【第786話:やれるものならやってみなさい】
夜はヴァルサール帝国側主催のパーティーに招かれたが、使徒は欠席。
聖騎士として3名参加と返答して、上座の席を埋めていた。
ルクール達双子とユーリアの3名だ。
3人おそろいの白いパーティードレスは、少し丈も短く薄着で、帝国の法律上は屋外に出られないデザインだった。
つやつやの生地でふわふわのカットが可愛いデザイン。
いつもはこれに付き添いのセイラシュや五賢人の誰かが付くのだが、今夜は3人で挑戦してもらう。
もちろん何も権限は負わせないので、質問にはノーコメント。
要望や伝言は書面で後日くださいと答えるよう指示している。
同じテーブルに帝国側も数を揃えて外相を含む議員を3人座らせている。
本来はヴァレリー宰相も参加予定だったが、使徒が欠席と回答があった時点で取りやめた。
話を聞いたリステルは、わかりやすい対応だねとニンマリしていた。
帝国の若い宰相はとても形にこだわるなと。
ルクルニユーリアの3人よりも目立って視線を集める者がいる。
聖騎士の護衛ですと名乗り、会場の入口左右に等間隔に並び、一面を占領している。
目も口も鼻もないのっぺらぼうの白い仮面を付けた6名の威圧的な鎧姿。
困りますと言われたが、一切構わずずんずんと入室し壁際に並んだ。
外装に仮面を付けたヴェスタ達年長組だ。
マントには堂々とNoが入り、ジュノから数字順にリーベまで並ぶ。
先頭は数字の入らないヴェスタだ。
同じ番号をルクール達も背負っているので、身分はわかったようで運営側は強行した。
このレベルのパーティーで中止などと外聞が悪いと、議員たちからも許可が出た。
保護スーツのアシストが有るので、重く巨大な外装パーツも苦ではないし、何時間でも立っていられる。
なんだったら寝ていても、スーツが立たせてくれるから。
こうしてパーティ会場には聖騎士が9名居るのだと帝国には見せるのだった。
入口で止めようとしたシークレットサービスの大柄な男たちを引きずって、小柄なヴェスタとジュノを先頭に堂々と入室してやった。
開始前のちょっとした時間に、ユーリアがにっこりとヴェスタに小さく手をふったりしていた。
ざわざわと戸惑う様子の帝国側だが、開催を告げパーティの式事を進めた。
仮面は完全に顔を隠すが、AR表示で着用者からは普通に見えている。
まるで授業参観のように緊張しているルクールを、頑張ってフォローまでするユーリア。
ルニーアはマイペースに、これおいしいよとルクールに取り皿で料理をわけてあげたりする。
リステルとマナミは堂々と霊子リンクを確立し、イーシヤン達と打ち合わせたり、普通に過ごしていた。
アイカとマナミ・リーベは式をアイ達につけて護衛している。
いざとなれば上級魔法すら放てる最強の護衛たちだ。
『ふふふ、気にしてる気にしてる!』
嬉しそうなジュノの声にはにやにやの成分が多い。
『うふふ、たっぷり驚いてもらいましょう。明日は内々の会になるでしょうしね』
ドアを挟んで並んだヴェスタとジュノは普通におしゃべりして過ごす。
ユーリア達もリンクに入れているので、聞こえているはずだった。
にんまりしたユーリアがまたヴェスタに手をふる。
『ふふ、ごめんねユーリア。今はじっとしてないといけないのよ』
ヴェスタもにっこりするが、仮面で見えないし微動だにしない立ち姿だった。
アイ達とメーナの5人は聖騎士の軍服姿で、港のヤオンスラウミナスで荷物の搬入をしている。
貨物はシャラハの手のものが手配し準備していたもの。
地上から見れば20m以上の高さにある甲板の上には、港に添うようにアイ達とメーナの式神七式が5機。
バナー付きのランスを持ち、仁王立ちで港を見下ろしている。
4機ある電磁カタパルトにはジュノ達のスヴァーレイクも、飛行形態で4機セットされていて、いつでも射出して2秒程度でパーティ会場にしている帝国国際ホテルに突入できる。
「みてみて!アイちゃん!」
メーナがつんつんと並んで立っていたアイ達を呼ぶ。
「あそこの人達が写真撮ってるよ!」
そう言いながら、アイ達によりかかりにっこりとダブルピースを上げるメーナ。
『なんだとぉ?!』
アイ達もぴーすぴーすと4人でにっこり。
記念撮影のノリだった。
こっそりヤオンスラウミナスを撮影しようとしていた報道のカメラマンが見つけ、苦々しい顔で手をふりかえしたりもしている。
汎用口のスロープ横で集まっている、10才前後の姉妹たちの愛らしさには、職業意識も保てなかったようだ。
そうしてひとしきりわいわいしてから、メーナがアイヴィエンスに質問する。
「どうしてこんな事するんだろうね?」
別に荷物の搬入に立ち会いはいらないし、ましてパーティ会場に6人も護衛に行く必要をメーナは感じられなかった。
うんうんとアイヴィエンスが腕組でうなずく。
「難しい駆け引きで、シキンセキなんだって!‥‥ママが言ってた!」
アイカとマナミから一通り説明は有ったのだが、全く実感がともなわないアイ達。
そうなんだと首をひねるメーナに至っては、説明すら聞いていなかった。
あ、まずいとメーナは思い出して、真面目な姿勢に戻す。
ふるふると目をすがめて左右を見回すが、マナミの気配はしなかった。
完全に透明になり姿を消しているが、アイカ達が一人4機ずつ12もの式を出し護衛として付けているはずなのだった。
聞いていなかったとバレたらマナミに怒られると、メーナは慌てて真面目な雰囲気にするのだった。
今夜の配置を最終的に決めたのは、もちろんヴェスタだ。
アイ達とメーナにお昼寝までさせて万全を期している。
開始前の最後の打ち合わせで、メーナ以外の真剣な顔が見つめる中、アイカが説明する。
「‥‥もしもアイカの推論があっていれば、オリジナルは一切手が出せないはずなのです」
にんまりとアイカは説明をそう締めくくった。
「オリジナルは間違いなく女神様達を恐れています!」
それが前回のちょっかいから、アイカの導き出した答えだった。
「なるほど‥‥」
頷いて難しい顔のリステル達スパイラルアークⅡチーム。
「でも危なくない?」
ヴェスタは最後まで心配する。
「万が一手出しがあれば、どうどうと暴れてやります!」
むふーと嬉しそうなアイカ。
いいねいいねとジュノも賛成。
いえいとハイタッチなどしている。
「ま、これであいつらの弱点が一つ確定出来るなら、必要なリスクだよ」
ぽんぽんとヴェスタの肩もたたくジュノ。
「そのために会場に行くのよ!人質を取るためにね!」
にっこりと犯罪予告をするジュノだった。
そうして聖騎士達に人質として確保されているとは知らず、さわさわとそれなりに会場は和んできていた。
暗号化しているので中身は判らないだろうが、霊子通信リンクをガンガン使い、通話されているとオリジナルには見せる。
半分は必要でしているおしゃべりなのだった。
ルクルニに話しかけるものも多いが、上手く捌いている。
ルクールはしっかりとQ&Aを準備してあげると、完璧にマニュアル通りに対応する。
(ふぅ‥‥よかった。今日はマニュアルにない事はいわれてないな!)
にこっとそうして笑顔になるので、向かい側にすわっていた外務大臣はぽっと頬を染めた。
孫に該当する見た目のルクールスマイルで。




