんじゃん。
「ほら、忙しい人なんだから迷惑だろ」
作業着の襟首を掴んで引き剥がした。
「まてまて、仕事の話だよ。結構貰える」
弁明をはじめる総一。
「仕事? もといた所に帰れば、こっちの金なんて紙切れだよ」
「そんな事いってもなぁ。前金代わりに魔術とか未来技術とか使ってもうハウンドフル改修してもらったんだよな」
帝都、エネエ工社改修ドッグ。豹柄、七色の電装、なんか白いファー、胸部で存在感を示す紅い般若……総一のオーダーによって変わり果てた姿の愛機がそこにあった。
「このセンス昭和の珍走団め!!」
「ギャアアアッ!!」
バカに卍固めをかける。その状態で、作業している人のいる所へジリジリと移動した。
「すいません。代金はコイツのギャラから払うんで外装のデザインは元に戻してください」
変な生き物を見るような表情をした後、整備士は頷いてくれた。
帝都の舗装路をデコトラが走る。電磁誘導加速装置、磁気蒸着精密高駆動ギア、慣性制御、増設カートリッジ……俺は助手席で仕様書をペラペラ斜め読み。運転している総一に聞いた。
「それで……依頼はどんな物なんだ?」
「迷い猫探し的な事。得意だろ」
園生社長が同郷ということで面倒見ていた猫娘型アンドロイドがどこかに行ってしまったので探して欲しいとのこと、仕様書を読み終わった俺は、依頼内容を確認する。
E-MS04-10タマ、青少年育成用猫娘型アンドロイド。健全な育成促進の為。すなわち、二次元やホモセクシャルに対抗するために開発された。機体コンセプトは少年時代に対象と接触してノスタルジックな思い出を作る事でノーマル方向への性癖を誘導するというもの。
「青少年の何かが危ない」
「逆に不健全」
「これメカ娘フェチになるだけでは?」
などの意見が政治方面から寄せられた結果コンペに落ち少数生産に止まった。
真っ当な意見だ、作る前に気付け。次に依頼書に付いている写真を見る。なかなか可愛らしい。猫耳、短い水色の髪、白いワンピース、猫尻尾をした若い女の姿。
人工頭脳の学習は……。
窓から遠くを見るとサンドイッチを売っている少年を通り過ぎて景色が流れる。
「そう言えば昼はまだだったな。何にする?」
総一が言い終わる前に俺はサイドブレーキを思い切り引いた。
「うわあああ!!」
デコトラは180度ドリフトして反転。いい感じの位置に止まった。ドアを開いて飛び降りる。
「え!? 何」
目前に起こったバリッド級アクションに目を白黒させている少年に告げた。
「ボク。サンドイッチ全部買ってあげるからちょっと兄ちゃん達のことてつだってくれない?」
「そんなにサンドイッチを食べたかったのか? 類児」
デコトラから這い出てきた総一の声が背中で聞こえた。
土管が積まれている河原の土手上。可愛らしい少年が泣いている。泣き喚いている。
「はい、カット。そんなもんで青狸から秘密道具をタカれるか? ガキ大将にイジメられたり、0点とって廊下に立たされる悲しみはそんなもんか? もっと空中で弧描くよう涙を流して」
スーツの袖を結んで首にかけ、仕様書を丸めてメガホンにした俺、万里生類児が演技指導を飛ばす。これでも、監督を嗜んでいるのだ。
「秘密道具何それ? 大体なんでボクが、泣かないといけないの? 帰りたいよ! ゔあ゛あ゛ぁぁぁん!」
「グッジョブ! OKそのままだ。カメラを止めるな」
「類児よ。カメラなんて初めから回ってないぞ」
向こうで泣いているサンドイッチ少年を尻目に俺たちはサンドイッチをかじる。これ美味いな。どこの店だろうか。
「可哀想にあれ半分マジ泣きしているぞ」
「素晴らしい才能だ。きっと世界的、歴史的な名優も狙える」
「鬼かよコイツ……。タンポポで作ったマガイモノだけどコーヒーも付いてるぜ」
総一が使い捨てのコップに注いだコーヒーを寄越してきたので受け取る。
「本物は無いのか? あと砂糖とミルクも」
「グズッ。本物やミルクや砂糖がいいなら店に食べにきてよ〜」
向こうからサンドイッチ少年の声、手元の包み紙を見れば伴乃って店の名前と住所が記載されている。
「はい、そう言うアドリブはいらない」
「ゔあ゛あ゛ぁぁぁ! うわぁぁん」
「誰 だ 〜!! 少年を泣かせる奴は!?」
作戦通りにソイツは現れた。猫耳の付いた水色の髪、意図的にダミ声にしている女の声。
「ビンゴ。流石作戦立案を嗜んでいる俺。自分でもバカバカしい作戦と半分くらい不安だったがどうよ」
そのロボットは白いワンピースを捲り上げると腹部にある記号が光った! 晒されるパンツとヘソ。光の円が展開してミサイルが出てきた。
「惑星破壊弾頭!」
「…………」
「…………」
「…………ヲィッ!!」
捕獲など忘れた。人差し指と中指に嵌められた指如意輪で指を伸ばす。オーバーキルな逸品を転送させたポンコツへデコツン!
「ア゛ダッ!」
四方山話。閑話休題。場面転換。
河川敷。俺、総一、サンドイッチ少年、ポンコツもといE-MS04-10タマが顔を合わせる。
「それで、なんで家出なんかしたんだ? 帰る意思はあるか?」
タマに事情を聞く。多分コイツは捕まえて引き渡してもまた逃げるヤツだ。
「確かに、園生の所は3食昼寝おやつお小遣い付きで快適なんだけどねぇ。しかしね、類児くん僕としては青少年の性癖を健全に育成する設計思想なんだから……」
「それ犯罪だから、お前らの世界ではどうか知らんけど俺がいた所でもここでもアカンから」
わーぎゃー。タマとの四方山話を盛んに交わす裏。総一とサンドイッチ少年は別に会話している。
「ボクもう帰っていい?」
「車に気をつけろよ」
「急にドリフトとかしてくるからね」
「はい、さよなら。機会があれば本物のコーヒーを飲みにいくよ」
「俺もさよなら。サンドイッチうまかったよ」
少年に向けて手を振り少年もそれに振り返した後、タマの方に向きなおる。
「さて、ポンコツ言いたい事はこれで全部か? 家出はオシマイさあ、帰るぞ」
「えーー。待っておくれよ。僕の少年を、マイダメンズボーイを探すのはどうなるんだ? 知っているぞ君ら探し物が得意なんだろ探しておくれよ」
「お前を引き渡したらそうさせてもらう」
「やめろーP助は渡さないぞ」
「なんだよP助って……」
俺がタマを総一が放置しておく訳にも行かない惑星破壊弾頭をデコトラのコンテナに搬入する。
「家出したお人形です。お騒がせしてまーす」
口に依頼書を咥えながら、ギャラリーにお詫びしつつ、コンテナの扉を締めた。
帝都のレンガ道路。総一のデコトラは依頼主の元へ走る。後ろのコンテナは相変わらず騒がしい。
「こら離せ、僕はサビオなんて知らない!!」
「いい加減うるせーよ。何学習データにしてんだこのAI」
「落ち着け類児」
まったく。アレ? なんか急に静かになったぞ。
「あ……」
聞こえたタマの声であいつが何かやらかした。と確信、続けてコンテナの天井が開く音とジェット音で何かが発射された感覚。
瞬間、電気が疾る様にアイデアが繋がり、体が動いていた。
「エレベーターと滑走路の準備」
それだけ総一に告げると、窓からデコトラの屋根へ屋根から天井が開いているコンテナの中へ。
呆然としているタマを尻目にハウンドへ乗り込んだ。
滑走路に変形するコンテナの屋根、エレベーターで上がるハウンド、最大化した電磁加速で跳び、弾頭を追う。急接近、マグナムで二発。二発目先端コントロール装置に命中、貫通、破壊。
そのままハウンドは海へ衝突し、飛び石の如く三回跳ねて沈む。
「はは……スゲーな慣性制御ミンチになる動きしてもピンピンしていらあ。後一発目は遊びだ……」
夕刻、俺とハウンドと弾頭は無事回収されて、タマは園生社長に引き渡し無事依頼達成。
「世界の危機なんて月一程度にして欲しい物だ」
「もとはお前が勝手に依頼取ってきたからだろ」
終わり良ければ何とやら今なら総一も許せそうだ。
「少年」
いい気分で黄昏ている所にタマの声が差しこまれた。
「キミの魂に少年を見た。お姉さんと自由に空を飛ぶ的な事をしよう。それともどら焼きでもキメる?」
「おいコラ。中身ガキって言ってんだろそれ、勘弁してくれよ」
逃げ出すが、後ろから夜とタマが追いかけて来た。早く帰りたい。
サンドイッチ少年
本名伴乃克彦、現在11歳。洋食屋伴乃洋食店の息子で今はまだ普通の少年。




