↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星降る博物館  作者: 坂持


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
9/29

星降る博物館 2

「おい、起きろ」


 翌日、先に展示物の清掃と点検を終えてから魔女は少女を起こした。あまり眠れなかったせいもあってか、清掃と点検をしながら少女の相手をする気力が無かった。


 ただ、少女が眠っている間に清掃と点検をするとかなりスムーズに終わるため、明日からは起こす前に終わらせてしまおうと決める魔女である。


「わたしご飯の匂いじゃないと起きませんよ~」

「なら用意しない。嫌なら起きろ」


 目を閉じたまま舐めたことを言う少女に魔女は冷たく返す。すると少女は跳ね起き、服をぱんぱんと払う。


 その様子を見て軽くため息をついた魔女は、少女を連れて食事を取りに行く。そして食事を作る機械の前に立つと少女が言った。


「ずっと思ってたんですけど、なんで石がご飯になるんですか?」

「そういう物だからだ。そういう物だから、石でもなんでも、物体を入れれば食べ物が出てくる。だからここにある」

「そういうものかぁ」


 魔女の説明にとりあえず納得のいった少女は頷く。魔女もそれ以上説明のしようがないため、機械に石を入れて杖を持つ。


 そしていつも通り食事を持って、真ん中の通路まで持って来た。二人向かい合って手を合わせる。これから朝食だというところで、なにか大きな音が聞えた。


「うぇ‼ なんですかって館長⁉」


 少女が驚いた声を出すのと魔女が動き出すのはほぼ同時だった。駆け足で出ていく魔女を見て、走る魔女の姿を始めて見た少女は慌てて鶏肉を口にねじ込んで追いかける。


 そして——少女が追いついた頃には、魔女は落とし穴を覗いていた。


「館長?」


 魔女は荒い呼吸を繰り返しながら、大きく開いた眼を落とし穴の中に向けていた。その視線を少女が追うと、いつの間にか泥まみれになっていた落とし穴の中に人が一人いた。


「人だーーー‼」

「いってて……うわぁ、泥まみれだぁ。ん? この声聞き覚えが……」


 そう言って、落とし穴に落ちた人物が、泥まみれの顔を上に向ける。


 その人物の顔を見た魔女が、絞り出すように声を出す。


「お前……帰って来たのか……」

「その声はルーナじゃん」


 魔女とは正反対に、軽い声で返す人物。


「え? それって誰ですか?」


 そして少女は聞き慣れない言葉に腕を組んで首を傾げていた。すると少女は、空気が下に落ちるのを感じた。それも隣から。そのあり得ない変化に驚いて隣を見ると、魔女が今にも叫び出しそうな表情で杖を取り出して、下から上に杖を——振った。


「ああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ——‼」


 泥をまき散らしながら、途轍もない突風が吹き上がる。それと同時に落とし穴に落ちた人物が上空へ吹き飛ぶ。


 声が遠ざかりやがて聞こえなくなり、魔女の荒い呼吸だけが響く中、少女は目を丸くして魔女に問う。


「なん…………ですか……………………?」

「………………すぐに分かる」

「——ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああぶふぇっ——‼」


 再び声が降ってきて、声の主が魔女と少女の目の前を通過する瞬間、魔女は再び杖を振り横に吹き飛ばした。


 大木が大きく揺れ、鳥達が驚いて飛び立つ。魔女はもう一度杖を振り、落とし穴(努力の結晶)を一瞬で塞いでから大木の前で呻いている人物の下へ向かう。


「頑張ったのに……」


 一瞬にして塞がった落とし穴を悲しそうな目で見た少女も、とりあえず魔女を追いかける。


「呑気に帰って来るとはな」


 腕を組んで、その人物を見下ろす魔女。言葉にはかなり棘があり、少女は絶対に二人の間には立ちたくないと思った。


「いてて……。久しぶりに帰ってきたのに……僕は悲しいよ」


 しかし、そんな魔女のかなり棘のある言葉を受けても、大して気にしてないように答える。


「黙れ。もう一度吹き飛ばしてやろうか?」

「それは勘弁」

「だったら言うべきことがあるだろ」


 泥だらけの人物は口を開きかけたが、魔女の表情を見て一度口を閉じた。


「…………急に出ていってごめん。ただいま」


 そして落ち着いた声で、優しい声音で言葉を紡ぐ。


 風が木々の間を吹き抜け、葉が擦れて音を奏でる。風と入れ替わり、少女が魔女の下へやって来た。


「館長?」


 少女が魔女の様子を見ると同時に魔女は背を向け、博物館内へと戻っていくのだった。


 少女が魔女の背中を見送っていると、背後から明るく弾むような声がした。


「あー、そうか! 思い出した‼ 無事にここに辿り着いたんだね、お嬢ちゃん」

「へっ?」


 その言葉に振り向いた少女。数秒の沈黙の末、少女も思い出した。


「あーーーーーーーーーーーーーーーー‼ 地図くれたお姉さん⁉」


 なぜこの女性を今まで忘れていたのだろうか。金糸雀色の髪を持ち、宝石の様な瞳を持つ綺麗な女性など忘れるはずがないのに。


「おっ、思い出してくれたようだね」


 その女性はイテテと立ち上がり、少女の近くまでやって来る。


 背丈は少女よりも少し大きい程度。魔女とは違い身長差による威圧感は無い。


「ふむふむ……なるほど、僕の服を着ているのか。そういえばルーナにはアレの使い方教えてなかったなぁ」


 少女を観察しながら、なにやらぶつぶつと言っている。そして思い出したかのように一歩下がる。


「おっと自己紹介が遅れたね。僕はヒマワリ、この星降る博物館の元館長だよ。お嬢ちゃんは?」


 泥だらけの女性——ヒマワリは胸に手を当てて言う。


 それを聞いた少女は、全ての情報を受け止め切れないが、これだけは反応を返した。


「星降る博物館⁉」

「うん? ルーナには聞いてない?」


 少しだけ首を傾けるヒマワリ。


「えっと、そもそもルーナって誰ですか……?」


 更に首を傾けるヒマワリ。


「うん? 自己紹介もしてない? お嬢ちゃん、名前は?」

「名前は……ありません」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。