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【ヘリカルスパイラル】  作者: Dizzy
第3部 第21章
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【第773話:隠れた獲物をさそいだす】

 アイカを送り出したジュノも、シャチ潜水艇の機首を返す。

4枚の大型フィンが力強く水をかきながら、ウォータージェットも後部ノズルから2本吹き始める。

音紋を取られれば機体特定される可能性もあるが、この潜水艇はそれほど知られて困るものではない。

オリジナルが知らない機体だから。

逆にアークはオリジナルが作ったような船なので、ほんの僅かなヒントから特定される恐れがあり、慎重に運用している。

ごうと水流を吹き加速したジュノは南東に機首を向ける。

そちらにヴェスタがいるはずだから。

じりじりと胸に焼けるような焦りが滲む。

(‥‥もう少しだけ‥‥大きな音は出したくない)

この潜水艇はもう一段階加速できるのだが、非常にうるさいので流石に不審に思われる可能性がある。

ARマップを見ながら距離を測るジュノ。

さっきまでの倍以上の速度が出ているのだが、さっぱり距離が開いてくれない。

「うぅぅ‥‥もうこれくらいで大丈夫なはず!」

我慢しきれずに加速する。

ぶぼぉ!!

ごおおおぉぉおぉぉおぉぉ!!!

きりっと眉をあげたジュノは深度を取りつつスーパーキャビテーションも作動させる。

かなり大きな音が出るが、ここまで離れれば警戒していない帝国艦隊には気付かれないだろうと考えた。

(できるだけ早く合流して、アイカを応援に行かなきゃ!)

それは少しだけジュノの希望が入った見切りだった。




 ヴェスタは深度500m程から慎重に海上を確認していた。

タイムライン的に帝国艦隊が到達可能な海域を調べていく。

この深度ならパッシブソナーでも推進用スクリューのないスパイラルアークは捉えにくい。

重力制御で滑るように周囲の水ごと移動するので、限りなく音は小さく形を想像させない仕組みだ。

この船より巨大な生物がわりと存在する海なので、本気で調べに来ても見つけるのは困難な深度を保っている。

「もっと浅い位置まで浮上すれば、さらに広い範囲を見れるけど‥‥」

表情の薄いヴェスタは、声すら潜めて進んでいく。

音も重要な索敵ファクターだったので、自分の声が邪魔にならないように抑えていた。

視界ではモニターをしっかり確認しながら、海中の音も耳で拾っている。

水中では音波は減衰しにくく、レーダーや光学的観測よりも当てになる。

警戒しているのは帝国艦隊ではなく、そこにいるかも知れないオリジナルの影だ。

スパイラルアークでも、本気で探せばこの深度の潜水艦を見つけられる。

それは相手にも可能なのだと、警戒するのだった。

しばらくして気配が感知され、アラームが鳴る。

ぴーぴーぴー

「なに?!」

方位は概ねの報告だが後方と出ている。

それはジュノ達が向かった方位だった。

激しい低周波が何度も通り抜けて、検出される。

巨大なものが高速で動いていると、スパイラルアークが警告しているのだ。

くるんとアークを180度回転し、後ろに向けアクティブのピンを打つ。

事前に決めていた敵味方識別のピンだ。

間をおかず返信が入る。

つづいて圧縮された霊子波通信でジュノからのメッセージ。

《止まってヴェスタ》

了解と返信して、しばし待っているとごごごと微かな音がとどいてくる。

「スーパーキャビテーション?!そんなに急ぐ話?」

それはジュノ達の乗って行った潜水艇の全力航行時の音だった。

迷わずヴェスタも後方へ向けて加速した。

一大事なのだなと。




 アウレリア=エリオン・マルヴェルンはいつもの白衣でソファーに座り、モニターを確認していた。

帝国からの移動に使ったのは、全長300mにもなる飛翔体。

先日奇襲につかった航空機ではなく、その母艦ともなる宇宙船だ。

幻術も併用した光学迷彩はアイカの幻術と同レベルに存在を隠していた。

「動いたわね‥‥」

アウレリア本気の黄金に覆われた、砲撃艦が陽光に煌めき姿を表した。

幻術を何度かかけ直し、誘いをかけてみたのだ。

警戒するのはラウメン聖王国の対応。

どこまで見えていて、どれくらい警戒しているのか計るための試金石だった。

ハーグリーブス達の動きが囮に出来そうだと、今回は思い切って動かした。

いずれはと計画していたことでもあった。

聖アヴォリア周辺の部族達は狂信的に、ラウマとその使徒を崇拝しているので、利用しようと考えて計画を立てていた。

そのための駒も丁寧に準備してきたのだ。

「敵も動いたわ。こちらも下りますよ」

艦内通信で仲間たちに告げる。

「B隊は迎撃に出て。A隊はわたしと下りるわよ」

にんまりと笑ったアウレリアはしゅるんと衣装を変える。

事前に調べて、伝説にある姿をまねた衣装。

白いゆったりとしたエンパイアドレスは、胸元を大きく広げ両肩も見せるもの。

かつて降臨したと伝えられている女神の使徒を真似た姿だった。


 A隊にはハルトマンとヴィクトルに外装まで与えて、アウレリア自ら従える。

これは作戦のために()()()ための部隊だ。

B隊にはかつて鎮魂祭の夜に襲撃した部隊の生き残りを当てる。

補充の目処はまだ不十分で、A隊は2人だけ。

B隊も4人だけだ。

ただしこの生き延びた6人は、既にこのレベルの兵器を操る事ができる手駒になっていた。

「できれば誰も怪我しないで戻ってほしいわ」

にっこりとB隊を先行して送り出すアウレリア=エリオン。

『了解‥‥まかせておけ』

ハルトマン小隊の副長を務めていた、屈強な兵士が落ち着いた声で返答し、3人の部下を率いて出撃する。

この6人それぞれのために設計した、専用の外装を纏った黄金の聖騎士姿だ。

「南西からこちらに向かったはずよ‥‥すぐ隠れちゃったけど‥‥遠慮はいらないわ、見つけたら蹴散らして」

アウレリアの乗艦に積まれたセンサー類は、アイカの海面からの飛翔を捉えていた。

この艦は本来艦隊戦を戦える性能をもった、オリジナルの軍艦だ。

はるか彼方深宇宙の敵艦をレーダーに捉え、そこへ荷電粒子やレールガンの砲弾を打ち込める攻撃艦。

その探知能力は地上でもスパイラルアークを超える性能だった。

黄金の細長い漏斗(ロート)のようなシルエットを持ったアウレリアの艦艇から、小さな人型の金色が4人放たれる。

これは一人ずつがこの星の軍隊を殲滅できる力を持った兵士。

汎銀河連邦宇宙軍と戦える、オリジナルの技術を使った戦力だった。


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