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捨て駒の罠師  作者: ポコナムチン


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第6話 これまでとこれからと

あれから少年は、酒場で飲んだくれている大剣使いのもとへ、報酬を受け取りに行く


「おぅ少年。まさか生きてたとはな。」


「俺は信じてたぜ?」


嘘だ。


出なければ、自分を見たときのあの驚いた表情に説明がつかない。


「おいおい生きてんのかよ小蔵!」


「死ぬ方に賭けてたのによ!」


大剣使いの友人だろうか。


どうやら自分の死をかけごとの対象にしていたらしい。


だが、今はそんなことに腹を立てている場合ではない。


「あの…報酬を」


「あぁ報酬ね。はい」


今回も額にしては前回とそう大差ない。


「じゃ、また次もよろしく」


二度とごめんだ。


こんな短期間で3度も死にかけるなんて。


明らかに疲れた自分に対し、女神官が問う。


「あの、今日も一緒にどうですか?」


最初は断ろうかと思った。


二日も連続で食事を恵んでもらうわけにはいかない。


だが、腹の虫は正直だ。


グゥー


「ふふっ、今日は何がいいですか?」


少年らは、昨日と同じように食卓を囲む


「昨日ならず今日までも。ありがとうございます」


少年が頭を下げると、女神官は少し困ったように笑った。


「いえ、助けてもらったのはお互い様です」


「あなたがいなければ、私たちは今頃ぺっちゃんこでしたから」


なぜか自信満々に言う彼女。


そうだ、自分は今日一人の人間を助けたんだ。


ろくでもないのもいたけど…


「でも、君はここを離れたほうがいいと思う」


その言葉に少年は驚愕する。


「でも……あなたたちは命の恩人です」


「それに、僕が抜けたらまた新しい犠牲者が…」


昨晩の彼女との会話を思い出す。


あの男は囮が消えたら補充する。


そんな男だ。


女神官は悲しげな顔で言う。


「いいんです。少なくとも、あなたが目の前で死んじゃうよりは」


彼女の見せた涙が、僕の昔の記憶のふたを開ける。


まだ僕が小さかった頃の父の言葉。


「いいかーー。女が泣いてるときはな。」


「理由なんか聞かず助けてやれ」


まだ小さかった自分には言葉の意味が分からなかった。


でも、その教えを実行するなら今しかない。


「なら、僕と行きませんか?」


あの男からの解放。


今の彼女に必要なことといえばそれしかない。


彼女は袖で涙をぬぐうと、ニコッと笑い答える。


「ありがとう。でも、ごめんなさい」


なぜ。


その疑問は昨晩からあった。


「……昨日言ってたことと関係あるんですか」


少年の問いに彼女はしばらく悩み、やがて打ち明ける。


「実はね。」


そういい、彼女はミグでの袖をたくし上げる。


白く細い腕。


その美しい肉体にそぐわないものがある。


「これは……?」


少年の問いに少女は答える


「初めて見る?これはね、奴隷の印」


赤黒く、痛々しい焼け跡として残るそれは、とても人に見せられるものではない。


「私ね、昔、奴隷だったんだ」


「私を生んでお母さんがすぐ死んじゃってね」


「叔父の家に引き取られたんだけど、子供一人を育てるのは難しかったみたい」


彼女は淡々と自分の過去について語る。


「それで売られちゃったんだ」


「そして、そんな私を買ったのがあの人」


少年は何も言えなかった。


自分がしてきた苦しい経験は、せいぜい3日前からの出来事だ。


だが目の前にいる少女はどうだ。


彼女の人生に、幸せな日々はあったのだろうか?


「泣いてるの?私なんかのために?」


気づけば少年の目からは涙が流れていた。


「だって……君があまりに…」


だが、彼女は続ける。


「私はこれがある限り逃げられない」


「でも、あなたならそれができる」


「あんな奴の言いなりにならないで!!」


彼女は強い。


心も体も。


自分なんかより何倍も。


「私からの最初で最後のお願い」


「どうか幸せになって」


それからのことはよく覚えていない。


ただ、彼女のそばにこれ以上いても、意味がない。


それが彼女を悲しませることだとわかっているから。


少年が覚悟を決めるのにそう時間はかからなかった。


宿を飛び出した少年が向かう先は、始まりの場所。


冒険者ギルドだ。

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