10話 続く道のり
試練二日目。
朝からスタートした俺たちは、神書の地図に描かれたチェックポイントを目指して、森の中を進んでいた。
「結構歩いたけど、まだまだ鬱蒼としているというか、広い森だな」
呟いた俺の台詞に、ローリエが言葉を返してくる。
「そうね。この森は地図を見れば分かると思うけど、幾つかの連なる山々を飲み込むような形をしているからね。相当よ」
言われて地図を見れば、確かに、幾つかの山々が丸ごと森林部に含まれているのが分かる。 というか、精霊都市と、その周辺の平原を除いて、ほぼ森で覆われているというべき地形だ。
「こういう森は人間界だと、未開拓地域などによくあったけれども。都市の近くにもあるとはなあ」
「精霊界は、人間界程開発の手を入れられている訳じゃないからね。ただ、この辺りの森の、街道整備はしてるけど」
彼女の言う通り、森の中ではあるものの、土を踏み固めた程度の道は存在していた。
お陰で、今も大分歩きやすいのだけれども、
「道を作るってことは、この辺りに人が来る用事があるってことだよな」
「ええ。この森の奥地に、魔法薬の有用な素材が群生している場所があるの。栽培が難しい類のモノだから、ここで取っているのよ」
「なるほどなあ。錬金術でも、そういう人工的に作れない素材があるから分かるぜ、ローリエー。そういう素材、貴重だよなあ」
デイジーは感慨深そうに言う。
……素材がないと、作れないものは勿論、直せないものもあるしなあ……。
今、自分の輸送袋に入っている壊れたままの槍だってそうだし。
そういう素材の重要性を知っているからこそ、こういう道も作られたのだろう、と足元に歴史を感じていると、
「そして、次の目的地は、その素材が取れる場所の近くね」
ローリエが道を進みながら指をさした。
地図の光と彼女が示したのは、森の奥、緑色に染まる山の方向だ。
「このまま進めばすぐよ。行きましょう」
「ああ、了解だ」
そして、進むこと数十分。俺たちの前に姿を現したのは、
「え……?」
斜面、というには厳しすぎる、ほぼ崖な山肌と。
整備されていた道と、恐らくきれいに作られていたであろうトンネルが、崩壊した光景だった。
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是非一度、読んで頂ければ嬉しいです。