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【ヘリカルスパイラル】  作者: Dizzy
第2部 第26章
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【第546話:簡単にあきらめたりしない】

 アイカが戻るまで決して側を離れないと約束させてからルクールを戻して、予定より少しおそくマナミを探しに行った。

進捗を確認するのと、こちらの事情も伝えたかったから。

マナミ達はすでにこの打ち上げ施設が見える所まで来ていると言う。

夜になったので、今は星を見ていたと嬉しそうにマナミは言う。

これで帰れると、こちらと同じように実感したのだろう。

スパイラルアークの停まっている正確な位置情報までを話して、その日は戻った。

ルクールは予想通りユーリアにホールドされたまま、すやすやと眠りについていた。

時間を確認し、まだ起きているはずとアイカはベッドを抜け出す。


 ジュノとヴェスタは、お酒も飲まず待っていた。

ルクールの事を話し合ってさみしくなったのか、二人で温め合ってはいたが、まだ起きていたので事情を全て話す。

ジュノはアイカにもお茶を淹れてくれた。

それくらい時間が要る話だった。

「なるほど‥‥滅びの力‥‥」

ジュノはあの強敵を一瞬で消した力に、アイカとは別の恐怖を感じる。

こちらの持つ力は、相手もいずれ持つものと想定するのが軍人だ。

新兵器の完成は、それを防ぐ技術開発の開始を意味する。

永遠のイタチごっこが性分なのだった。

「想像もつかない‥‥あのクエーサーボムみたいなものなのかな?」

ヴェスタがふんわりしたイメージで言う。

アイカもそれは発想したが、クエーサーボム独自の重力波異常どころか、温度や大気密度すらほとんど変化がなかった。

物質そのものがただ消えたように観測された。

「想像ですが‥‥あのクエーサーボムと似ていても違う力だと思います‥‥恐ろしさだけ同じと感じます」

自分を包むように抱いたアイカが寒そうにするのは恐怖のせいだろう。

様子に気付いた二人がアイカを引き込んでサンドイッチ。

ひと通りいつものように、やめて!いいじゃない、もにゅもにゅとして温まる。

ヴェスタもむにむにしながら考え込んでいたが、ふとアイカにたずねる。

「ルクールのコードにもぐれないのかな?アイカの時のように‥‥」

それはアイカも考えていたことでは有った。

「おそらく難しいのだとは思います‥‥汎銀河連邦の技術と全く違うので‥‥この星の技術を真似て開発していったとルクールは言いましたが‥‥この星のGM自体が解明できていないので、差分からという方法もとれない‥‥」

一から開発するような手間になると、アイカは言う。

ヴェスタはまだ考え続ける。

なにかに至りそうな気配を掴んでいたから。

「そうだ!解る人に聞こう!!」

がたんと大きな音も出し、ヴェスタは立ち上がった。

アイカは驚いて、ついでルクール達が起きていないか見に行った。

「もう‥‥ヴェスタ、声おおきいよ!」

「ごめんなさぁい」

ジュノにも怒られてしゅんとするヴェスタ。

それでも頬が薔薇色に染まるほど興奮している。

「ちょっと取ってくる!」

たたっと自室に駆けていくヴェスタ。

「ちょ?なんなのぉ??」

ジュノはそのテンションが理解できず困惑した。


 アイカはすぐに戻り、二人とも起きなかったよと胸をなでおろす。

ヴェスタも戻り、小さな時計のようなものを持ってきた。

「あったよ、これこれ」

そういって二人に見せるのは、懐中時計のような機械。

ぱかんと丸い蓋が開き、なにかグラフのようなものがモニターされた画面が現れる。

「これは地下世界を旅立つ時にラデクさん‥‥ユーリアのお父様からもらったものなの」

ふんふんとジュノもアイカもとりあえず聞く体制。

「どうしても困ったことがあったら使えと言われたの‥‥通信器よ」

「えぇ!んぐぐぅ」

騒ぎだそうとするジュノの口をヴェスタが押さえ、アイカは自分で自分の口を押さえた。

「しーー!」

ヴェスタが柳眉を逆立てるのに、なにか理不尽を感じるジュノとアイカだった。

「‥‥ユーリアに困ったことが起きたら相談しようと思って預かったのだけど‥‥星の危機なのだし良いと思わない?」

ルクールの言う滅びが全くイメージ出来ないが、ラデクは技術者でもあったと思い出したヴェスタ。

その旨を伝えると、ぜひ連絡すべきだと結論した。

「うぅん‥‥どうかな?失礼な時間じゃないかしら?」

ヴェスタは遅いし明日にしようかと遠慮する。

確かに他家に連絡するには問題だろうが、ユーリアは妹なので、義理の親みたいなものだとジュノが理屈を通した。

「遠慮なんかしてる場合じゃないわ」

そう言われて、ヴェスタはごくとつばを飲んで、コールする。

使い方はあちらを出る前に教わっていた。

『ザザッ‥‥ヴェスタさんか?何‥‥あっ‥‥な?』

距離を感じさせるノイズが酷かった。

ちょっとかしてとアイカが機械を奪い、調整する。

「ダメですコレで精一杯みたい」

フィルターやブースターなどいろいろ設定を変えてみたが、多少改善したがきき取りにくいのは同じだった。

ラデクのモデルが乱れながらも表示されて、表情も見て取れた。

「ラデクさん、ヴェスタです‥‥お力をお借りしたいのです」

そうしてノイズで途切れながらも事情を説明した所、ラデクはユーリアにやらせると良いと言う。

『ユーリアにはアウステラリアンの技術全てを持たせています‥‥そちらの技術と違って私達の技術ならば呼吸するように読み取るでしょう‥‥』

言われてみて、ヴェスタは思い当たる。

「そうか!だからあのドア開いたんだ?」

「おお!なるほど」

だんだんと声の大きくなる二人に、しーっとアイカは指を当てる。

またシュンとしてから、ラデクとの通信を再開する。

具体的な内容を伝えて、何点か指示ももらった。

ふとヴェスタは表情を落としてたずねる。

「‥‥迎えに行ったら一緒に来れませんか?」

ユーリアから父親まで奪いたくないとヴェスタは考える。

『あの子には聞かせられませんが‥‥私もとうに寿命を越えているのですよ‥‥使命感だけが私をこの場に生かしている。ここを‥‥妻の側を離れてまで生きたいとは考えられないのです‥‥お言葉はありがたいですよ』

そのやり取りは、とうに覚悟を決めていた大人が、わがままを言う子どもを諭すようなニュアンスになってしまった。

『みなさん‥‥どうかユーリアを‥‥私達の希望をよろしくお願いします』

うんうんとジュノもアイカも真剣に頷いてみせた。

ラデクはうっすらと笑みを浮かべ、ありがとうとだけ告げ通信を終えた。

既にあの地を出る時に一度、していた会話だった。

ユーリアの事を思い、繰り返してしまったヴェスタ。

 とんとんとジュノが背を叩いてくれる。

「ユーリアもきっと解っているよ‥‥母親も寿命だったと聞いていたんでしょ?」

うんうんとヴェスタは理性では理解できるが、ユーリアを不憫に思ってしまう。

「‥‥明日の朝から早速試しましょう‥‥ルクールを研究するのです!」

そうして方針が決まると、安心できたのかふわぁあとあくびがでた。

ふふふとジュノとヴェスタに笑われても、アイカはにっこりと笑えた。

早く寝るんですよ!と二人に残し、くすくす笑いとともにベッドに行くアイカ。

まだ出来ることが有るのだと考えながら。

この3人はとてもしたたかで諦めにくい。

そのようにこの長い旅と向き合ってきたから。



 


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