星の魔女 2
「それで、これはなんだ? 星に関する物は全部展示していると思っていたんだが」
それはそうと、ルーナもヒマワリが整理して置いていた展示品を覗き込む。
望遠鏡以外にも、アストロラーベのような展示していない物、天球儀や星座表のような既に展示してある物も箱に入っていた。
「うーん。まあこれはある種特別な物だからね」
「えー。でもここにあるのって全部特別なものですよね?」
望遠鏡を覗いてルーナの顔を見ていたエミの言葉に、ヒマワリは頷いて返す。
「そうなんだけどね、これは更に特別な物なんだ。その望遠鏡、名前掘ってるんだけど分かる?」
エミの覗いている望遠鏡は木製だ。長い年月が経っているため、傷はかなりあるが、その中で殊更深い傷がある。エミから望遠鏡を取り上げたルーナが確認する。
「私は読めない。かなり古い物だな」
「見せて下さいよ」
「お前は文字を読めないだろ」
「いやいや、もしかすると読めるかもしれないと思いましたけど読めませんね」
ルーナも読めないし、当然エミも読めない。
エミは元々文字を読めないが、ルーナは長い時を過ごしている間に、現在外で使われている文字や、数百年前まで使われていた文字は読めるよう学んだ。物によっては、数千年単位で前の物もあるため、読めないこともないのだが、この望遠鏡に刻まれている文字は見覚えすら無かった。
「まー僕もここまで古いと完全には読めないんだけどねえ。古代というか、この博物館ができた当初からあるらしいよ」
「それってどれぐらい前なんですか?」
「私に聞くな。興味が無い」
「まっ、興味ないよね。エミちゃんは知りたい?」
「いやあ……まあとんでもなく昔でしょうし別にいいかなと」
「………………この話、終わろっか」
薄々このパターンになることは分かっていたが、やはりこうなってしまったことに少し悲しくなったヒマワリである。
「あのね、これ全部この博物館建てた人の物なんだよ」
「星好きしかいないのか」「星が好きだったんですね‼」
「そう、エミちゃん。星好きなんだよ。あのね、ルーナ。星好きじゃなきゃあのガラスドーム作らないよ」
全力で頷きながら呆れるという、結構器用なことをしているヒマワリは、壁から両手で抱えなければならない程大きな本を引っ張り出した。
その本のページをパラパラと捲り、お目当てのページを開いて二人に見せる。
「この人。ここを作った魔女の写真」
載っていたのはまるでお姫様のような女性だ。それは見目麗しいという意味もあるが、ティアラにドレス、宝石などの装飾品などを着用していたからだ。
その姿のせいで魔女と呼ぶにはどことなく違和感がある。
「魔女の割にはだな」
「まー、僕もこの頃のこの人のこと知らないんだけど。まっ、そこは置いておいて。この人がこの星降る博物館を作ったんだよ」
「そうか」「へー」
「うーん反応が薄いなー」
「興味ない」「感謝ですね」
ヒマワリとしては興味を持ってもらいたいのだが、どうもルーナもエミも興味は無さげだ。星が関係しているし、まだエミは食いついてくれると思っていたのだが、そう思った通りにはいかないらしい。
「識ることって大切なんだけどなー……」
ヒマワリの呟きは二人には届かない。別に届かなくても、この博物館が無くなるわけでも、ここでの生活がどうとなる訳でもない。ただ、せっかくだしこの博物館がどういう願いで作られたのかを識ってほしいだけだ。
ヒマワリの胸中などいざ知らず、いや、ルーナは解っているのであろう。それでもこうして聞きたがらない理由の一端は、というか原因が自分にあるのだろう。そう考えるとヒマワリは申し訳なく思ってしまう。
「まあ良くないけどまあいっか。とりあえず、ここの物、各々好きな物を入れ替えていこう」
「入れ替えたいのはお前だけだろ」
「はいそうですよ! でも手伝って‼」
「…………仕方がない」
ただの模様替えをしたかった以外にも理由はある。それを聞いているルーナだったため、ここまできて断ることはできない。
面倒だが、ルーナはエミを掴んでヒマワリとは別の場所を探しにいく。
「よし、私が監督してやる。壊さないよう好きに探せ」
「はーい」




