第六話:背尾つかさは魔法を使う
魔法!
是非とも一度見てみたい!
そう思った直後にその願いは叶えられた。
見たくないものも一緒だったけど。
神様、こういう時は『良いニュースと悪いニュースがある』って言って欲しいです。
「一匹抜けたぞー!」
その声に驚いて振り向いてみると、そこにはトゲトゲのたくさんの脚をガシャガシャさせながら1メートルほどはある超巨大な白いゴ〇ブリが。こっちに向かってくる!
「キャアアアアアアアアアア!」
色はともかく、色喰蟲っていうのがGっぽいのは予想してた。でもこの大きさはダメ。予想外。大きいから細かいところまで見えてしまう。
「赤よ、炎の赤よ。矢を形作れ、飛んで刺され!」
バージルさんがそう叫ぶと、手元に何か赤くてフワフワした物が集まり、炎の塊が噴き出して白い蟲にぶつかった。甲で弾かれたようで刺さりはしなかったけど、手から火矢が出た。凄い、魔法だ!
「赤よ、灼熱に燃える赤よ。槍になれ、刺さって地面に縫い留めろ!」
続いてクローブさんも魔法を使うみたい。手に赤い何かが現れると炎が噴きあがり、捻じれながら傘くらいの長さの槍になる。放物線をえがいて高く飛び上がると急降下して白ムシに突き刺さった。
ひいっ!見たくない見たくない!
目をそらす私を庇うように、タバサさんが私の前に進み出る。
「灰色よ。煮え立つ熱湯になり、叩きつけて」
イヤな虫には熱湯ですよね。でも、こっちこないで欲しい時にはもっと直接的なアレでしょう?
こんな時だというのに、わたしの中の冷静な部分が、この魔法の言葉の構文を読み解いていた。
『色の指定』+『形状の指定』+『動作の指定』だよね?
タバサさんは日本人の田畑さんなら、私にも使えるよね。
『緑よ、平面の大きいスリッパになり、パーンッてやっちゃって!』
こんなアバウトな叫び声だというのに。そう叫んだ私の目の前に、ライムグリーンのツルツルのクマが現れて、大きな大きな抗菌と書かれた病院のスリッパがを抱えると、パーンッって白ムシを叩き潰した。
クマちゃん、いた?!
やっとクマ。
あ、つかさの苗字の瀬尾は、テディベアの名前の由来のセオドアからです。