星空の街 7
エミが寝て、自分達も寝るかと、ルーナはようやく返ってきた毛布を持って地下への階段を下る。
蝶に照らされ、降りた先。狭い部屋だ。
天井のランタンに光の蝶が止まり、狭い部屋を薄く照らしてくれる。杖を振り、全身を綺麗にしてから、固そうに見えて意外と柔らかいベッドに腰を掛ける。
そして目を閉じて、ゆっくりと息を吸って、吐き出す。息を吸って、吐き出す。
心を落ち着け、気持ちの蓋に触れるイメージ。
研ぎ澄まされた耳に、階段を下る音が届く。目を開け、階段の方へ向ける。
杖を握り、音が近づいて来るのを待つ。
やがて見えたのは、見慣れた姿。ずっと帰りを待っていて、先日ようやく帰って来た人。
「待っていてくれたんだ」
薄く照らされる室内で、ヒマワリは微笑む。
「来ると言っただろ」
「そりゃあ、ルーナが来てほしそうだったから」
杖をしまい、ルーナは深呼吸を一回。
「ずっと、不安だった?」
いつの間にか隣に座っていたヒマワリの声が耳元でする。
言葉では返さず、ルーナは首を縦に振った。
「でもほら、僕はここにいるよ」
「でも外してやらんぞ」
「別にいいよ。いなくなる気無いし」
「……ずっとか?」
「ずっとだよ」
「百年、千年先もか?」
「ううん。もっと長い、一生」
ヒマワリの肩に軽い衝撃。ルーナが身体を預けていた。
「普通に寝なよ」
「いいだろ」
「いいけど」
「………………」
「………………………………」
無言が続きやがて、ランタンの蝶が消え、完全な暗闇になる。
「……楽しそうだった」
「僕が?」
「二人共」
「あれ、僕だけじゃないんだ? ちょっと悔しいかも」
「笑うな」
「ごめん。そうなんだ」
肩に乗るルーナの頭にそっと手を乗せる。
「外の世界にいってしまうのも仕方がないと、思った。アイツはともかく、お前のあんな表情、見たくなかった」
鼻をすする音がした。そして、一度開いた感情の蓋を、自分で閉じることを今のルーナにはできない。
「また、いつかいなくなる。かもしれない。私と違い、お前には外がある。そんな外の世界が、私は憎くて仕方がない。できるのなら、お前の外への関心を奪ってしまいたい。すべての関心が私に向くようにしたい……私はもう、外へ出たくない。思い出したんだ、外への恐怖を——」
「えっ……?」
「外の世界は私から全てを奪う。だから嫌いだ。だから憎い。また、私の全てが……外の世界に奪われるんだ……」
「ルーナ、駄目だよ。僕を見て、ここにいる。ほら、見えなくても分かるでしょ、僕の鼓動を感じて。それ以上、思い出さなくてもいいから。今を見て。僕がいる、エミちゃんもいる。その今を、君は生きているから」
ルーナの感情の蓋を閉じる。優しく、包み込み、囁く。
震えるルーナの身体がゆっくりと落ち着いていき、そのまま力が抜ける。
そんな身体を抱きしめたまま、魔女達は共に夜を過ごす。




