2話 ランチタイム
こんなのダメだ、こんなのダメだ、こんなのダメだ!!
僕にはなんの力もないんだ。物語なんか創ってても現実世界に何にもならないじゃないか!
「実力があるのに評価されていない。本当の自分はもっと凄いはずだが、職場、学校、社会、環境が悪いせいでその才能が埋もれているだけだ!世界の方が間違っている!!」
なんで大概の人は自分でそう思えるんだろ?僕は、そうじゃない、評価されてないだけだと思ってしまう。
そう思えたらどんなに楽か…。
僕なら…無能すぎる僕は全然凄くないから、自分が悪いとしか思えない…。
自分以外のせいにできたら…したくてもできないよ…!
理不尽な暴力、短絡的な報復、思考停止した全肯定…。
ああ…アイリスの代わりに僕なら良かったのに…!
なんで僕じゃなかったんだ…!!
暗闇の中両膝をつき、うずくまるノリトにスポットライト。
暗闇に浮かぶ無数の眼
目
瞳
…
「君たちは、こういう醜いショーを観にに来たんだろ?」
刹那、口角が上がる
***
**
*
<魔王討伐防衛学校>
学食は、今日も若々しい活気に満ちていた。
未来の英雄を目指す若者たちが、剣技や魔法の議論に花を咲かせている。
その喧騒から切り離された最果ての窓際。
「はい、アイリス。あーん……」
ノリトは、スプーンを差し出した。
スプーンの上には、アイリスが好き生クリームたっぷりのプリンが乗っている。
春の柔らかな日差しが、照らしている。
「なーんてね!僕が食べちゃう♪」
ノリトは食べさせようとした後自分の口に運んだ。
ノリトは愛おしそうに目を細め、語りかけ続ける。
「アイツが本当に例のアイツなのか?全くそう見えないが…」
「あんなことできそうに見えないが…」
「見るからに…」
「それにしてもなんであんなやつとあの子が一緒に…」
ヒソヒソ声。
彼の瞳には、透き通るような肌の聖女アイリスがプクーと頬を膨らませて好物を横取りされた事に怒る表情が映っている。
「……ねえ、ノリト。そんなに私のことばっかり見てたら、自分のご飯が冷めちゃうよ?冷めちゃう前にノリトのソレ、私食べちゃうよ?」
無邪気な、アイリスの声。
「だめだよー!今日は僕の大好きなカニクリームコロッケなんだからー」
アイリスはイタズラな笑顔。
その時、ガタン、と激しい音を立てて机が揺れた。
バンッ!
傷跡がある小さい手が机を力強く叩かれた。
「おい!」
これはあの悲劇が起きる前の、まだ幸せだった頃のできごと─
終わりの始まりの現実、ここから始まる─
懐輪廻転
———
続く
———
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