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推しを殺すラスボスに転生してしまった  作者: 心音瑠璃


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25.

「あ、来ましたよ」

「お姉様!」


 私とリベリオ殿下が集合場所に着くと、そこにはすでにエレナとランベルトの姿があった。


「遅れてごめんなさい」


 開口一番そう謝罪の言葉を述べた私に、エレナは首を横に振って言う。


「いえ、まだ時間は十分あるので大丈夫です。

 ……それよりも、お身体の具合はよろしいのですか?」

「え?」


 なぜ、身体の具合を心配されているのだろうと首を傾げた私に、エレナは声を顰めて驚くべき言葉を口にした。


「さっき、リベリオ殿下がお姉様を抱えて廊下を物凄い速さで駆けて行った、とお聞きしました」

「!? ど、どなたから!?」

「ランベルト様から……」


 エレナの言葉にランベルトを見やると、彼は両手をひらひらと振った。


「そんな目で見なくても。私は悪くないですからね?

 見せつけるように走っていらっしゃったのはリベリオ殿下ですし、それはそれは目立っていたので、今頃噂の的ですよ」

「〜〜〜っ!」


(め、目立っていた!?)


 そ、それはそうよね、いくらリベリオ殿下の足が速いとはいえ、あの姿を色々な方に見られてしまったわけで……。

 羞恥から軽く眩暈を覚える私の前に、リベリオ殿下が一歩前に進み出て口を開いた。


「どうやら疲労が祟ったようで、先ほど立ちくらみを起こしたのです」

「え……!?」


(リ、リベリオ殿下!?)


 思わずリベリオ殿下の顔を見上げた私に、彼が目配せしたことで、彼がわざと嘘を吐いているのだと察し、戸惑っている間にもエレナ、リベリオ殿下、ランベルトの会話は続く。


「それは大変! そうですよね、今回の準備もお姉様が委員長として率先して動いていらっしゃいましたから……」

「そうですね、私も彼女の体調の変化に婚約者として気付いてあげられなかったことを反省しています。そのため、開幕演出を終えたらお暇しようかと」

「良いと思いますよ。……こうしている今も、目の下にクマを作っている時点で体調はあまり良くはなさそうですし」

「……!!」


(な、なぜランベルトにまでバレているの!?)


 立ちくらみをしたというのは嘘だし、私が泣いてしまったがために崩れてしまったお化粧も、先ほど侍女達に完璧に治してもらったはず。

 それなのに、なぜ目の下にクマがある、とリベリオ殿下のみならずランベルトにまで指摘されるのか。

 心底驚き絶句してしまう私には構わず、リベリオ殿下は私の手を取ってから告げた。


「というわけで、今宵の委員長の仕事は開幕演出のみということで宜しくお願いします」

「ちょ、ちょっとそれは」


 そんな話は聞いていない、と口にしようとしたところで、私達の名前が呼ばれてしまう。

 それは、開幕演出が行われる合図で。


「委員長、出番ですよ」


 繋いだ手を自然と引き、エスコートをしてくれるリベリオ殿下の表情を見て……。


「……あなた、もしかして最初からこのつもりで?」

「お説教なら後で聞きます」


 悪びれもせず良い笑顔で告げたリベリオ殿下に対し、複雑な心境に陥ったものの、今は自分のやるべきことをしようと前だけを見据え、彼の手を取り煌びやかな会場へと足を踏み入れた。




 開幕演出において、ミスは許されない。


 生徒会の皆様がせっかく譲ってくれた風紀委員会の見せ場なのだから、と慎重にステップを踏み、ダンスに集中していた私の頭上から、ふっと吹き出したような笑い声が聞こえてきて。


「……リベリオ殿下?」


 その声の主の名を呼んだ私に、リベリオ殿下は「だって」と揶揄うように言う。


「随分と怖い顔をしているなと思って」

「怖い顔って……、失礼ね」

「笑って」

「え……?」


 彼の言葉に目を瞠る。そうして、リベリオ殿下はもう一度念を押すように言った。


「笑って、ロザリア。君の笑っている顔が見たい」

「なっ……!?」


(な、何を言っているの!?)


 またからかっているの、と口にしかけた言葉は喉奥で詰まる。

 それは、リベリオ殿下が優しい笑みを浮かべていたから。

 思わず息を呑み、見惚れてしまった私は、気が付けば足を踏み外してしまって……、あ、と思った時には、ふわりと身体を持ち上げられていた。


 一瞬高くなった視界は、周囲を見渡すように一回転し、着地する。

 それにより、会場から歓声が上がったことで、ようやく我に返って声を上げた。


「い、今のは何!?」

「たまには良いかなって」

「せ、せめて予告して!? でないと心臓に悪い……」

「! ……ふふ、あはは」


 リベリオ殿下が声を上げて笑う。

 その表情も、言葉遣いも、どれも風紀委員の仕事をしているというのに、素であることに疑問を思ったけれど……。

 でも、それをこの場で指摘するのは野暮な気がして。


「……ふふ」


 何より、嬉しそうに笑うその姿に、気が付けば私も緊張を忘れ、自然と笑みを溢していたのだった。

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