第二十五話:背尾つかさは世界の形に気が付く
やっぱりおかしい。
高い山に登る途中で街を振り返り、もうこんな高く登ってきたんだ! という景色はよく知っている。
遠く平野が広がっていたり、他の山があったり。地平線や水平線が見えたり、霞んで見えなかったり。圧倒的な広さを感じる光景は、開放感があって良い物だ。
田舎の家でも何度も見たし、学生時代の旅行などでなんども見た物だった。
けれど、今見ている景色は違う。
パレットの街は西と南側に森があり、東側には麦畑が広がっている。南の山から北に向けて流れる何本かの河の一つから運河を引き、街を囲む堀と繋げている。
麦畑の向こうに建物が集まっているものがいくつか見えるから、あれは農村なのだろう。
河と交差するように東西に線が走っている。あれは街道だ。
その街道を目で追っていくと、徐々に遠く霞みながら視線が上に上がっていく。遠く、遠く、地平線が見える事は無く、わたしはそのまま空を仰ぎ見る。
太陽の周囲は青い空だけれど、少し視点をずらせばうっすらと線や影が見える。青い色ガラスを何枚も透かしたかの様だけれど、あれは森と街道だ。案の定、線をずっと追っていくと反対側に回り込み、そのまま街道につながった。
地球だってずっとまっすぐ東に行けば西から戻ってくる。地球儀を見ればすぐわかる。ゲームでも東と西はつながっているし、なぜか北と南もつながっていたりする。
だけど、これは何というのだろうか。まるで裏返しだ。ここは地球の内側なのだろうか。
そう考えて、それはあり得ないと思いなおす。南の山は山なのだ。東にも西にも山があるとは聞いていない。それなら、あそこは壁ではなく外側に向けて引力が働いているのだろう。東の平野も西の森も平地だと考えてもいいはずだ。
おそらくだが、ここは筒の内側のような形をした世界なのではないだろうか。
「そういえば、タバサさんが『ここは閉じているから』とか言ってたっけ」
タバサさんはこの事を知っている。それはそうだ。長年ここに住んでいるのだから。自分でみないと信じられないから説明しなかったのか、それとも……
「たぶんだけど、大したことじゃないから、かな」
街で暮らす限り、世界がどんな形をしているかは関係ない。そして空が落ちて来たりはしないのだろう。
夜には暗くなっていたけれど、太陽は光量が変化していたのか、それとも南北に移動していたのだろうか。これってもしかして天動説?
「影の方向とか、気にしてなかったな」
あちゃーと、おでこを手のひらで叩く。もっと早く気づいても良かった。気づいてもどうにもならないけれど。
真似してあちゃーのポーズを取っているクマ二人をギュッと抱きしめて、ちょっとだけ泣いてしまう。
ここが異世界だという事の実感がわいてきてしまったのだ。
わたしの知っているところと地続きではない場所。見知らぬ土地なのだ。タバサさんが永住しているのだ、きっともう元の世界には帰れない。
じたばたと暴れて『ボクボク!』と自分をアピールしてくるひいろ様と、手を挙げて自分のほっぺをさすクッキー君。
「そうだよね、見知らぬ土地ではあるけど、君たちが居てくれるものね」
もう一度、むぎゅーっと二人を抱きしめた。ふわふわ。
きゃー! 上書き保存してあらかじめ開いて置いた別タブから「次話投稿」したせいか、最後の二百文字くらいが反映されていなかった!
それと、急にブックマーク増えました。読んで頂いてありがとうございます




