星の魔女 4
時間によって明るさが変わる特殊な天井の部屋の中。柔らかな羽毛布団のあるベッド、本が数冊積まれている机に、溢れんばかりの服がかけられているクローゼット。
ルーナはそんなヒマワリの部屋の中にいた。
ベッドの下を覗き込み、本の中を確認して、机の引き出しの中を漁り、クローゼットの服も一つひとつ触る。壁を叩き、カーペットの敷かれてある床も触る。
ヒマワリ以外の痕跡を探すため、丁寧に、迅速に。
「ルーナ、なにも無いよ。安心して」
部屋の主がやって来ても、ルーナは手を止めないし、視線も逸らさない。
その様子を見かねたヒマワリはルーナの背後から優しく抱きしめることにした。一番近い距離で、言葉を届ける。
「他の人は入れてないよ」
「……うるさい」
動きを止めたルーナの拗ねた物言いに、愛おしさを感じたヒマワリは抱きしめる力を強めた。
「離せ、邪魔だ」
「やだ」
鼻を鳴らしたルーナは、離れようとせずにヒマワリに全体重を預ける。
「ならずっとこうしていろ」
「ずっとは無理かな」
するとルーナはローブのポケットからペンダントを取りだし、その紐で自分を抱きしめるヒマワリの腕を離れないよう縛りだす。
簡単には解けない縛り方のため、ヒマワリが腕を離そうとしても離せない。
「ちょっとルーナさん?」
結び目を見ると、これは結んだ本人でも解けないのでは? という結び方で血の気が引いた。
「私も抜けることができない。困ったな、永遠にこのままだ」
「全然困ってる感じしないよ? 僕は困るけど」
両腕の自由が効かないため、杖を持つことができない。もうルーナを頑張って説得しなければ解けない。
「困るな」
「いや困るって」
「動けるのだから困らないだろ」
「困るよ。エミちゃん一人にしてるんだから」
「…………」
ルーナの表情こそ窺えないが、半目で不貞腐れている様な空気が漂う。ヒマワリの予想通りなら、ルーナの成長に少し涙腺を刺激される。なんだかんだで、ルーナはエミのことを大切に思っているのだろう。
「嫌か?」
さっきまでのふてぶてしさは何処へ、途端に今抱きしめているルーナの身体が小さく感じる。聞き返さなくてもヒマワリには分かる。
「嫌じゃないよ。こう見えて、僕はルーナのこと大好きだからね。でもそれと同じぐらいエミちゃんのことも大好きなんだよ。それはルーナも同じでしょ?」
「………………分かった」
大人しく杖を取り出したルーナは、杖の先を固く結ばれたペンダントの紐に向ける。杖で軽く二回、紐の結び目を叩く。
するすると紐が解けて、自由になったヒマワリの手首は赤く紐の跡がついていた。
「これで自由だぞ。喜べ」
「ありがとう」
更に力強くルーナを抱きしめたヒマワリの、耳元での囁き声に身じろぎをしたルーナは勢い良く立ち上がる。
軽く頭を振り、立ち上がったルーナはまだ座っているヒマワリを見下ろす。
「ほら、早く立て」
「なんで偉そうなのかな」
そう笑いながら、手を差しだすヒマワリ。その手を取り立ち上がらせて、すぐに背を向けて部屋を出て行くルーナであった。




