【第652話:その結果はこうなります】
「今こそみんなの心を一つに!」
アイカが叫んだ。
『ひとつにぃ!!』
バンザイジャンプのジュノと年少組。
「ちぇぇ~んじ!らうみなぁっす!!」
ジュノの叫びで、どこからともなく軽快なBGMが流れ始める。
手を繋いで輪になったスヴァーレイク3台と式神七式が2台、ぐるぐると走り回る。
20mと15mの巨体がぐるぐるは迫力満点だ。
真円の形に轍を描き、砂を3mほど掘り下ろす。
各々のパーソナルカラーで引かれている識別ラインが、ぴかぁっと光り輝き美しいグラデーションを滲ませた。
『はぁぁ‥‥』
楽しげな雰囲気について行けず、ため息の合唱はヴェスタとユーリア。
「何がはじまるの?!」
混乱の中でルニーアはルクールの式神に手を引かれ回る。
それでもフォーメーションを乱さないレベルで機体を操れるように、ルニーアもなっていた。
『マジカルホーム!!』
アイカとジュノが完璧にユニゾンして声を放った。
「とう!」「とう!」「とう!」「とう!」
四方に控えていたアイ達4人が順番にジャンプして輪の上に飛び乗り、中心点で指先を揃え合わせた。
しゃきいぃいーーん!!
また謎の効果音とフラッシュが瞬き、アイ達の式神がナノマシン保護膜のフィールドを広げた。
音と光が止むと、しーんと夜の砂漠に沈黙が下りた。
「‥‥せっかく目立たないようにとゆっくり来たのに」
「あぅん‥‥」
嘆きのヴェスタにユーリアがうめきを添えた。
そうして派手なアクションと共に変形合体した、アイカ達は機体から降りる。
ちゃんと内側に全員が下りられるフォーメーションになっている。
「ふふふ‥‥完璧じゃない?!」
「完璧です!愛の力ですね!」
盛り上がりまくるアイカとジュノを、ルクールとアイ達4人が囃し立てている。
みんなの頬が赤く染まり、笑顔が輝いていた。
一緒に来るのとルクールに手を引かれて行ったルニーアも、混乱しつつも楽しそうな雰囲気で笑顔になった。
マヤカランではさみしい思いを沢山したルクールが、にっこりと楽しそうなだけで、ルニーアは嬉しいのだった。
げんなりするのはヴェスタとユーリアだけだった。
「どこがマジカルなのよ‥‥」
楽しそうな輪の外で、ヴェスタがこめかみを押さえる。
「フォームじゃなくて、ホームなんですね‥‥キャンプではダメなのかな?」
ユーリアの悲しげな評価も、騒ぎの中心にいるジュノとアイカには届かなかった。
大騒ぎの中でナノマシンまで展開して、完成したのはただの大きなキャンプだった。
豪勢にも人型機動兵器を骨組みにして。
そうして出来上がった仮設の拠点は、アイカの幻術魔法でちゃんとコンシールされる。
万が一奇襲攻撃が有っても、コックピットは内側に全機向いていて、ナノマシン保護膜が砲弾もミサイルも2~3発くらいは防いでしまう。
「その間に搭乗すればいいのです!」
にっこにこのアイカが、不満そうなユーリアに、実用性の面からプレゼンテーション。
アイカのぺらぺら説明で、ユーリアとヴェスタが捕まっている間に、どこから出してきたのかお風呂ユニットが設置され、その横には仮設用の本物のテントまでが準備されていく。
ちゃんと3棟立ててあり、皆で寝られる仕様だ。
お風呂コンテナを持ち込むために、ジュノのスヴァーレイクはシフトウエポンべイを一つ提供している。
本来はハードポイントシステム向けの、シフト収納スペースを使っていた。
式神達の収納からはテントやら、晩ごはん準備用の屋外コンロまででてくる。
ジュノはもうエビや肉を野菜と一緒に串に刺して、バーベキューの準備に入っている。
「まぁ、楽しそうだからいっかぁ」
ヴェスタもジュノが楽しそうに、にこにこしているので嬉しくなってくる。
決して楽しむのが嫌いな訳ではないので、ユーリアも説明地獄よりいいと、お風呂の準備を手伝いに行った。
アイカもジュノの手伝いをして、晩ごはんの準備。
ヴェスタはにっこりと笑って一人機体に戻り、行軍ログを確認していく。
ここまでに特別な発見はなかったが、明日に向けマップデータを整理することにした。
きっとご飯を食べたら、もうみんな寝てしまうしなと、ヴェスタもあくびを噛み殺した。
外は少し紺色の空になり、もうすぐ日が昇ってくる時間だった。
結局真面目にしようとしても、わいわいと騒ぎになり、打ち合わせも明日でいいなとヴェスタも諦めた。
ジュノが冷えたビールまで出してきて、ヴェスタにも持たせたので、乾杯してからはもう楽しむだけになった。
お腹いっぱいになって、お風呂にも入ると、年少組は全滅でテントに適当に別れて収まった。
ルクールとルニーアがユーリアを連れていき、アイカとアイ達で大きめなテントに。
一つだけある小型のテントがジュノとヴェスタ用に残された。
「ふわぁあ‥‥」
ジュノもすっかり酔いも回り、頬を染めてトロンとしている。
「ほら、テントまでは頑張って」
そういってヴェスタに引きづられて寝かされる。
「らいじょーぶぅ‥‥」
まったく大丈夫じゃないと宣言するジュノ。
寝かしつけるまでもなく、ぐっすり寝てしまう。
つんつんと頬をつつくと、むにゃあと寝返りを打った。
くすくすとヴェスタも綺麗に笑う。
周囲監視と夜番はアイカの式と魔法が担当しており、全員で寝ることにしていた。
世界中が敵地の様だったアウステラと違い、このアルドゥナの僻地で襲撃は無いだろうと。
「おやすみぃ」
ヴェスタもそう言って、ジュノの背中にぴとっとくっついて寝るのだった。
ずっと不安と責任感から硬い顔だったヴェスタも、すっかり柔らかな寝顔になるのだった。
アイカとジュノの計画した通りに。




