第四十五話:背尾つかさは名前を当てる
間が空いてしまってスミマセンでした!
ぽよん。
ウレタンマットレスのようにふわふわの腐葉土を踏んで歩く。
キノコの森とはいっても、キノコだけしかないというわけでは無いようだ。まばらに生えている大きな木の間を縫うように歩いていく。
まんまるで白いキノコを踏むと、ぽふんと胞子の煙を吐いてしぼむ。小さなころに面白がって良く踏んだのを思い出す。
他にも、毒々しい赤いキノコも見かける。これは触るとかぶれるヤツ。危ない危ない。
倒木をくぐると、木の陰にびっしりと平たいキノコが重なる様に生えている。確かにキノコが多い。
「ねぇねぇ、ひいろ様? これって食べられるのかな?」
そう聞いてみると、きゅーっと体を傾けてから、両手を少しだけ離して見せてくれる。
『ちょこっと』
食べられるけどおいしくないって事かな。それともちょっとだけにしておけって事かな。どっちにしろあまりおいしくはなさそう。キノコの採取はやめておこう。たまに松茸っぽいのも見かけるけど、生えている樹は赤松じゃないんだよね。
キノコは凄くたくさん生えている。でも、キノコの森っていう程かなぁ?
そんな風に思っていたのも、最初の一時間ほどでした。
奥に入るほどにキノコ率は上がって行き、見たことのないファンタジーキノコがドンドン増えて行きます。
赤地に白の水玉のいかにも身体が大きくなりそうなキノコとか、傘くらいの大きさのキノコとか。だんだん足の踏み場もないほどキノコが増えて行き、積み重なるキノコの上を歩くようになると階段状にキノコをのぼっていくようになり、気が付くと凄く高い所にいたりする。いつの間にか方向はわからなくなった。
ちょっとくらいの高さなら、飛び降りても下はポヨンポヨンのキノコだから怪我もしないし、適当にどんどん進む。
なんで適当かっていうと、帰り道を確認しようとしたら後ろで大きなキノコが育って道が無くなったから。まるで早回しをしているように、みるみるうちにキノコが育っていくので、道なんてどこにもない。キノコを踏んで進むだけ。天井を見れば方角だけはわかるから、遭難はしなくて済むと思うけど、ちょっと怖い。キャッキャと遊びながら付いて来るクマ達が居なかったらとても心細かったと思う。
キノコの森の奥深くで発酵石が見つかるとは聞いていたけれど、ほとんど地面が見えないくらい奥地に来てしまった。ちょっと来すぎたのかな?
そもそも発酵石は欲しいけど、何が何でも自力採取しなければいけない物でもない。依頼するという手だってあるのだが、来てみたかったという気持ちが強い。だがそれも安全と引き換えに出来る程ではない。そろそろ戻るべきか……。
そう思った頃、ひいろ様がピョンピョン飛び跳ねて手を振り始めた。
彼の見ている先に目を向けると、黄色い絵の具を作った時に会った子がひときわ大きなキノコの上でくつろいでいた。
ゆらゆら揺れる大きなキノコの上に、プールサイドに並んでいるような椅子に横たわり、トロピカルなジュースを(きっとハチミツ)を飲みながらくつろぐクマ君の姿。
バカンスを満喫中なのかな?
次から次にカラフルなキノコが生えては消えていく不思議な森の中でも、真っ黄色の原色はかなり存在感が強かった。
うん、この子にカスタード君って名前は違うな。食べ物の名前に寄りすぎてた。だって原色だし、この子の名前はきっと……
「もしかして、君はイエロー君?」
『はーい』
右前脚を高く上げて、はーいのポーズ。
絵描き妖精を自称するサラリ君が話していた内容を思い出す。
神様が色の精霊を作りだしたという話。そして『三人以外は名前が無い』という話。
つまり、三人だけは元々名前がついているんだ。だから勝手に他の名前を付けようとするのはダメ。そして『色』で『三』と言えば三原色。光の三原色と色の三原色は別だけど、色の精霊なのだから色の三原色で間違いないだろう。それなら他の三原色の二人もわかる。
その三人の色をのぞけば、他は名付け放題という事だ!
その事実に気が付いてニマニマしていると、裾をイエロー君にくいくい引っ張られた。
『ぼくに用事があったんじゃないの?』という事か。
ここであったのは意図せぬ遭遇だし、特にお願いする事もないのだけど、ここに来た目的は果たしておこう。
「発酵石っていう石、この辺にある?」
ぽふんとモコモコの胸を叩くと、案内してくれるようだ。
二時間ほど同じところをグルグル迷った挙句、大きなキノコの枯れた後に手のひらサイズの石を見つけた。案内してくれたわけじゃなくて一緒に道に迷ってくれただけなのは追及しない。
そのお礼と言うわけでは無いだろうけど、黄色い鉱石や黄色いキノコ、バナナ、タンポポや菊の花などの黄色い花束などをどっさり渡された。これは絵の具を作って呼べという事だろうか。
バナナだけはケーキに使っちゃうね。
うちのクマのリボンがとれた!縫うか結ぶか……




