第四十二話:背尾つかさと発酵石
間が空いてしまいましたが
めまいの症状はほとんど治りました\(@ᯅ̈@)/
山と積まれたドワーフ製品の使用感アンケートを、製品の傾向別に仕分け、内容を集計する。
クマたちがえっちらおっちらと力を合わせて、ハチミツに紅茶を少し垂らした物をカップになみなみ入れてくれる。癒し……ゴメン、流石に飲めないや。
ドワーフ達は趣味人だ。凝りたい所に徹底的に凝る。
例えばフライパン。軽くて錆びない使いやすい百年使える。使う人としてはそれだけで充分なのだけど、持ち手に不死鳥の彫刻がされて壊れても自動的に直る魔法が籠められていたりする。千年使えるらしいけど、オーバースペックだ。
剣だってそう。良く斬れて、折れない曲がらない。そこにさらに交通安全と家内安全の祈願が籠められている。そこは分けて欲しかった。
米粒一つの大きさで、精巧な精霊の彫刻がされたなんてに物もある。お米と一緒に炊くとふっくら炊ける力があるし鉄分も補給できる。凄いけどご飯と混ざるよね。ピンポン球くらいの大きさなら使いやすかった。
ドワーフ達は「こんなこと出来るんだぞ、凄いだろう!」の気持ちが強すぎて、無駄な高性能になっているのだ。
「でも、これは言わないといけないよね」
『ぼくたちわかんないやー』と、体を傾けるポーズのクマたち。いいよいいよ、いろいろ料理作るの手伝って貰うから!
そんなわけで、お酒に合う料理で胃袋を掴んでそのまま握りしめる作戦を強化しよう。燻製だけでなく、今回は揚げ物を用意するつもりだったけど、さらに追加する。発酵食品だ。
これを作れるようになるとチーズが自由に使えるので、私も嬉しい。
前にタバサさんと雑談している時に発酵を早める不思議な道具があると聞いたことがあった。ちょっと詳しく聞いてみよう。
「発酵石かい? ウチでは扱わないけど東側の店で普通に売ってるだろ」
「よかった! ちょっと買ってきます」
「待ちなさい、何に使うんだい」
タバサさんが、そのまま出て行こうとするわたしの肩をガシッと掴んで離さない。
「何って、調理にですよ」
そう言ったわたしを見る目が、怖ろしい物を見るような視線になっていく。
「調理の、後片付けに、でしょうね?」
「いいえ。発酵食品を作るためですよ」
「あれは、生ゴミなんかを肥料に変える魔道具なんだよ。食べ物に使うなんてやめておくれ!」
……もしかして、発酵食品無い?
それにしたって、タバサさんは発酵食品を知っているだろうに。日本人なのだから。
「チーズとかどうやって作るんですか?」
「チーズは収穫しないで残したミルク草から採るものだよ」
ミルク草万能だなぁ。小麦畑の隣に植えると自然にシチューになることもあるらしい。具無しだけど。
「納豆はどうなんです?」
「腐った豆とか日本にいる頃から食べないよ!」
そういえば日本人でも納豆苦手な人は多かったっけ。わたしが毎朝食べてたからついつい当たり前の食材だと思っていたけど。
友人に誘われてワニの串焼きとか、蛙の焼き鳥とか、ハギスとか、臭豆腐とかを食べたことがあるけれど、嫌いな人から見ればその系統のゲテモノなのだ。
納豆はやめておこうかな。
因みに友人にチャレンジしようと誘われたけれど、シュールストレミングは辞退しました。
「鰹節は?」
「木から取れる。他の街だけど鰹節樹園があるよ」
不思議植物、凄い。
「味噌は」
「鉱山と同じように味噌蔵と呼ばれる山を掘ると採掘できる。深さによって味が違う」
他に何かあったかな?
「じゃあ、お漬物は?」
「……それは……ぬか床に漬け込んで」
「そこだけは家庭で作るんだ」
「でも、ぬか床なんて作れるのかい?」
「そこで発酵石ですよ」
どうも食材の加工に使う物として扱われていないらしい発酵石に、わたしは大きな商機を見いだしていた。
「ねぇ、そもそもさ、あんたなんでそんな必死に働いているんだい? この世界は食糧が安全に量産できるから物価も安いし、週休四日くらいでも暮らせるんだよ」
「楽しいじゃないですか、いろんな事やるの」
もともと手芸も料理も工作も好きなのだ。
「それなら良いけど……ちゃんと休みも取るんだよ?」
「もちろんです」
心配症のおっかさんであるタバサさんに、わたしの日本での最高月間残業時間を教えたら卒倒するだろうなと思いながら、買い物に出掛けるのだった。
シュールストレミングとキビヤックは一度試して見たいんですよねぇ……




