sep2:Y〜よろず〜ハウンド-1.
別視点で本編世界を見る外伝短編集、『Yーヨロズーハウンド』。計4話毎日投稿予定になります。
2026.4.18
ロボット物とかなんでも屋物とかやりたかったんです。
2026.4.21
蛇眼陽暦106年、帝都震災と共に北方人民連邦が大円帝国へ南下侵攻。そうして起こった戦争は後に半年戦争と呼ばれる。
6年前。蛇眼陽暦100年、葛原邸近郊。
頬に矢が掠めた。赤髪の女が放ったモノ。真面物の殺意。
「待ちなさい。不届き物」
「届け出は出すつもりだったさ。今回は下見で……」
「問答無用! 行きなさい太郎、二郎、三子、四郎」
猟犬4匹が連携しながら襲い掛かり、間隙に矢が飛んでくる。ガチじゃん。ちょっとアンタん所の旦那をボコして金稼ごうとしただけなのに……。
「奥様、もう一人の方捕まえましたぜ」
「やりました。甲斐従士長。大人しく投降しなさい」
声がした方を見た。リーゼントのグラサンが野趣のある大男に簀巻きにされている。相棒の万丈寺だ。仕方ない。と俺は両手を上げた。
葛原邸、庭先。
「中折れ帽でスーツの方が万里生類児。リーゼントとサングラスと作業着の方が万丈寺総一。元の世界では何でも屋をやっていた転移者と証言しています。
帰還費用のために柾彦卿に決闘裁判を吹っかけて金を得ようとしていたと……」
「ほえ〜。よくやる物だなまさかワタシの模造犯が出るなんて思わなんだ」
側近からの説明を聞きながら間抜けな声を出している貴公子はターゲット予定だった男、葛原柾彦元子爵。
ひょんな世界に迷い込んでしまった俺たち。元いた世界に変える方法を探していた。なんでも、俺らのような迷い込んだ奴を送り返せる機械があるらしい。
早速、それを持っている転財閥という所に話を聞いたら二億貨という大金がかかるらしい。ならば、金策と捨ててある新聞で読んだ決闘裁判をしよう。で、確実に金持ってて同じことやっている目の前の男をターゲットにした訳である。ま、捕まってしまった訳だが。
「しかしよく出来ている。構造を真似つつケースに合わせた微調整を行なっている。多分通るよコレ。どうだね君らの帰還費用ワタシが出してあげてもいい」
「何で? 何か裏があるだろう」
「表はある。ついて来なさい」
葛原子爵邸の一室。本棚をスライドさせると入り口になっていて入れる部屋に俺たちは通された。不気味な絵や本やモニュメント、なんか訳わからない物がいっぱい展示されている空間だ。
「これは驚異の部屋と言っても、いわば変な物や珍しい物を集める貴族趣味の一つだ。
存外バカにした物ではないぞお。こんな物でも上級コミュニケーションツールとして優秀だ。それに、外理学の成立において各国から蒐集された魔術書や術具や曰く付きの品々といったコレクションが貢献したとされる」
葛原柾彦はガサゴソと文献の山から図を取り出して見せてきた。
「これは、だいたい三千年前の陶土で使われた宝貝と呼ばれる呪具の一種。指如意輪。填めると指を伸ばしたり縮めたりできる面白アイテムだ。
本朝の邪浜に流れて来ているらしいコレを探してくれれば出そう」
相棒と顔を見合わせた後、その話を「受ける」と答えたらオレ達は解放された。
「どう思う。あの二人?」
「才覚はありますが、迂闊に見えます。大金を手に入れても長続きしない性質ですな」
「手に入るといいな、欲しい物だ」
耳がいいので扉の向こうの会話が聞こえた。どっちが迂闊だよ。あるいは聞かせるつもりか? 下手にこれ以上聞いて藪蛇になっても嫌なので退散する。
邪浜、呼呼氏浜とも呼ばれる帝都の南西にある湾岸都市だ。内理? 俺達の世界でおける物理法則とか科学法則とかその辺りがここら辺では弱いので異界という不思議空間が出来上がり、マロウドという俺達みたいな別世界の魂が迷い込みやすい。
そんな街に総一の悪趣味なデコトラで乗り込んだのがついさっき。
「良い話と悪い話がある。どっちから聞きたい?」
総一からそう話しを振られたので良い話からと答えた。
「多少手間なり、金なりかかるが前の世界で有った物はここでも代用品が揃えられる。つまり俺のデコトラもお前の"切り札"が運用える」
本気か、愛機が使えるならば何とでもなるさ。とっとと依頼すませて帰ろうぜ。
「それでは悪い話しだ。手間なり金なりがかかりどう頑張っても足がつく、前の世界でもカツカツだったからコッチじゃ確実に赤字だ。ピンチとか以外じゃ使うなよ」
「冗談だろ? 俺達2人で何でも屋探偵の万'z Hound.(ヨロズハウンド)やってきた訳じゃん。ハウンドないとただの万'zじゃん」
「猟犬とかって意味もあるから事件とか探し物とか行方不明の犬猫とか追う的な意味でまだハウンドは生きている俺たちの心の中で」
「それ死んだ奴のに対する言葉ぁ……さてと、では土地勘を養いつつ探っていこうぜ」
四方山話もそこそこに切り上げて、邪浜の街を巡る。一言で言うと雑多な町だ。異界に外国にマロウドに……そいつらが持ち込んだ文化や品々、建てた建物がひしめいている。
「やべー町だな」
半ば呟きを総一に聞かせた。
「デカいシノギ、それも随分と悪辣なモノが複数」
独り言のように相棒も答える。
邪浜の街を一回りした感想がこれだ。
「どーすんべ?」
「思うに、ただの希少品探しじゃないな。多分あの子爵様がよこしたって伝わるところには伝わっている」
「どーかん。解かんだよね。何となく経験則で」
「作戦は大きく分けて二通り、自分から動くか? あるいは相手から動くのを待つか?」
「……釣り(さかな)の気分だ。子爵様の家で狩りをしたらエライ目にあったからな」
「違いない。エサは何にする?」
四方山話。閑話休題。場面転換。
自由市場の骨董屋台にて、俺たちは店主に探し物を尋ねる。
「指如意輪? さあ、ウチにはないし見たことも聞いたこともない。葛原子爵? ああその名前は知っている悪徳商人を倒して被害者に金をばら撒いんだんだろう景気がいい話だ」
「へーそんな品があるのかい? 葛原の子爵様が求めている。金持ってんだろう見つけたらおいくらくらいで……」
「どーです葛原様がお求めの指輪……」「ニセモノじゃねーか! もう五度目だ失せろ」
たく、茶番をするのも楽じゃない。追い払った男が投げ捨てて行ったレプリカはレプリカとしては出来が悪くないので回収しておこう。
流れや分布がおおよそつかめてきたので場所を変える。後二、三回くらいで『かかる』見通しだ。
「失礼、葛原子爵がお求めの品があるとか」
俺たちに一人の男、身なりから何処かの使用人だろうか? が話しかける。
「正確には葛原子爵家だな」
「その事について主人がお話をしたいと」
かかった(ビンゴ)! 俺は声をかけた男について行って表通りから外れた場所にある商館までやって来た。
通された薄暗い部屋。斧を振り下ろして襲いくる男、回避して顎に一撃。二人三人たくさん次々来る。
「どわっ!」
案内の男を突き飛ばして、入って来た扉から退散。瞬間。
建材が砕ける轟音をあげて壁を突き破り総一のデコトラ(熊と鳳凰の絵がペイントされ大量の電飾で飾られた悪趣味なトラック)が突っ込んできた。
「あぶねー。轢き殺すつもりか」
「届け物だぜ必要だろう?」
デコトラのコンテナが開き、登場する人型8mの切り札。換装式多機能作業拡張服、ハウンドドッグマークIIカスタム。
黒い装甲を纏った俺の愛機にして切り札だ。
「搭乗魔働機か!?
こちらも業来槌LL型を出せ!!」
ひい、ふう、みいとこちらのハウンドと同サイズよ機体が5機。逃げる生身の奴らと入れ替わるように出てきた。こちらもその間にハウンドに乗り込む。
「聞いていただろう? コッチでは金がかかる節約をーー」
コックピットの通信機から総一の声が聞こえてきた。
「了解! フルバースト」
全火器を全開にぶっ放す。「☆¥%〒〜!!!」視界を遮らない程度に漂う硝煙、総一の狂ったような叫び声。無傷の敵機。
「総一、正気に戻れ総一。どう言う事だ?手応えが妙だ」
「アンタがどう言う事だよ言ったよな節約しろって、ほんの1秒前にいったよな?
……魔術ってヤツによる防御だな。恐らく弾は効かないと考えていい。だからこれ以上撃つな。これ以上撃つなよ」
ふん、無駄弾を撃つ趣味なんて無いわ。
「ならさ。コッチも技術見せてやんよ。ヘイセー無礼んなファンタジー」
空手とカンフーの混合風の構えからの一拳で業来槌の装甲をぶち破り一機停止させた。
「はん、中学の時から始めた通信古武術だ。硬い相手にはコレに限る」
「何を手こずっている高い金で雇ったんだ。必ず殺せ」
上の方、鉄の手すりに身を乗り出して河童のお面をつけた成金スーツの男が叫んでいる。ここのボスかな?
そんなハゲ野郎のモチベ下がる命令を受けて相手さんの業来槌達は連携攻撃、有効打を避けながら三機停止。だが、コチラも右腕を破壊されてタックルで弾き飛ばされた。
「プロだねアンタら」
最後に残った一機は一番腕が達つ奴。だがチェックメイトだ。
一手、態とデコトラの方に吹き飛ばされた。
一手、壊されたコッソリ予備の腕に換装した。
最後の一手、それに気づかず誘いに乗った。
「通信古武術 装甲貫き」
ラスト業来槌の頭部を潰し、戦力を全て無効化した。
数日後、葛原子爵邸。
「それで暴れ回った結果。頼んだ品物はこうなったと」
ヒビが入った白い指輪。それを弄り回しながら元子爵葛原柾彦様は俺たちを見下ろす。
「まあよい。まあよい。瑕や破損はダメだと条件を詰めなかったコチラの落ち度。引き渡しに応じず後ろ暗い商売をやっていた利平屋の残党一つ潰せたしお釣りも来よう」
指輪が俺の手元へ投げられ寄越された。
「箔付けとしては使えぬが、指を縮め伸ばす玩具くらいにはなるだろう君らで処分しておけ」
セーフ、何とか帰れる。この人の依頼はなんか嫌だな。もうしたくない。




