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【ヘリカルスパイラル】  作者: Dizzy
第3部 第10章
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【第658話:こちらでも狩猟活動】

 河口まで来たときと同じように隠密を心がけるリーベ。

操縦室にはリーベとメーナが並んで座る。

補助席を出してコ・パイロット席ではなく、リーベにべったりのメーナだった。

「どこまで行くのリーベママ?」

惑星アウステラで、メーナはリーベを名前を付けて呼ぶようになった。

アイ達と仲良く過ごし側に居たから。

アイカを”ママ”と呼ぶアイ達と混同しないよう、話の中で”リーベママ”と呼称が定まったのだ。

もちろん込められる意味合いは何も変わらない。

それは以前と同じ甘えん坊の態度でわかるリーベだった。

「南半球です!大物がいっぱいいるんですよ」

そう言ってニッコリと笑うリーベだった。

なになにと興味を示し、顔を上げるメーナ。

「一網打尽にするのですよ」

にっこりと菩薩の如く笑みを深めるリーベ。

「ジュノに聞いて当てにしているのです。マグロの群れを探します」

ああとメーナも笑顔になる。

先日おすそ分けと言ってもらった四代な肉の塊は魚だと言っていた。

「メーナもマグロ好き!生でいいよ!」

焼いたものと、生のままカルパッチョにしたものを食べたメーナ。

アイカお勧めのお刺身も食べたが、酸味が足されマリネしたものが特にお気に入りだった。

「そうねえ‥‥お船で食べる分にはいいけど、困ってる皆には焼いたほうがいいわね」

食される環境や、

食べる相手のことまでを考慮するリーベは、既に主婦の域を越え職人の判断だ。

食器もまともに準備できない中なので、衛生的に火を通しておきたいと思うのだ。

幸いこの星のマグロはとても脂が乗っているので、焼いても身が締まらず柔らかいままだ。

じゅるると既に思い出してよだれが湧いているメーナ。

「うん!頑張っていっぱい獲ろう!」

グッドマークでいい笑顔のメーナは、一狩りのジュノそっくりのやる気を出すのだった。

食うに困っている難民達よりも、主に自分のよだれの為に。


 先に取りやすい方を狙いますとリーベが言い、深海に向う。

かつての夏休みで来た時に、わりとあちこちの海底で見たので、この辺りにもいるだろうと深度を下げる。

スパイラルアークⅡの装備では食材が蒸発してしまうので、シャチ型潜水艇で出撃した。

「いましたね‥‥式神(みずち)だけでいけるか試しましょう。メーナも私と同じにしてね」

船体の左右に張り出したスタビライザーにもなっているフィンに、大型の式が装備されている。

左右に一機ずつ有るそれをリーベとメーナで分けて一機づつ操る。

かちっとラッチが外れると、すいっと音もなく進む。

リーベは潜水艦も操縦しながら態度を変えないが、メーナは少しリクライニングしたシートで目を閉じて集中する。

艦内の席並びと同じように、メーナはリーベの式を真後ろから追いかける。

向かった先の海底には数匹の蟹が居た。

ハサミしか食べたことがないが、母星のものと同じような味で美味しかった。

マグロと違い逃げ足が遅いので、獲りやすいだろうと先に潜ってきたのだ。

「この当たりが頭で、中心に沿って狙いますよ」

席で振り向いてメーナを見ると、すでに深い瞑想に入っていて、返事は式神蛟から返った。

「りょうかーい!でっかいねこいつ」

メーナが進むに連れ近づいてきた蟹の大きさに驚いた。

全長が15mほど有り、人型兵器の式神七式と同じ程の体躯。

リーベが詠唱して式から魔法を放つ。


――Magic.System: ArcaneCore — Online


リーベの詠唱もアイカやマナミと同じ速度の早口なのだが、どこかのんびりに聞こえるのは落ち着いた雰囲気から。


 Authority.Channel :: THUNDER_CAST — Granted

 Target.lock-on() Atmospheric Charge — Synchronize

 >> Ionize.AirLayer(radius = 300m)

 >> Voltage.Cascade(limit = release)

 >> Plasma.Route(generate = auto)

 >> Surge.Bind(target, current = lethal)

 >> Collapse.Delay(0.03sec)

テキパキとコードを組むが、にっこりとした表情に殺気がない。


「Execute — Lightning Burst」

先頭の式神蛟から青白い誘導レーザーがのび、高電圧のスパークが流し込まれる。

じゃれ合うようにハサミで戦っていた2匹がぴょんとひっくり返った。

ぱりぱりと帯電していて既に痙攣すらしない。

「リーベママすごぉい!!」

メーナは大喜びでリーベの式のまわりをくるくるする。

殺気はなくとも確実に仕留めるリーベは、楽しそうにするメーナの動きを愛でる。

(ふふ、メーナは式になってもかわいいなぁ)

にっこりと笑みを深くするリーベが、後席の義体ではなく、泳ぎ回る式神に細めた目を向けた。

今メーナの心はそこに有るのだからと。

リーベは主体を義体に残し、式を支配下において指示を出す使い方だが、メーナは少し違う。

完全に式に乗り移ってしまうのだ。

複数の式を操っても薄まらず全て同じメーナになるようで、今では最大4機までは操れるが、アイ達と同じで4つ子のようにふるまう。

お互いを別人格として扱うのだ。

アイ達と違い数字ではなく、別々の愛称を付けて呼び合うのが、どこかお人形遊びにも似ていて微笑ましい。

これは教えなくとも繊細な操作を式で出来る一方、万一撃墜された時のダメージが大きいとも言える。

「電撃のコードは覚えられましたか?メーナ」

楽しそうに今度は巨大蟹の回りを泳いでいたメーナの式神が、しゅるんと戻ってくる。

「うん!ちゃんと覚えたよ!」

にこにこのニュアンスは、早く自分でも蟹を獲りたいと思っているのだ。

「大丈夫だと思うけど、捕食型の生物を見たらレーザータイプの魔法でもいいので倒すのですよ。この星の海洋生物はだいたいおっきいので、最大出力でいいですよ」

「はぁい」

答えるやいなや、リードを外された子犬のようにぴょんぴょんと跳ねるように消えるメーナ。

リーベはその後ろを遅れず式で追いかけながら、倒した蟹を潜水艇のハッチに仕舞っていく。

こうしてシフト格納で収納しながら狩人を追いかけるのだった。

少しだけはしゃいでいる狩人の後に、にこにこと笑顔で続いて。



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