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【ヘリカルスパイラル】  作者: Dizzy
第3部 第25章

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【第811話:アクティベーション】

 聖騎士隊の上陸部隊は展開がとても速い。

量産型式神はまだ十分な数がないが、飛んでいって変形して多脚戦車にもなる。

空母から発艦し、航空機の速度で展開する機甲師団となるのだ。

そうしてラウメン大陸の西側直ぐ側に築かれた、目障りなヴァルサール帝国の補給港を包囲していた。

歩兵や通常の戦車も地続きの島の中を行軍し、東端の新設した聖王国の軍港から攻め上がった。

「速やかに武装解除し、投降せよ。海上にも当国の艦隊が展開済みである」

指揮車両で乗り付けてきた青年連絡士官は、宣戦布告後の進駐とは思えない気軽さで敵国の港に訪れた。

背後には8両もの量産型式神が120mm滑空砲の砲口をこちらへ向けている。

上空を四機編隊でフライバイしていくのも聖騎士隊のVTOL機だ。

すぐ北側には巨大空母アクメリウーデンが、距離感のおかしくなりそうな巨体を見せている。

帝国軍はタグボート数隻と、格好だけの駆逐艦が2隻。

ほっといてもいずれ沈みそうな旧型艦だった。

 島の反対側ほんの200㎞ほど先に聖王国が港を作り出した時は、慌てて本国に報告した。

何の指示もアクションも無いうちに、聖王国は軍港を完成させてしまった。

そこには空母とその護衛艦が10隻も配備された。

これは宣戦布告より一週間も前の話だ。

「聖王国はこちらを追い出す気があったのだな‥‥あの時点で」

苦々しい顔で答えたのは、帝国常駐士官の若い大尉。

海軍所属だが、今は陸に上がりハーグリーブス麾下の駐在士官だ。

「感想や推論をもらいたいのではない。投降するか、軍人としての末路をたどるかと言う話だ」

少し年下だなと見える聖騎士隊の士官は、揺るがず真っ直ぐに同じ内容を告げた。

使命感というやつかなと皮肉な感想を持つ。

「上層部に確認中だ」

「今は戦時と認識しているが?」

即答で答える真っ直ぐな視線に怯むことはなかったが、帝国の士官はうんざりした表情。

これだから神がかったヤツ等はと内心思っていた。

背後に立つ部下たちがゴクリと唾を飲んだのが聞こえた。

数で言えばまだこちらのほうが多いにも関わらず。

この聖騎士隊の士官や護衛達は、恐らく生きて帰る自信があるのだろう。

環ラウメン大陸合同艦隊(RIMLAM)演習で見せられた性能では、彼等のボディーアーマーやヘルメットはライフル弾程度では貫通出来ないと知っていた。

装備も違うんだよなと、ちらと海側も見た。

そこには遥か彼方にいるのに威容を示す巨大空母が白く見えていた。

率いているのはかつての同胞。

シャラハ・ホークだと、聖王国は今日の会見で述べていた。

がははと笑う巨大な体躯を思い出し、そこにもうんざりするのだった。

敵対派閥のハーグリーブス直属の自分だ。

捕まったらいびられそうだなと。




 ヴァルサール帝国はかつて、第一手としてラウメン大陸北岸に軍港を築き、東進しマリナスを陸路攻め落とした。

今ではそこは小さいながらも町の形をなし、南方地区ソルヴァと名付けられていた。

人口の半分は軍人だが、ある程度の規模の駐留が可能な町の設備を持ち込んでいる。

現状ではもう一つ東寄りのミラサネル共和国の作った都市マリナスの方が、港も地勢も優れていて軍の本部はそちらに移っていた。

そうして護衛も旧型の使いまわしの数だけで、駐留軍も三流どころでお茶を濁していた。

アヤンタ王国やミラサネル共和国への威圧は、マリナスやカルサリクの港に空母を含む本格的な艦隊が駐留している。

 そのソルヴァも流石に本国がすぐ横のラウメン聖王国に宣戦布告したので、蜂の巣をつついたような騒ぎになっていた。

西の補給港と違い、慌てる時間が与えられたのだった。

結果は変わらなかったが。

速やかに占領され、敵将が入室する。

「な‥‥さ、サーライン将軍‥‥」

巨体を狭そうにしてくぐり、軍施設の室内に入ってきたのは、同盟国だったアヤンタの元将軍。

「すまんがしばらくは自由をあたえられんぞ」

そういってニヤリと男臭い笑い方をした。

最近シャラハの影響で、覚えた笑みだった。

このソルヴァは抵抗することも出来ず、空母マーサスルディアと護衛艦の前に屈した。

空飛ぶ戦車に包囲されては、抵抗する気にもなれなかった。

高台に造られた軍の建物から見たソルヴァの街は、坂の下に港から港外までを見渡せる素晴らしい景色だった。

のどかな青い海が何処までも続いている。

ふと笑みを深くするサーライン。

この先の海で父も戦ったのだと、ふと思ったのだった。

青い海はきっと変わらない景色なのだろうなと。

「さあ、後はこちらは動きを待つばかりだな」

そう言って、にやりとまた男臭い頼もしい笑みを浮かべるのだった。




 カルサリクには帝国軍南方司令部がある。

ハーグリーブスの麾下で固めた、南方における主力軍だ。

陸上戦力も大隊規模で残してあるし、魔導艦を中心に主力艦隊も駐留していた。

空港も併設しており、南方における帝国軍の中心となる都市だった。

そのカルサリクの軍港に、艦隊旗艦となる空母がいる。

新鋭艦のエルダヴァスカ級より一回り小さいが、他国の旗艦より一回り大きな船体だった。

「予想はされていたが、早すぎるな‥‥」

苦々しい顔は歳経た帝国の将官。

バシュゥウ!!

スクランブルで発艦するのは直掩機になる、これも帝国最新鋭の戦闘機アリミアンフュ。

青灰色の滑らかな曲線で描かれる機体の、鋭い垂直尾翼には白薔薇をあしらった帝国のマークが入る。

増槽まで付けた離陸重量一杯の装備で、青白いアフターバーナーを吹きごうごうと高度を上げていった。

続けざまに2機目の機体も上がった。

2つある蒸気カタパルトは、連続2機までの発艦をこなす。

80機も積んでいる航空機を発艦させるには、それなりの時間が必要となる。

防衛戦力ともなる戦闘機は最初に発進させたのだった。

帝国のパイロット達はえり抜きのエリート。

魔法士としての才能も求められるので、20万の帝国軍でも戦闘機に乗れるのはほんの一握りだ。

その機体と変わらないほど貴重な人材も含めて、ここに配備されているのだった。


 カルサリクの沖合150㎞ほどの海上を艦隊が北上する。

白く塗られた船体はミラサネル共和国伝統の配色。

先日のRIMLAMでお披露目した最新艦隊だ。

帝国の正規空母と同等の格を持つ旗艦ノヴァミラサネルには、ラウメン聖騎士隊から払い下げのVTOL機が24機積まれている。

そしてミラサネル軍全体でも8機しかない、最新鋭の量産型式神も4機が配備されていた。

この式神は後端の第二ハッチからでもホバーで出撃できるので、そちらに待機中。

2本あるカタパルトには、それぞれにVTOL機の白い姿。

RIMLAMでのお披露目時より緊張感の高い、臨戦態勢で艦隊航行している。

周囲を固めるのは12隻の護衛艦。

これはミラサネル海軍のほぼ全軍であった。

カルサリクの帝国艦隊はこれを発見し、スクランブルをかけているのだ。

「張り子で終わらせたいものだな‥‥」

真剣な顔のイーシヤンは、旗艦空母の艦橋でどっしりと座っていた。

ただの軍事演習だとは思わないだろうなとも考えながら。




挿絵(By みてみん)




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