19話 変容
魔術研究所の奥にある会議室に集まったのは魔術研究所の幹部職員とカトレア、医療ギルドの主要メンバー、そしてバーゼリアとサキだ。
「いやー、ご主人お疲れー」
「ああ、半日ぶりにアクセルを見ると、光輝いて見えますね……」
と、バーゼリアとサキの二人はくっついているが、それを気にせず、俺は精霊都市ベルティナの面々に、現状を報告していった。
そして、話し終えるころには、
「魔獣による魔力の食害、か。まさか、そんな事態になっておるとはのう……」
「精霊の泉や精霊姫様まで被害を受けているなんて……」
と、カトレアや牡丹はショックを受けているようだった。
このタイミングまで向こうの情報は伝わっていなかったのだから仕方ない部分もあるけれど。この事態は予想外であったらしい。
「そんなわけでな。向こうは向こうで原因を調査中らしいぞ」
「ふむう、なるほどのう。いや、ありがとうアクセル。おかげで色々と知ることができたのじゃ。……しかし、そういうことなら、今やっている実験は無駄になるかもしれんの」
「そういや、どういう実験をやっているんだ」
さっきも精霊道安定化のための実験をやっているとか言っていたけれども。具体的には何をやっているのか、というのは聞いていなかった。
だから今尋ねると、
「うむ。精霊道が安定しないのは魔力の不足によるものだと仮定しての。大量の魔石を、精霊道が出てきた地点に配置し、道内に流し込むことで、無理やり安定させることは出来ないかってやつじゃな」
「ずいぶんと、パワープレイな実験だな」
「そうじゃな。でもまあ、問題によってはそういう力技による解決が出来ることもあるのじゃし、やってみる価値はある――ってことで今日、初めて試したんじゃけどね。精霊道の出現時間を向こうがコントロールできていて、意図的に短くしているのであれば、意味がなさそうじゃな。ま、実験というのは失敗するためにやるものでもあるし、この経験は次につなげられると思えば良いんじゃけど」
「ポジティブだな」
「当然じゃよ。問題が起きていることは大変じゃが、向こうの仲間たちが元気である事には違いがないのじゃから。それだけでも前向きになる要素じゃからな」
わはは、とカトレアは笑う。
どうやら本当に、向こうにいた仲間たちを思うと不安だったようだ。
その不安の種が解消されたことによる開放感が、彼女の笑みを作っているのかもしれない。
……だとしたら、今回、精霊界へ行った意味は確かにあったな。
と改めて、実感していた。その時だ。
「か、会議中失礼します!!」
会議室に、研究所職員の一人が飛び込んできたのは。
「な、なんじゃ、どうしたそんないきなり。大声で」
カトレアの反応に対し、職員は焦りと震えが混じった声を絞り出す。
「た、大変なんです……! 拳帝の勇者と共に草原の警戒をしていた実験中の職員が、精霊道から現れた魔獣に――龍に襲撃を受けました!」




