王都シャントルの最後の観光
「いやー楽しかったなぁ」
「よかった」
空は早い事に既に赤く染まっていた。僕とセリナは今帰路についている。
「ドワーフ達の鍛治、生で見れて嬉しかったな。他にもご飯とか美味しかったし、、あ、お金出してもらってごめん」
「いいよ、私が案内したかったんだし奢りたかったんだから」
「そう?」
公爵の子に奢られる事など、この先多分無いだろう。
「そーいえばさ、今日寝る場所あるの?」
、、、
「あ」
ーーーー
「よくいらっしゃいました!」
ディゴール公爵が満面の笑みで迎えてくれた。
「今日だけお世話になります」
「良い良い、イリア殿からは事情を聞いているよ」
そう、なぜ僕が兵舎で寝ないのか。それはイリア副隊長がもう必要ないだろうと僕を半強制的に追い出したのだ。
(くそう、イリア副隊長はこうなる事想定してたな?!何が「ではな」だ!ふざけんな。明日一発殴ろ)
「どーしたの?」
「何でもない」
そう本当に何でもない。ただ無性に副隊長に苛立ちを覚えただけだ。ただそれだけのこと。
「ほー。君とセリナ気づけばかなり親密になったな」
ディゴール公爵は少し考える。これから何を言おうとしているのか手に取るように分かる。
「では、セリナと同じ寝室に」
「結構です。遠慮しておきます。異性と同じ部屋にさせるとはやばいですよ。平民の僕は空き部屋を所望する。」
ディゴール公爵が言おうとしていた事が僕が考えていたものと全く同じだったので、一気に思ったことをまくし立てる。
「お?そうか?遠慮しなくて良いのだぞ?」
「お気持ちだけお受け取りします」
素直に言っておいた。チラリとセリナの方を見ると少し残念そうにそれでいて安心したような顔をしていた。
ーーー
空き部屋
月明かりに照らされているベッドに横たわりながら一人考えていた。
(シャントル、、良いところだったな。人は皆活気的で友好的で。街も綺麗で食べ物も美味しくて、、なんか名残惜しいな)
本当に楽しい街だった。これから僕が帰ろうとしている場所は楽しいと言えるほど楽しくはない。冒険者が多くいてクエスト三昧で
「帰りたく、ないな」
あっちよりもシャントルの方が随分と楽しい。いっそ残ってしまおうか
(いや、ダメだ。決めたじゃないか。ミナ達のところに帰るって)
大きいベッドで寝返りをうつ。
月は雲に隠れて明かりが消えていく。大きな羽音が聞こえるが空耳だろうと無視をした。
ーーー
「こいつが勇者の末裔?なんて言うかパッとしないなぁ」
「そんなことを言っては駄目だぞ、ルル」
大きな人影が二人。ライトの寝室を覗き込みながら空に停まっていた。どちらも性別は女で獣耳を生やした獣人のような何かだ。銀色の髪は月のように美しい。
「、、、特徴を把握した。帰るぞルル」
「へーい、でもさこれって意味あんの?」
「どう言うことだ?」
「だってさ、所詮人間。そのうち死ぬんだから」
ルルより大人びている女が一度黙り、声を出す。
「主君の命令だ。、、と月が傾き始めている。早いとこ帰るぞ」
「わかったよ、ねーちゃん」
その二人は痕跡を残さず、消えていった。




