13話 落ちるもの
試練の旅に出てから数日が立った時の事。
「次がラストのチェックポイントらしいわよ」
ローリエがそんなことを言って、俺たちに神書を見せてきた。
もともとは白紙だったページには
【この先、ずっと直進せよ。次、入域への道程は終了となる】
と刻まれている。
「へえ、もうか。早いな」
まだ二週間も経っていない筈だけれども。もう最後なのか、と思っていると、ローリエが苦笑した。
「早いなって……貴方のお陰なのよ、アクセル」
「そうなのか?」
「ええ、貴方が、本来は通りづらい湿地や沼地、毒草の群生地とかを、私たちを背負って一気に駆け抜けてくれたからね」
道中、森の中、という状況は変わらなかったが、地形は様々に変化していた。
ただ、それでも、進めばいい、という目的は変わらなかったので、そういう場所は俺が二人を抱えて一気に飛び越えることが多かったのだ。
「遠回りもないし、そもそもとんでもないペースで動けてるわ。少なくとも、歴代で一番早いのは間違いないわね」
「ほう、だとしたら、良い事ではあるな」
「ええ、本当に。疲れも少ないしね」
そう言ってから、しかしローリエは、表情を引き締めた。
「ただ、ここから先は、私も行ったことがないし、記録もない道なのよね」
「地図にはあるのに、行ったことがない?」
「ええ、未開拓地域よ。この地図のここから、ここまではね」
そう言ってローリエは神書の端の方の地域をぐるりと丸を付けるようになぞった。
「精霊都市が出来てから、色々と地域の開拓は進めているけれど。いまだにこの地図全ての地を踏破したわけじゃないから。この地図そのものが、神様の贈り物で。貴重なデータなのよ」「なるほど。だとすると、これから行く場所を見るだけでも、貴重なデータの一つになるんだな」
地図に描かれている情報と、実際に見れるモノは違う事が多い。それはローリエも分かっているようで、
「ええ、持ち帰ることが出来ればね。だから、気を付けて行きましょう」
「ああ、了解だ」
†
それから数日。
俺たちが森の中をひたすら進んで、休んでを繰り返した。
殆ど景色は変わらなかったので、直進するだけでも大変ではあった。
ただ、神書の地図にローリエの魔力を通せば、自分たちがいる場所が光の点によって示されるので、それを用いてひたすら進んでいた。
その日も朝から出立し、数時間ほど歩いた頃合いだ。
「あれ? なんか音がするな」
遠くから、水の音がした。
「え? どこから?」
「向こうの方だ」
俺の指差す方をローリエは見て、そして神書に目を落とした。
「あ、本当ね。その方向にチェックポイントはあるみたいよ」
「泉が近づいているってことかね?」
「多分、ね。精霊神の泉の入り口が、必ずしも水場である、という訳ではないから。ただ、水が近くにある場所ではあるのは間違いないわ」
「そうか。なら、気を張って頑張っていくか」
「おうよ親友ー」
「ええ、行きましょう」
そして俺たちは水の音に近づくように歩いていき、やがて――
「お、森を抜けそうだな」
目の前の木々の合間から光が差し込んでいた。
先ほどまで、やや薄暗い森の中だからこそ、光の具合がよく見えた。
「そうね。丁度、あそこの、抜けた辺りにチェックポイントがあるみたい」
ローリエも地図を見ながら言ってくる。
だから俺たちは、そのまま森中を行き、光が差す方へと進んだ。
そして、森を抜けた先には――
「え……?」
確かに水場があった。
滝という水場が。
そう、先程から水音を立てていたのは、滝だった。けれど、
「何よ、これ……」
ただの滝ではない。
――ドドド!
と、大量の水が、巨大な断崖から流れ落ちている。
元々は大きな湖が、途中で寸断されてしまい、そのまま水が流れているような。
大瀑布と呼ぶべきものだったのだ。
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