第二十一話:背尾つかさはガラス体験講習を受ける
この街の中はファンタジーらしいというか、いろいろとカラフルな髪の色をした人がいるが、ほとんどの人の髪の色は金か茶色であることが多いのだそうだ。
しかし色の精霊が大事にされていて、絵の具が珍重されている事からもわかるように『色』はこの世界では重要な意味を持つ。
その為か髪を染めるという事が、身嗜みを整えたり礼拝したりに近い意味があるらしい。精霊を信仰する神官などもいるらしいが、その人は原色に染めていたりするそうだ。
なので、紫色というやや珍しい色に髪を染めているシーナさんは信仰心篤い人なのだろうか。ゆるく波打った髪とあわさってとても妖艶だ。
「私はね、手芸全般が好きだけどガラスの中に華を閉じ込めたような、こんな蜻蛉玉が好きなの。とっても綺麗だと思うから沢山欲しくて。子供の頃からお小遣いを貯めては買っていたのだけど、あんまり通う物だから作り方を教えて貰ったり、体験させて貰ったりしてね。とうとう……」
シーナさんはにんまりとチェシャ猫みたいに笑うと、両手を広げてこう言った。
「お店作っちゃったの!」
趣味でハンドクラフトする人の理想だー!
「材料は弟に採りに行って貰ってるけど、蜻蛉玉はなかなか売れなくてね。下級回復薬と中級回復薬の違いって色の濃さで見分けるしか無いから、ガラス容器が便利! って広めてくれた上に沢山買ってくれるタバサさんには頭が上がらないのよ」
なるほと、タバサさんの『世話焼き好き』がここでも発動しているのね。さすがタバサさん!
「だから、恩返しにもなるから何でも言ってね」
「ありがとう御座います!」
「そしてできれば蜻蛉玉も買ってみてね。つかささんに似合うの作るからね」
「は……はひ」
営業活動だった!
ちなみに弟さんは、ごゆっくり~他にお客さん来ないしと言って出て行った。一言多いタイプのようだ。
「わたしナオリ草を沢山手に入れたので、ドンドン作りたいんです。ガラス瓶20個ほど売って貰っても良いですか?」
「あ~ん、また売れなかった~」
色とりどりの花を閉じ込めた蜻蛉玉はとても素敵だけど、アクセサリーより先に生活費だ。なお、クマ費やフワフワ費はそれに優先する。
蜻蛉玉が売れなくてガックリと肩を落としたシーナさんは、ガラス瓶を一つ一つカウンターの裏から取り出すと、クシャクシャにした紙を挟んで袋詰めしてくれる。
「あの、これって吹きガラスで作ってるんですか?」
底面だけを平らにした丸みを帯びた瓶は素朴でとても可愛らしい。ジャム瓶位の大きさで口の部分はゴルフボール大に空いていて、耐水紙のような物を被せて紐で縛って売るスタイルだ。
カントリーな雰囲気で、日本でこの瓶を見かけてら衝動買いしていただろう。
「あら、作り方を知ってるの?」
「ちょっと興味があって動画……じゃなくて、ええと調べたことがあっただけです」
「なんだ、興味あるなら言いなよ。一回やってみる? ね、そうしよう。はいこっち座って!」
あれよあれよという間に、青いクマの踊る炉の前に座らされてしまった。
「赤よ炎の赤よ、熱を塞き止める手袋になり、つかささんの手を覆って」
おお、シーナさんが魔法を唱えるとわたしの手の周りにもやっとした赤いフワフワが現れた。その上には小さな赤いクマちゃんも乗っている。さっき薬やクッキー作るときに居た子とはちょっと顔が違う。
「魔法で耐熱用のミトンみたいなものを作ったって事ですか?」
「そうそう。うっかり触れたら火傷するし、そうでなくても熱いからね」
魔法はやっぱり便利だな、クマちゃんたちにはいろいろ便利に頼らせてもらおう。
つかさのタスク
・ガラス瓶の購入
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・そのうち蜻蛉玉を買う ←NEW
・ホットケーキに掛ける物の購入
・赤クマが消えて、クッキー君は残っている事の検証
・美容薬……じゃなかった上級回復薬の作りかたを確認する




