第三十三話:背尾つかさはのんびりししていられない
大変なことになった。
「会計はこちらです! お釣りが出ないようにお願いします!」
「隣のお店の前には並ばないで下さい!」
「アクセサリーは本日分終了しました!」
きっとこうなると思ったよ、とお客さんを捌きながら言うのはタバサさん。
目をグルグルにして行列を整理しているのはシーナ&カルダ姉弟。
一言で言ってしまうと、ドワーフ製品を並べた露天は大繁盛した。
最初は誰も立ち止まらなかったのだけど、片眼鏡をかけた人が二度見してドワーフ製の品ではありませんかと聞いてきてから、周囲の人の流れが変わってしまうほどの騒ぎになった。
銀細工、金細工だけでなく、木や石を削ったり磨いたりして作った物なども飛ぶように売れていたのは熱気にあてられていたのではないだろうか。あとで返品とかされたら嫌だなぁ。
「物凄く細かくて手間が掛かってるのはわかりますけど、木製の指輪が金貨になるの凄いですねぇ」
わたしがそう言うと、三人は動きを止めてわたしの顔をマジマジと見る。
「この子、病除けの指輪を銅貨で売ろうとしてたのよ……」
「解毒の銀食器も金貨一枚って値札ついてたわね。とっさに一桁増やしたけど」
「空間拡張の袋を売るっていう事がどういう事かわかってないんじゃないでしょうか……」
なにかヒソヒソ言ってる。わたし何か悪い事したかな。
ドワーフさん達の手芸品もほとんど売れたので、次はわたしの買い物だ! とお金でいっぱいになったお財布袋をベルトに固定し、敷物を畳んでリュックサックに詰める。手伝ってくれたみんなにお礼の食事でも……と思ていると、お客さんから肩を叩かれた。
「なぁ、次はいつ店を開くんだ。仕入れの予定を教えてくれ」
「いえ、もう露天は当分しないと思います」
そうだよなぁ。あれだけの品を……。どうやって手に……。などと周囲の人たちがガヤガヤしている。
買い損ねた人たちが再入荷を期待しているみたいだけど、材料の購入資金がないから露天売りしただけなので、今後は露天売りしなくて済むように資金を使いますよ。それに……
「カボチャ大通りのタバサさんの雑貨屋の角を曲がってすぐの工房がわたしのお店なので、今日持って来てない分はそこで売るので、よかったら」
「わ、バカ、つかさそんなこと言ったら」
タバサさんが止めるけど遅かった。
ドドドって地響きがする勢いで買いそびれた人たちの行列が移動していった。わたし、まだここにいるのにね?
「ドワーフの品物を扱うような店なら店番くらいいる大きな店だと思われたんだろうよ。まさか店主一人で、展示スペースも無い店だなんて思ってないよ、あの人たちは」
「展示スペースありますよ。わたしの作った下級と中級のポーションと、ダイエットクッキー平積みしてますから」
「あれは、椅子二脚の間に板を渡しただけだろ」
展示スペースとして使っているんだから展示スペースです。お昼休みには食卓にもなりますけど、あれは展示スペースなのです。
きっとお店の前で行列になっているだろうから、手早く買い物を済ませて戻るとしよう。
マジックアイテムだなんて聞いていないのです。




