シャントルを出て
「本当に行くのだな、、」
「ええお世話になりました」
早朝に館から出る。ディゴール公爵が出迎えてくれた。
「寂しいものだな、、。昨日のうちに何の進展も無いとは、、」
本当に何を言っているのだろうこの人は。一度顔面殴ろうかな。
「あの、ライトさん」
「何かな?」
セリナに名を呼ばれたので首を少し横に動かした。
「これ、あの、受け取ってください」
渡されたのは金色のメダルだった。そのメダルにはアークティズ家の紋章が刻まれている。
「困った事があってもそれがあれば、大抵は解決します」
「そんな物を、、ありがとう!」
「ううん、こんな物でごめんね」
こんな物と言うがこれは平民の僕からすればかなりの物だ。大抵は解決する、これは僕の後ろにはアークティズ家がついているから歯向かうと大変な目に遭うぞと言うそのままの意味がある。
「では、私からはこれを」
イリア副隊長が渡してきたのは…
「本とバッグ?」
腰に巻けるウエストバッグとどうやって持っていけるか分からない分厚い本。
「その本は魔導書だ。光魔法についても記載されているからきっと役に立つと思ってな。バッグは〈マジックバッグ〉だ。そんなに物は入らないが本や剣を入れるのにはぴったりの代物だ。」
この人はこの人なりに考えてくれたのか、、。光魔法なんて使い道がないから学ばなくて良いなんて思ってたけど、この先何かあるかも知れないし改めて学んでみようかな。
ガタガタと音がした。振り返ると手配された馬車が一台、ゆっくりとこちらにやって来る
「迎えが来たようだな」
ディゴール公爵が寂しげに言う。
「お世話になりました」
もう一度正面を向き、深々と一礼。
馬車は館の前で動きを止めた。
「またシャントルに来ると良い。」
ディゴール公爵がニンマリと笑顔で言う。
「うちの娘を助けてくれて本当にありがとう。あなたは我が家の英雄よ」
セリナの母が言う。
「英雄だなんて、そんな」
「死ぬなよ、ライト。生きてまた会おう。酒を交わすために」
イリア副隊長が優しい笑みで言う。
「ライト」
セリナが泣きそうなのを堪えて一言。
「これと言って気の利いた言葉は思いつかないけど、、その、これだけは言いたい」
「命を救ってくれてありがとう。またね、ライト」
「うん、またねセリナ」
二人で握手を交わした。セリナの体温は温かった。
ブルル
馬が荒い息を出す。僕は馬車に乗り込み、手を振った。ゴト、ゴト、と穏やかに動き出す。王都シャントルとの別れ。
(メンバーと合流して、ひと段落着いたらまた来よ!)
ーー王都リッカル(ライトの住む王都)付近の森ーー
出発して十一時間が経過
「にーちゃん、おい、にーちゃん!」
「んん」
「起こしてすまんな、だがここから先は行けないんだ、何しろ獣道は馬車じゃ厳しくてな」
御者が言う。外はどっぷりと深い闇に染まっている。
「分かりました、ここまでありがとうございます。」
ぺこりと頭を下げ、馬車から降りた。
「道中お気をつけて」
今度は御者がお辞儀をし、そのまま馬車は僕を置いて再びシャントルへと歩み始めた。
「こっからは森か、暗いな《光よ》」
暗い森を歩く。遠くで獣が吠える声が聞こえた。ここの森は大して広いわけでは無いが馬車が通れるような道はない。
「お、明るくなってきた」
王都は冒険者のために夜も明かりがついている。ほのかに明るいランプを見るとホッと一息つける。
「なんか、おかしいな」
あり得ないのだ。道やギルドの場所を示すだけのただのランプが森から見えるほどの光量を放っているなどあるはずがない。
「何があったんだ!?」
急足で森を抜ける。その時に見たのは信じたくない光景だった。
「王都が…燃えている…」




