第二十八話:背尾つかさはドワーフの生活に驚く
ドワーフの集落では様々な鉱石が掘り出されている。
金属加工大好きなドワーフの職人たちは、案の定変わり者ばかりだった。
♪掘って~溶かしてまた掘って~♪
♪叩いて削ってイイ気持ち♪
そんな歌を歌いながらつるはしを振るい、銅に鉄に金銀ミスリル、オリハルコンにセレーン、なんでも掘り出しては加工していた。
金が取れる鉱脈で銀も銅も鉄鉱石もとれるという無茶苦茶ぶりに驚いたが、彼らは採掘が好きなのだ。
掘って鉱石が出るのが楽しくて仕方がないドワーフに、精霊の祝福は当然あるだろう。
そう思ってひいろ様を見てみると、あっちこっちに手を振っていた。ひいろ様の手を振る先には忙しそうに走り回る小さなクマちゃん達がいた。
洞窟の中で掘削も鍛冶もなんでもやっていれば、物凄い温度になってしまう思うのだが、空調をよほどうまく考えてあるのか、洞窟内にはいつも涼しげな風が吹き抜けており、快適だった。
残念なのは、快適なのが温度だけだったことだ。
交易のお願いをするために集落に入ったつかさは、まずその散らかりっぷりに驚いた。
好き勝手に掘り散らかした鉱石の山と、食べ物のゴミと、酒瓶と、酒樽と、工作で作ったらしき意図不明の玩具がそこら中に広げられており、その隙間に毛織物を羽織って座り込んで眠る人達が埋まっているのだ。
「ここはええと、倉庫かなにかですか?」
「いや、通路だ。通る事は今はちょっとできないが、その辺の物をどかせば通れる」
最初に声を掛けたらそのまま案内を買って出てくれた、オロスガノスさんが言うには通路でこの有様なのだ。
「倉庫はちょっと、散らかっててなぁ!」
「ここよりですか!」
オロスガノスさんによると、だいたいここに住むドワーフは体力の続く限り掘ったり作ったりを楽しみ、何かが完成すると酒を飲んで祝うのだとか。
そして周りの誰かが乾杯と叫ぶと、作業の手を止めて一緒に飲む。飲むものが無くなったらまた作業に戻る。
気が付くと寝ている事もあるけれど、起きたらそのまま作業に戻る。
「身体を壊しますよ! そんな生活していたら」
「そうしたらその間は休むさ!」
恐るべきブラックさだった。いや、本人たちが楽しんで自発的にやっているのだから、学生のサークル活動のような物なのか。
頭痛がしてくるような阿鼻叫喚の生活だったが、わたしとしては欲しい物が譲ってもらえれば問題は無い。
ひいろ様とクッキー君以外のクマちゃんに居てもらう為に、絵の具を自作してみたいのだ。あと、ガラス工芸の材料になるシオニ石も出来たら少しあると嬉しい。
その取引材料として、燻製というお酒のおつまみにぴったりなものを持って来ている。
「あの、ここで皆さんが掘り出している物で欲しいものがあるんです。取引をお願いしたくって」
「そうかい。あそこの倉庫にあるものならなんでも持って行ってくれよ。代金に見合うと思う分だけな。持って来てもらうのは酒がいいなぁ。お金とかは買い物に行くのが面倒だから、できれば商品をそのまま持って来て欲しい」
「……倉庫にお酒を運んで、その代金を勝手に持っていく式の取引、ですか?」
「おう。他の連中もそんな感じだ。俺も銀細工とか始めたら途中で抜けられないしな」
そうか、この集落は対人交渉の窓口が居ないんだ。全員職人だから。全員ドワーフだから。
プラモデルとかレジンとか小説書くとかレザークラフトとか、途中で止められない人多いと思います。
前世はドワーフなんですよ、きっと!
だから仕方ない!




