星降る博物館 9
今日も星の光を浴びながら、ガラスドームの下で横になっているエミ。
星は変わらなくても、エミの日常が大きく変わった今日。
ヒマワリという、ルーナをかつて困らせたという自分と同じ星好き。今はルーナに会いに行ったが、さっきまで色々と話を聞いていた。同じ星好きとして、しかし知識の無いエミにとってヒマワリの知識を聞くのは星を見るくらい楽しいかった。
自然と笑みが浮かぶと、ヒマワリは愛おしそうに微笑んで、綺麗に笑った。
『ピッタリの名前だね』
いつもはあんなに冷たくて意地悪なルーナが付けてくれた自分にピッタリの名前。
そんななんだかんだで優しいルーナが付けてくれた名前は、温かくて、エミの心の隙間を埋めてくれた。
ただ、ルーナもヒマワリも枕は用意してくれない。
星の話以外に枕の話をしたが、寝具の数は少ないらしく、エミの分は無いとのこと。そしてそれを作ることができる物は展示品には無い。外へ買いに行かなければならないと言われた。
また行けるよう準備をして買いに行こうと言われたのだが、なぜ外へ出るのに準備が必要なのかと疑問に思ったため聞いてみた。別に雰囲気は重たくなかったためヒマワリもすぐに答えてくれると思ったからだ。
すると告げられたのはこの博物館のことと、エミのこと。
この博物館は世界には残せない、忘れるべき物のための場所だ。昼間言われていた通り、ここにある物を憶えているのはルーナ、ヒマワリ、エミの三人だけ。外で生きる人々は知らないし、知っていた者がいたとしても忘れられている。
ただ、それは物だけではなく、ここに住む三人もそうだ。でも、ヒマワリは十数年いなかったがルーナは憶えている。その理由を聞くと、ヒマワリはあるペンダントを見せてくれた。
革の紐に、半月型に加工した石鉄隕石のペンダントトップ。その半月型には『ルーナ』と名前が掘られていた。
『これを持っていたから、僕はルーナのことを忘れないし、この博物館のことも忘れない。ルーナも同じ物を持ってるから、逆でも変わらないんだ』
それを持っていないエミがこの博物館から出てしまい、外に行くと、エミはここの全てを忘れてしまう。
地図を持っていあればまた戻って来られるのだが、記憶は戻らない。
だから外に出るのには準備が必要なのだ。ただ、三人で出たのなら、共にいるルーナとヒマワリのことは忘れないのだが、この博物館のことは忘れてしまう可能性がある。そうなれば多分ルーナは色々面倒だと怒るだろうからできないと言われた。
それを聞いてしまうと我慢するしかない。
幸いにもこの博物館に客は来ない。準備するのにはそれほど時間はかからない。なんせ普段の生活でやることが無いからだ。
確実にその日はやって来る。だからそれまで気楽に待とうと。エミは今日も毛布にくるまり、星を眺めるのだった。




