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捨て駒の罠師  作者: ポコナムチン


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第4話 動く巨象

大剣使い「おい! どうなってんだよこりゃ!」


あの像はゴーレムだった。


そんな事実、今はどうでもいい。


この出口が塞がれた状態で、あんな攻撃を避け続けるなんてできない。


少年「考えろ……考えろ!!」


少年「崩れた天井……塞がれた入口……動くゴーレム……」


女神官「天におります至高神よ! どうか彼の者に裁きの光を!『聖浄光』《ホーリーライト》」


女神官の放った奇跡は、確かにゴーレムへ命中した。


だが――


女神官「……! 効かない!」


大剣使い「バカやろう! ゴーレムは物理も魔法も耐性があんだよ!!」


大剣使い「くっそ……!! おりゃあああ!!!」


大剣使いから放たれた鋭い一閃。


破壊力だけなら先ほどの奇跡を上回っている。


だが。


キンッ


甲高い音を立てて剣が弾き返された。


その衝撃で剣は男の手を離れ、無惨にもゴーレムの足元へ転がる。


剣を失った大剣使い。


攻撃魔法に乏しい女神官。


罠に詳しいだけの少年。


一行の冒険はここで終わる。




終わる?




否。




あいにくと少年の中には、そんな選択肢はない。


少年「あの攻撃力でも削れない防御力……」


少年「きっと僕たちじゃ倒せない……」


少年「そうだ……」


少年「倒す必要はないんだ」


少年「もしかしたら……!」


少年は女神官へ問いかける。


少年「あなたはどんな奇跡が使えますか!?」


女神官「そんなこと聞いたってどうにもならないよ!!」


少女は腰を抜かし、その場へへたり込んでいた。


唇は震え、目には涙が浮かんでいる。


とても先ほどまでの人物とは思えない。


極度の恐怖からか小水を漏らし、すべてを諦めたような表情をしていた。


少年「いいから必要なんです!!」


女神官「回復と少しの強化だけよ!!」


女神官「攻撃魔法はさっきの光だけ!!」


少年「それだけ分かれば十分です!!」


少年は策を説明することなく大剣使いへ声をかける。


少年「僕に考えがあります!! 一度こっちへ来てください!!」


しかし大剣使いは動かない。


剣を失った衝撃で固まっていた。


少年「僕がやるしか……ない!」


少年「僕に速度上昇の奇跡は掛けられますか!?」


女神官「どうなっても知らないよ!!」


女神官「偉大なる風の精よ! 彼の者に駆ける力をお与えください! 『疾風足』《ウィンド・ステップ》!!」


体が軽くなる。


少年は覚悟を決めた。


少年「よしっ!」


少年「こっちだ!!」


大剣使いへ迫るゴーレムを呼び止める。


その手には先ほど蹴り飛ばされた宝箱が抱えられていた。


ドスン……


ドスン……


ゴーレムが迫る。


少年は崩れた入口の方向へ少しずつ後退していく。


少年「まだ……」


少年「まだ……」


少年「今だ!!」


振り下ろされた拳を紙一重で回避する。


慣れない速度上昇の影響で、そのまま横へ転がった。


だが。


ゴーレムの拳は入口の瓦礫へ直撃する。


轟音と共に岩が砕け散った。


少年「今です!!」


少年「早く!!」


その声で二人は我に返った。


必死に入口へ駆け出す。


全員が脱出したことを確認すると、少年は宝箱を部屋の中へ投げ入れた。


すると――


ゴーレムは追ってこなかった。


大剣使い「ハァ……ハァ……なんで……追ってこねえんだ」


少年「ハァ……あのゴーレムは……宝箱を守っていたんです」


少年「だから神官さんが攻撃した時も、そちらには目もくれず、あなたを攻撃し続けたんです」


女神官「ハァ……ハァ……それにしても、よくあんな方法思いついたわね」


少年「最初に攻撃を受けた時、地面がへこんでいたでしょう?」


少年「あの威力なら、入口の瓦礫くらい壊せると思ったんです」


少年は自分の考えを説明した。


女神官はそれを聞き、満身創痍ながらも驚きの表情を見せる。


女神官「あなたって実はすごいのね!」


少年「いえ、僕なんかまだまだです」


少年「父なら、あの罠を見抜けたかもしれませんし……」


女神官「でも助かったのはあなたのおかげでしょ?」


女神官「ありがとうね」


久しぶりに人へ感謝された気がした。


だが、この状況をよしとしない人物が一人いる。


大剣使い「どーでもいいけどよぉ」


大剣使い「あの宝箱の中身はどうなってんだよ」


少年「無我夢中だったので詳しくは分かりませんが……」


少年「あの軽さからして、中身はなかったと思います」


その言葉に、大剣使いはさらに苛立つ。


大剣使い「思いますじゃねえよ!!」


大剣使い「実際に見たわけじゃないんだろ!?」


大剣使い「大体、俺の剣はどうすんだよ!!」


大剣使い「あれがなきゃ俺たちの中に戦える奴がいねえだろ!!」


もっともな意見だった。


今の自分たちでは、低級な怪物相手ですら苦戦するだろう。


女神官「とにかく今は帰りましょう」


女神官「私の『聖浄光』だって、あと一回しか使えませんし……」


大剣使い「うるせぇ!!」


大剣使い「どっちでもいいから、さっさと取ってこい!!」


彼女か。


自分か。


少年に与えられた選択肢は、いつだって一つしかない。


少年「僕が行きます」


大剣使い「おぉそうか」


大剣使い「どうか無事に帰ってこいよなぁ?」


その言葉に感謝などない。


ただの脅しだ。


女神官「……っ」


少年は再び広場へ足を踏み入れる。


すると――


先ほどまでの激闘の跡が嘘のように消えていた。


いや。


まるで最初から何も起きていなかったかのように。


宝箱は元の位置へ戻り、


ゴーレムは再び巨大な石像となっている。


少年「……」


なら剣はどこへ消えた?


地面にはない。


壁にも刺さっていない。


あったはずの物が消えるなんてあり得るのか?


いや。


探していない場所が一つだけある。


まだ見ていない場所。


少年はゆっくりと宝箱へ近付く。


先ほどまで命を奪おうとしていた箱。


今度は自分の意思で手を伸ばす。


少年「……ここか」


息を呑みながら蓋へ手を掛ける。


そして――


ゆっくりと宝箱を開いた。

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