第四十六話:背尾つかさはドワーフに車をねだる
発酵石を手に入れたわたしは家に戻ってせっせと料理の下ごしらえに励む。
結局、イエロー君に出会った後そのまま真っ直ぐ帰れたわけではなく、さんざん道に迷ってしまった。
「ねぇ、ひいろ様? 方角はあっちなんだから、さっきの大キノコを迂回するの逆回りのがよかったんじゃないかな」
『こまったねー』
まゆげの端をさげて首をかしげてみあげるポーズが可愛くて、すべてを許す。しかたないよね、たぶんこの子達には迷ってる認識ないっぽいし。
天井をみれば方角がわかるはずなのだけど、方角がわかっても道がないだとか道がドンドン急速成長するキノコに塞がれて行くとかする不思議な森なのでまっすぐ歩けなかったのです。
結局、疲れ切ったころにひいろ様とクッキー君になんとかならないかと聞いてみたら、わたしを抱えて飛んでくれました。飛べるのね、君たち。クマだけど精霊なんでした。何時間も歩いたわたしの苦労、がっくり。
家に着いた後はぐったりと疲れてベッドに直行したけれど、次の日からはお茶替わりに薬草茶をクピっと飲みながら、さっそく製作開始。
お店で売っているお米がさすが不思議作物というべきか、白米がそのままとれる稲どころか、俵に入った状態で取れる不思議作物なんてのもあるみたいだけど、玄米がとれるものもあるみたい。玄米をクマ動力の精米機(ビンとすりこ木)でゴリゴリして手に入れた米ぬかと発酵石でぬか床をGET。きゅうり、茄子、人参の浅漬けができます。
甘くないのでクマ達はしょんぼり。手伝ってもらったお礼もかねて甘いものも作る。重曹らしきものが掃除用具として露天で売っていたので、ラムネもどきとカルメ焼きを作る。なぜかクマ達にブーブー言われる。見た目が可愛くないとダメなの?
しかたないので薄焼きビスケットに溶かしたマシュマロを挟んであげる。甘い香りが漂う。
稲藁があるので豆を蒸して納豆を作る。納豆は単体で食べても美味しいけれど、油揚げに入れて焼くとおつまみ力があがる。豆腐と油揚げと卯の花があれば作れる料理は一気に増える。豆類は大豆からひよこ豆レンズ豆と露天でたくさん買い込んである。かなり面倒だけど作ってしまおう。スキルのおかげでほとんど失敗しないしクマ達が手伝ってくれるので手際がとても良い。
「ねぇ、つかさ。あんた帰ってきたと思ったら何作り始めたの?」
「ドワーフ対策のおつまみです。漬物類は時間がかかるので、早く手を付けないと」
そういいながらも、キッチンはラムネとカルメ焼きとマシュマロの甘い香りに満たされており、その中で豆を蒸したり豆乳を作って豆腐を作ったりしている。しまった、こっちは無臭だった!
「違うんです、これはクマ達の罠……」
タバサさんのジト目を受けながら、湯葉をすくいあげては巻いていく。つい豆腐料理という事で作ったけどドワーフの口にはあわないかなぁ。
茹で野菜の湯葉巻きはタバサさんに大好評でした。
ドワーフ達には油揚げにお餅を入れて甘く煮込んだ餅巾着を追加。ここに牛すじ煮を入れても美味しい。
「タバサさん、お肉って樹になる以外に手に入れる方法ないんですか?」
「ソーセージは普通に畑で生えるし、チキンレッグやモモ肉ムネ肉はそろそろうちの畑でも収穫できるね。それ以外に何が欲しいんだい?」
「内臓とかスジ肉とか骨付きのばら肉です」
「いちおう、北の街では牧畜もやってるよ。目的は毛を取る為なんだけどね」
機羊という動物を飼っていて、布を作っている人たちがいるらしい。
「赤い草を食べさせると赤い毛が生えたりとか?」
「そうそう。よく知ってるね」
冗談だったのに……
それどころか、スイカを食べさせるとスイカ柄の毛が生えてくるらしい。プリンターみたいな不思議生命なのね。ちょっとその北の街っていうところも見てみたいかも。
タバサさんに聞いたところ、小さな農村はいくつもあるけれど、街はここ『南の街』と『北の街』しかないらしい。物々交換の拠点や政治の中心として大きな街があるらしい。政治なんてこの世界にもあるんだね。わたし、ここが王政なのか共和制なのかも知らないけど、いいのかな。
ミルク草からとった牛乳に発酵石を使い、バターとチーズを作る。無理だろうと思ったけど、わりと簡単にできてしまった。ミルク草の乳脂肪分が謎すぎる……
せっかく豆腐を作ったので、豆腐の味噌漬けを作る。ご飯に乗せて食べると際限なく食べられる恐ろしいおかずだ。チーズも味噌漬けにする。
味噌豆腐の方は、濃厚なうま味のあとにさっぱりとするのだが、味噌チーズの方は塩気のあとにねっとりとした濃厚なうま味が口の中に残る。濃厚系かさっぱり系か、どちらが好きな人でもこのセットの前にはひれ伏す事になるだろう。
数日かけてこれらの料理を完成させると、ドワーフ達に会うために再び山に登った。
サラリ君とイエロー君に会ったことで、ちょっと気になる事ができた。他の街にも行ってみたくなったんだけれど、歩いて何日も旅をするのは避けたいし、とはいえずっとクマに抱っこされていくのも変なので、ドワーフ達に乗り物を作って貰おうかと思ってます。これだけのおつまみを持ち込めばきっと断りはしないだろう。
ネットワーク機器のEOLとか嫌いだ……2月まで予定みっしりやないかーい




