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【ヘリカルスパイラル】  作者: Dizzy
第3部 第11章
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【第666話:相手の出方を見たいのです】

 新しく祭壇を整えてから、外側の神殿部分に幻術をかけて透明にする。

アイカの式で、幻術の得意な式神幻像という機種を手持ちの3機全て使い、厳重に隠した。

この式神はそもそもそのために開発した機種で、光学的欺瞞と魔術的隠蔽を得意としている。

もう一点特徴があり、非常に燃費が良く、アイカの魔力的な負担も少ない。

「これで見渡せる部分の地面までを隠せました。おそらく次に来るまでにオアシスに成っているでしょうから」

神殿とその周りに流れてくる水を受けられるように、整地し少し掘り下ろしたのだ。

アイカの計算では今の放水量から、一月もあればこの窪地も埋まるだろうと予想した。

全て満たされたら直径200mはある、りっぱなオアシスになるだろう。

「この子も大きく育ってくれるといいのですが‥‥」

神殿の横の水没しない予定の土地に、女神に捧げたオレンジの枝を植樹した。

「まあ、ぶっ刺しただけだけどね」

ジュノがくすくす笑い、ドライに表現する。

「げ、元気にそだつもん!」

アイカがぷっと頬をふくらませる。

そうだね育つよとヴェスタが抱きしめてよしよし慰め、ジュノもからかってごめんと謝った。

3人共普段通りの保護スーツに戻り、やり取りも元通りになっていたのだった。


 この枝はスパイラルアークの第二格納庫を改造した、農地に植えていたオレンジで、アルドゥナで苗を買い求めたものだ。

ナノマシン達の手厚いサポートも有り、船内で見事に実の収穫まで果たしたことがある。

その枝を一本切り落とし、今回の祭壇に祀ったのだ。

そうして水を溢れさせる金カップと共に、女神の祝福を受けて直後から枝葉を伸ばしていた。

差しただけで根を伸ばし始め、すでに1mほどの小さな木になっていた。

この勢いで大きくなれば、そう遠からず果実を実らせるだろう。

船内で収穫したオレンジですら、ナノマシン達の改良が施されて、カロリーもビタミンも十分にある、美味しい実がなったのだ。

「きっとおいしい実がなるのです」

クスンと涙ぐんだアイカをよしよしごめんねと、ジュノも抱きしめた。

巫女の仕事を無事に終えた安心感からか、やたらと幼いアイカは、ジュノ達にとって大好物だった。

これほどからかって泣かせて、慰めがいのあるアイカは珍しいのだった。


 女神に祝福されたオレンジなので、実がなったらすごいものだろうとアイカは予想していた。

なにしろ汎銀河連邦の技術を、鼻であしらう技術を持っているのだ。

電波どころか、霊子波も重力波も一筋も出さず、意思を伝えてきた。

謎に包まれ、天災だとまで言われるアニマロイドを造った文明が、少なくとも女神達の傘下にはある。

アニマロイドの遺跡にある壁画に、女神ラウマを信奉する図が描かれていたのだから。

ちょっとだけ自慢に思っているアイカ。

あのアニマロイドを造った超機械文明ですら、女神様の声を残せていない。

書かれていたのは祈りと捧げる言葉で、自分達のように直接言葉をもらうことはなかったのだろうと予想できたから。

(アイカは名前を呼ばれてしまったのですよ!)

すぐに機嫌を直すアイカは、今とても幸せに包まれているのだ。

巫女愛佳が祈り願った女神ラウマに準ずる存在。

女神ノアに名を呼ばれ、巫女としてこの神殿を任されたのだ。

そう考えると、望外の幸せに包まれる。

いくら巫女だと言い張って、巫女愛佳の真似をした所で、ただの模倣ではないかと自分でも不安に思った事もあったから。

今日、女神から直接声をもらい名を呼ばれることで、真実巫女になったのだと喜びに包まれた。




 午後遅くなったが、全員でまた幻術をかけ直してカルサリク方面に帰還を目指す。

リステル達があの湖畔のキャンプを支援するため先に戻ったので、最初に拠点を造った事は昨夜アストラル・プロジェクションで確認していた。

通信制限をかけているので、現実では連絡は取れていないが、ある程度の位置と規模は確認できている。

年長組で話し合い、最初に拠点に機動兵器を修めて、生身で支援に行こうと話していた。

日が傾いてくる頃に全て撤収し、リステル達の拠点を目指し隠密に移動を始める。

「くすん‥‥すぐもどりますよ」

アイカは最後によしよしと、オレンジの木を撫でて出発した。

最後まで祭壇にも祈りを捧げ、アイカは去りがたい雰囲気だったが、一回帰って相談してからにしようねとヴェスタにも説得されて帰投を納得した。

 ヴェスタ達には一つだけ懸念があった。

あれだけ派手に女神が降臨したので、あの遺跡跡地も警戒しているだろうオリジナルが、どのように反応するだろうかと。

「気付かないはず無いよね?」

移動を始めてからジュノが狭いスヴァーレイクのコックピットで、地図データをあちこち表示しながら、どこまで見えたかなと推察しながらヴェスタに話した。

小隊内だけの短距離通信だ。

「そうだね‥‥すぐに宇宙船くらい飛んでくるかもと警戒したけど、来なかったし‥‥」

現場を丁寧に隠して無人にしてきたのは、誘い出す意味もある。

アイカの式も神殿に仕込んできているので、どういった戦力がオリジナルにあり、どこまでこの世界に干渉する気なのか図りたかった。

 天から降り立った女神の放った黄金の光も、恐らく宇宙からでも観測できたと、アイカが低軌道の式で確認していた。

軌道から映像を保存できているので、マナミとリーベの観測も統合できれば、さらに詳しく状況を確認できるはずとアイカは考えていた。

それは女神達が何処から干渉してきたのか探りたいのではなく、あくまでオリジナルに観測されたのかと確認したいのだ。

「ログを見れば光が下りたのは、ほんの一瞬でした。何処まで警戒していたかで、観測結果は変わるでしょうね」

アイカもそう評価して、オリジナルの反応待ちだと、色々と予想をしているのだった。


 日が落ちてすぐに暗くなる砂漠の中を、ヴェスタ達にしたらしずしずと大人しめの速度で東を目指す。

スヴァーレイク達のホバー移動はそれでも時速200㎞ほど速度は出ているので、夜中になる前にあの湖まで戻れる予定だった。

ちょうど深夜になれば移動もしやすいねと、話していた。

湖までいけば、短距離通信でリーベやマナミとも連絡が取れる予定だ。

あちらも夜は拠点に戻るだろうから、帰ったら会議だねとヴェスタが宣言していた。

アイ達やユーリア達の年少組にはまた辛い夜になりそうだった。

普段規則正しい生活をしているので、みんな夜ふかしが苦手だったから。



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