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【ヘリカルスパイラル】  作者: Dizzy
第3部 第21章
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【第776話:ご心配無く】

きぃぃいいいん!!


アイカは高度4000m近辺を、1.4マッハを超える速度で飛行する。

先ほど打ったアクティブ探知の結果は、ヴェスタ達にも圧縮霊子通信で送った。

「聞こえますかヴェスタ!?もう通信封鎖とか言っていられません!一大事ですよ!」

アイカは慌てていた。

外装ではこの速度でいっぱいいっぱいだが、間に合うか微妙なラインだった。

『聞こえたし、こちらでもマークしたよ!うじゃうじゃいるね!』

元気なジュノの声。

『こっちも無事合流したよ!アイカは平気?!ケガしたりしてない??』

ヴェスタは操縦しながらだろうに、慌てて聞いてくる。

心配してくれたのだと、アイカはじわりと胸が暖かくなる。

「はいっ!傷一つ付いていませんよ!わたしを待たずに、そちらから接敵して下さい。このままでは非常に不味いです‥‥アイツらケイオ族の村で聖騎士と名乗ったのです!」

『!?』

驚いて見交わすヴェスタとジュノ。

それは全てラウメン聖王国になすりつける気でいるということだ。

『了解‥‥‥スヴァーレイクで出るよ』

ジュノが一転して冷静な宣言。

『アイカ!スパイラルアークをお願い!私もインターセプトに出る!』

ヴェスタもばたばたと出撃する気配。

アイカの式で遠隔でもアークは制御出来るので、二人とも出撃するつもりだ。

「急いで!!決して帝国艦隊に対して攻撃させないで!それは不味すぎるのです!」

アイカが霊子波で見つけたのは、帝国艦隊へ向かう航空機の編隊。

20機以上が密集陣形で飛んでいるのだ。

恐ろしいことに20m程の機体を、聖騎士隊の式神と同じ白紺のツートンに塗り分けている。

わざわざコンシール(透明化)で聖アヴォリアに来て、そこから姿を現し戻って艦隊を攻撃する気なのだ。

このタイミングでは迎撃機も上がれないだろうし、帝国軍は直掩(ちょくえん)機など出していないのだ。

もし式神と同等の性能なら、20機もいれば帝国艦隊は海の藻屑となるだろう。

ラウメン聖王国に攻撃されたと認識しながら。


「タリホー!!ヤルよ!?」

ジュノが元気に敵機を発見。

純白の機体には鮮やかなオレンジのラインとグラデーション。

式神七式より一回り大きなスヴァーレイクだ。

青白いパルスジェットとUMS(重力制御)のプリズムを撒き散らし、見下ろした敵編隊へ急降下して行く。

『ジュノ!やっておしまいなさい!』

恐らく2~3㎞後ろを飛んでいるヴェスタが、姫モードで交戦許可を出す。

「まかせて!」

ジュノは叫ぶと同時に射撃を開始する。

どどどどどん!

まずは右肩と右手で固定している、スマートライフルから連射する。

飛行形態では機首にアライメントをそろえ、狙いは機体そのものでつける戦闘機の動き。

「敵機散開!」

ジュノの報告をヴェスタも目視で捉えた。

「インサイト!」

ジュノと交差するように戦場に入った、ヴェスタのスヴァーレイクも装甲にきらりと陽光を跳ね返す。

機体各部に引かれるラインはエメラルドグリーン。

ぶぅーん!!

ジュノと同じように右腕に固定しているカノンポットから、毎分8000発の20mmレールガンが放たれる。

銃身が短いので、この距離ではかなり着弾がばらつく。

左からそうして広範囲にばらまきながら被せて、ジュノの撃ちやすい位置に追い込むのだ。

先頭を飛んでいた敵機のシールドが弾け、きらきらとプリズムの破片をこぼしていく。

(エネルギーシールド方式ね!)

それは汎銀河連邦では標準的な戦闘機の仕様。

ジュノとヴェスタは、完全に敵編隊の頭を抑えたのだった。


(さすがヴェスタ!)

きゅぅぅ‥‥

スマートライフルがフルチャージになり、ジュノのスヴァーレイクがしゅるんと上空で人型に変形。

その眼下にはいい感じに逃げてくる敵機。

ずだぁぁああん!!

射線に複数の敵機が重なった瞬間射撃して、一撃で2機を粉砕したジュノ。

(なんだ?もろいな‥‥)

上手く貫通したらラッキーくらいで撃ったのだが、先頭の敵機は空中分解し、後ろも錐揉みで落下していった。

不審に思いつつも飛行形態に戻り、再チャージを始める。

そのままシールドに内蔵のカノンポッドからレールガンをばらまいて、再突撃した。

ヴェスタと2人で狩りのように獲物をコントロールしていく。

(‥‥なんだろう‥‥この動きどこかで‥‥)

ジュノを謎の既視感がゆすった。


 アイカはようやくスパイラルアークに届き、空中でアーク下面の第一格納庫に飛び込んだ。

ジュノ達は出撃時に開けっ放しで行ったのだ。

ぼひゅっとジェットを一度吹いて、相対速度をあわせ足が着くと同時に外装を外す(パージ)

まだ戦場まで少し距離があるので、外装はラックに収め、燃料をチャージする。

たたたと艦内を走るアイカには、このアークを使ってしなくてはいけないことがあるのだ。

 ヴェスタの代わりにコックピットに収まると、アークに本気のムチを入れる。

重力制御とパルスジェットでのんびり飛んでいたのを、気圏内での限界まで加速した。

びゅうぅ!!!

後端のスリットから機体の数倍ある長大な噴射炎を吹き出す。

カートリッジ式の固体燃料を燃やす、準光励起霊子ロケットだ。

本来宇宙空間での移動時にシフト航行の合間を埋め使用する、核パルスジェットとは桁がいくつか違う推力を叩きつけた。

機体の全面にはエネルギー変換シールドが消耗品の様に使われ、プリズムの破片を撒き散らし大気の壁をえぐりぬく。

UMSで船内を守りつつ瞬間最大15Gにもなる加速を、スパイラルアークは大気圏内で無理やり使用した。

元々亜音速まで加速してあったので、1秒かからずドーンとソニックブームを打ち鳴らす。

漏斗状の白い傘を残し、はるか彼方へ消えていった。

ジュノ達の交戦区域の横をすり抜け、帝国艦隊の上空に出て一気に減速。

180度転回し減速にも固体燃料ロケットを使う。

どぉぉん!

帝国艦隊の上空で再び音の壁を超え減速したスパイラルアーク。

ばらばらに成りそうなGを、重力制御でコントロールし、ぴたりと止めて見せるアイカ。

眼下に先ほど見つけていた帝国艦隊を収め、すぅと息を吸う。


『現在所属不明の戦闘機によって!‥‥ラウメン聖王国は攻撃を受けております!‥‥聖騎士達が制圧しますので!‥‥ご心配無く!‥繰り返します!‥‥』


拡声されたアイカの声がいんいんと木霊して響き渡る。

一瞬で現れた銀色の船体を、ぽかんと見上げた帝国軍人達は、さらに目も口も限界まで開くのだった。

3度同じ内容を叫びおろし、ぼひゅうと轟音を撒き散らしスパイラルアークが戦場へ向かう。

ばぁああんと大気を震わせ、白い雲をふわりと残して。

こうして先に宣言してしまえば、後にオリジナルが何を言おうと嘘と言い張れる。

それが今、アイカがしたかった急ぎの仕事だった。


 ハーグリーブス大将も旗艦エルダヴァスカの艦橋で、デカいシートに収まりながら身を乗り出し、周りと同じ様にポカンとしていた。

『‥‥‥‥ご心配無く!‥‥以上です!』

どぉぉん

上空100mほどにショックコーンをくっきりと残し、その異常物体は来た時と同じ唐突さで飛び去った。

なんだか矢のようにとんでいったなぁと、ぼんやりと考えていたハーグリーブスだった。

なんだあの加速はと。

飛び去った先の空には彼方で戦闘中なのか、ぴかぴかとピンクに光ったりとか、ぱあっとオレンジに光ったりと花火のようで綺麗だなとも感じた。

あと10秒くらいはハーグリーブスも通常に復せないのだった。




挿絵(By みてみん)

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