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星降る博物館  作者: 坂持


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星降る博物館 4

「髪の毛切ってあげようか?」

「汚いぞおい、人の食事を取るな」


 まだ朝食を摂っているルーナの皿から、生野菜を摘まんで食べたヒマワリ。


 エミの髪の毛は本人の身長近く伸びている。このままでは邪魔だろうし、危ない気もする。


 ヒマワリはエミの髪の毛を触りながら、どう切ろうかと考えている。


「切れるんですか?」

「切れるよ⁉」

「ですって館長」

「どう考えてもお前の髪だろ」

「ルーナも切ってあげようか?」

「断る」

「だってー。じゃあ切りに行こうか」

「その前にお前は風呂に入れ」


 泥まみれのヒマワリ。館内も泥だらけで汚い、これは後で掃除をさせてやろうとルーナは決め、食事に戻る。ヒマワリはエミを連れ、とりあえずお風呂に向かう。


「一緒に入ろっか」

「え、わたし後でいいですよ」


 泥だらけじゃないですか。と続けられ、ヒマワリは少し傷ついた。


「君って見かけによらず口悪いよね? ルーナみたい!」


 その日出会った人に指を突き付けるというエミの蛮行をヒマワリは知らない。


「それはわたしに対する悪口ですよ」

「ルーナって悪口になるんだ……」


 そんな二人の会話は——。


「………………」


 ルーナに聞こえていた。それも当然、二人はすぐそこで言い合っていた。


 二人で館内を掃除させてやろう、絶対に。と決め、好物の魚を味わうのだった。


                     ◎


「はーいじゃあ流すよー」

「うわっ、泥かかってますって‼」

「あっ、ごめんごめん」

「ごめんって思ってます⁉」


 事の重大さを分かっていなそうなヒマワリに、エミは頭を振り、器用に髪の毛でビンタを食らわせた。


 べちょん、とエミの長い髪の毛がヒマワリの顔面にクリーンヒット。しかし、そのせいでエミの髪の毛は更に泥で汚れてしまう。


「あー⁉ もう交代! 先に洗ってください‼」

「うわっちょっ、強引すぎる……!」


 浴室の広さは二人で入るとギリギリの広さ。二人で使えば動きは取り辛い。


 強引に座らされたヒマワリにエミはシャワーを容赦なくかけ、泥を流していく。そのせいで綺麗に清掃されており、白い浴室内は今や泥で茶色くなっている。それは後でヒマワリに掃除を頑張ってもらおうと決めたエミ。


「ふうぃ~、やっぱ落ち着く~」


 先に髪と身体を洗い、浴槽に浸かったヒマワリの情けない声が響く。


 髪が長いため、立ったまま髪と身体を洗うエミが軽く頭を振ると、髪の毛から飛び散った水滴がヒマワリに直撃する。


「わっ、目に入った‼」

「あ、すいません」

「思ってないでしょ。髪の毛結構短く切る?」


 水滴を払ったヒマワリの目がエミの髪の毛へと向く。


「普段から邪魔じゃない? 僕ぐらいまで切る?」


 ヒマワリは自身の肩に軽くかかる髪を見せるように触る。


「確かにそれぐらい切った方が長い間切らなくても大丈夫ですもんね」

「ねえエミちゃん」


 エミの何気ない言葉に、ヒマワリは諭すように、しかし顔を青くして言う。


「それ、ルーナと同じ思考だから」


 思いっきり嫌そうな顔をするエミ。


「……じゃあ動きやすいからそれぐらいに——」

「ちょっと長めに残して、可愛いから髪を結おう!」


 それ以上はいけないと、ヒマワリはエミの言葉に被せ、努めて明るく言う。


 長く伸びていても、ルーナは髪を結わせてくれない。だからエミの髪でその欲求を満たそうという魂胆もあるため人のことは言えないが、これ以上自分の見た目に無頓着な人間を増やしたくないという思いもある。


「あと、似合う可愛い服も用意してあげるね!」

「でも今のでも動きやすいから別に——」

「自分の服欲しいでしょ?」

「え、いや——」

「何着かあった方がいいし!」


 境遇が似ている人間は、こうも考えが似るのかと、お湯に浸かっているのに寒気がする。


 ルーナも服は毎日同じ物を着ているし、髪型に特にこだわりは無い。一応短すぎるのは嫌がるため、こだわりが無い訳ではないだろうが、ヒマワリからすればこだわりが無いのと変わらない。


 服は毎日同じシャツとスラックスとローブ。魔法で綺麗にしているらしい。それに、お風呂を使っている形跡も無かった。体を綺麗にするのも魔法だろう。


 ヒマワリもやろうと思えばできる。服は魔法を使って綺麗にしているが、でも毎日違う服を着たいし、お風呂も毎日入りたい。


 エミはそうならないように、今から癖付けとかなければならない。毎日お風呂に入っているが、将来はどうなるか分からない。


「ルーナは知らないんだけどね、あるんだよ。服を作れる展示品が! 展示してないから展示品とは言えないけど」

「へー、そうなんですか」

「反応薄いな……」

「じゃあわたし先に出ますね」

「えっ、浸からないの?」

「だってヒマワリさん浸かってるし。二人入るには狭いじゃないですか」

「まあそうだけど……僕が先に出るから、エミちゃんは浸かっても大丈夫だよ。あっ、もしかして一番風呂しか受け付けないタイプ?」

「一番風呂?」

「まだ誰も入っていないお風呂のこと」

「なるほど。じゃあ入りますね」


 ということは、エミは一番風呂でなくても大丈夫なタイプだということだ。


 エミと交代したヒマワリは先にお風呂を出る。着替えを持ってきていなかったなということで、通路を出て向かいの扉に入る。その前に——。


 チラリとルーナの様子を窺う。


「おっそ! 相変わらず食べるの遅いなぁ!」

「うるさい、さっさと服を着ろ。あと廊下を掃除しろ、絶対に」

「うっ……」


 ルーナと自分の間を見ると、見事に泥で廊下は汚れていた。視線を上げるとルーナと目が合い、ルーナは後ろを見ろと、顎をクイっと動かした。


 振り返り、薄目で見てみるが誤魔化せない。入り口からこの奥まで、見事に泥で汚れていた。


「ほら、さっさと着替えて掃除をしろ。そして汚れたならもう一度風呂に入れ」

「僕は一番風呂以外受け付けないタイプなんだよぉ!」

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