星の魔女
それからいくら月日が経っても、やることは変わらないし、環境も変わらない。
そんな繰り返す同じ毎日の中、ルーナとエミを集めたヒマワリ。
「ちょっと模様替えしない?」
「しない」「わたし触っちゃダメって言われてるんで」
「もうっ!」
つれない二人に、ヒマワリはその場で地団駄を踏む。もう何百年も同じ展示なのに、二人は嫌にならないのだろうか。
エミはともかく、ルーナはどうなのだろうか。
「飽きない?」
「飽きないな」
「そうだったよね! ルーナは僕が痛い痛い痛いっ⁉」
足をぐりぐり踏まれたヒマワリは、矛先をエミに向ける。
「エミちゃんは? 気になるよね? ね?」
「わたし文字読めませんし、館長が星に関係あるものは全部展示してるって言ってましたし」
「ということだ」
「もぉぉぉぉぉぉぉ! 君達はこの星降る博物館に住む者として恥ずかしくないのかい⁉ 特に館長!」
「うるさいな。なら勝手にやればいいだろ」
冷たく返されたヒマワリは思いっきり悲しそうな表情を浮かべる。
「掘り返したくない物も出てくるかもしれないだろ」
目を細めたルーナがヒマワリに追撃を仕掛けるが、ヒマワリはさっきとは打って変わって真剣な表情で返す。
「だからだよ」
「…………」
「またわたしだけ置いてけぼりですか?」
しばらくの沈黙の末——。
「なんでぇっ⁉」
とりあえず脛を蹴られたヒマワリであった。
◎
結局、模様替えをすることとなり、倉庫までやってきた三人。
「足元に気をつけてね」
木の扉をギギッと開けると、辛うじて入り口付近が外の明かりで照らされている。
「うーわ奥見えませんね」
そう言うだろうということで、ルーナは杖を振り光の蝶を飛び立たせる。そのまま蝶は天井から吊ってあるランタンの中に止まる。
これで倉庫の中が明るくなった。
「うーわ物多いですね」
そう言うだろうということで、ルーナはエミを持ち上げて部屋の中に入った。
「だからまずは掃除だ」
「ここは忘れ去られた博物館、人は来ないし時間は腐る程ある。ですか?」
「お前の時間は有限だけどな」
「えっ、怖い……」
ルーナの真似をしたエミだが、ルーナの言葉にすぐ素に戻る。ただ、ルーナに担ぎ上げられているせいで逃げ場はない。
倉庫と呼んではいるが、ここも一応小展示室として使用していた部屋。そのため、展示台もいくつかあり、その上に様々な展示品も置かれている。それ以外にも、壁一面棚になっており、そこにも物があり、中には本や書類などが置かれている棚もあった。
しかし基本的には物で溢れかえっている。
「一応星に関する物とかは固めてあるんだよね」
「ちょっ、館長下ろしてください!」
「待て、暴れるな運んでやる」
足元に注意しながら進むヒマワリの後ろを、エミを抱えたルーナが追いかける。
物をどけ、慎重に進んだヒマワリの向かった先は、倉庫の入り口から左側の端だった。
「やけに整理されているな」
「まあね」
「館長の嘘つき! 早く下ろしてください‼」
暴れるエミを渋々下ろすと、すぐさまエミはヒマワリの隣に向かった。一応ヒマワリの作った道の後ろを通るという配慮を覚えたようでなによりだ。
「これは……望遠鏡?」
ここだけはヒマワリが整理しており、展示品の数々が木箱に丁寧に収められているし、壁の棚には本が隙間なく、高さ順に並べられている。
エミはその中から、外の世界へ出た時に使った望遠鏡に似た物を手に取った。
「お前はそうやって展示品をすぐ触る癖をどうにかしろ」
「まあまあ、壊れたら直せばいいんだし。壊れてもすぐ直る物しかないから大丈夫だよ」
「物を大切に扱え。直るからといって壊していい物なんて無い」
「ちょっと、なんでわたしが壊す前提なんですか!」
「黙れ。お前はあれからいくつの展示品を触って壊した? さっきお前は言っていたな。だが私は知っているんだぞ?」
最初の天球儀から始まり、それからもエミは何度も展示品を勝手に触って壊している。触るなと口酸っぱく言っているのだが、効果が無くなった。ヒマワリが帰ってきてから。
「えっ……と……」
エミが指を折りながら記憶を掘り返す。そして指を何度か折り曲げて伸ばしてを繰り返して、笑顔でルーナに言う。
「分かりません!」
「それぐらい壊したんだ。主にお前の監督不行き届きでな」
「やっぱり僕も怒られるんだ」
エミを護るように抱きしめるヒマワリに心底不愉快な表情を向ける。これはふざけている場合ではないと悟った二人は、大人しくルーナに頭を下げた。
「ごめん」「ごめんなさい」
「………………」
反応の無いルーナの様子を窺うと、腕を組んだまま冷たい目をしていたため、慌てて二人は頭を元の位置に戻した。
「次は無いぞ」
「「はい‼」」




