表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【ヘリカルスパイラル】  作者: Dizzy
第3部 第22章
927/946

【閑話:アイトリース姫】

 アイトリースは久しぶりにミニアイのボディですごす。

アンドロイドボディを表裏からアウレリアのナノマシンに犯され失ってしまったから。

新しい体をアイカが作ってくれるまでは小さいままだ。

小さいまま外には出せないねと、またメーナ係になるアイトリース。

アイちゃん本読もうよと、また絵本を持ち出してくるメーナに、いいよと笑いながらちくりと心が痛む。

アイトリースは失った体以上に気にかかることがあるのだ。


(あぁ‥‥ナロンどこにいるの?心配だよ‥‥)


 今回の体を失った事件で、もう一つ失ったものがある。

同僚として同じ任務についていたナロンは行方が知れない。

ナノマシン保護スーツをまとっていたので、簡単に死んだりはしないはずとアイカは説明した。

アイカは自分の無事を喜んでくれて、アイトリースはとても嬉しい。

痛い思いをたくさんしたけれど、アイカに心配されるのは幸せを感じた。


(‥‥今日もお姫様のお話なんだね‥‥メーナは好きだな)


絵本とメーナの間にちんまりと座り、音読するメーナの小鳥のような声にくすぐったさを覚えるアイトリース。

見開いたページを一緒に見下ろしながら、ストーリーを追う。

特に興味はなかったが、メーナに共感してあげたい気持ちはあるから。


――あぁん‥‥どうなっちゃうの?魔女に掴まってしまったよぉ‥‥


物語の中で騎士は大切な姫のために試練を受け、その途上で悪い魔女に騙されて捕らわれてしまう。

メーナは相変わらず没入感が高く、お姫様と同じ視線で騎士の身を案ずる。

はらはらとしたりドキドキとしたりして、くるくると表情の変わるメーナを見ているのも面白い。

そのエンターテイメントを満喫するために、片手間にアイトリースは物語を追った。

そうして騎士の迂闊さや、魔女の隙だらけの戦術に呆れながらも、メーナの感じるストーリーを追う。


(そもそもどうしてこの騎士はこんなに必死になるの?動機の説明が不十分だな)


シナリオ6作戦などで、監督役をしてヴェスタの演技指導までするアイトリースは物語にもうるさい。

あの作戦はそもそも物語をベースにしたものだったから。

その脚本を組むために、アイカの膨大なアーカイブから沢山の物語に触れた。

アイトリースは演技の第一人者にして、物語の達人でもあるのだ。


――やったぁ!お姫様のお陰で騎士さまも助かったよ!よかったぁ!


別にメーナは偉くないのだが、えっへんとするのは、この姫がメーナの投射先なのだろう。

たしかに智慧をしぼり演技を貫いたのは、騎士への良いサポートとなった。


(まぁ半分は自分で助かっているんだよね、この騎士は優秀だな!)


別の意味合いなのだが、アイトリースもにこりんと笑顔になる。

笑顔の裏で、少し前にあったことを思い出していた。


――ナロォーン!!逃げてぇ!


――‥‥‥‥大丈夫!今助けるよ!


あの悪い魔女以上に恐ろしい、オリジナルの攻撃にさらされながら絶望に震えていたアイトリース。

そこに颯爽と現れて救出を約束する騎士のようなナロン。

なんだかこの掴まって何もできないお姫様みたいだったなと、アイトリースはしょんぼりする。


(ママに助けてもらうまでの事は、痛みでよく覚えていないし‥‥)


ナロンはいったいどうしてしまったのだろう。

ずっとちくちくと胸が痛いのは罪悪感だとアイトリースは解釈している。

自分のせいでナロンは戦うことに成ったのだと。


――アイトリースには手を出すな


ナノマシンの激しい攻勢を受け全身に及ぶ苦痛の中、とぎれとぎれに見えたナロンは必死だった。

痛い思いをして血も流し、怯むこと無く挑んでいく。

まるで我が身など(かえり)みずに。


(どうして?)


アイトリースはナロンの動機が判らない。

ナロンのアイトリースへの気持に目を向けていないから。


――アイちゃん?どうおもう?!


いつの間にか最後のページまで読み終えていて、メーナに質問されたが、思考がから回りして良くストーリーを追えていなかったアイトリース。

映像ログを呼び出せば解決するのだが、それではメーナに申し訳ないなと思い詫びた。


――ごめんごめん、ちょっと考え事しちゃってて


素直に詫びると、よしよしと頭を撫でられる。

メーナもこの小さいアイ達が大好きなのだった。

自分より小さいものがそもそも好きなのに、アイトリースも大好きなのでかまいたがる。


――もう‥しょうがないなぁ!じゃあ最初からね!


そういって嬉しそうにメーナは笑う。

ぱたりとページが戻される。

あはは、と一緒に笑いながらまたチクリとまた胸が痛むアイトリース。


(どうして?)


胸の痛みは罪悪感だけではなかった。

いまだその答えに、アイトリースは至らない。

ただ疑問だけを感じるのだった。


姫と騎士の物語を読み聞かせられながら。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ