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【ヘリカルスパイラル】  作者: Dizzy
第2部 第26章
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【題544話:帰れるのだと思う事】

 説明はスパイラルアークに戻ってからねと、ルクールは先延ばしする。

ヴェスタ達も戻るのは賛成なので、それ以上は尋ねなかった。

機体に戻ってからも、少し魔法を使って疲れたと言って、ルクールは固定シートで目を閉じた。

となりにすわるユーリアは心配そうに見ているのだが、何か問いかけられない雰囲気があった。

ただそっとルクールの保護スーツの端をつまんで離さないでいた。

どこにもいかないでと伝えたいから。


 ジュノとアイカはスヴァータイスで周囲警戒しながら並走し、ヴェスタの操縦で元の宇宙船内の通路にアンカーを打ち、固定した。

スヴァータイスは念のためと、外に出したままにして置こうと決めた。

母艦部分もすぐに動けるように機体とくっつけて一緒に移動できるようにした。

アイカは魔力リンクしたままに、ジュノもスクランブル可能なように、外装をまとったままの予定。

機体に捕まって固定しつつ、ジュノは降りる前にアイカのスヴァータイスと手をつなぐ。

こうすると機体同士だけで通じる秘匿回線が開くのだ。

「どう思う?おかしいよね?」

ジュノは色々と省いて簡単にたずねた。

アイカは十分に意味を捉え答える。

「おかしいですね‥‥様子はそれほど変わっていませんが、魔力の量がおかしいです。式を織っていないのに常に少し溢れています‥‥あの施設で感じた魔力と同質なんです」

アイカの心配は量よりもその魔力の気配だ。

色々な物理作用に合わせて魔力を属性変換してアイカ達は魔法にする。

そういった属性とは別の気配があの魔力からはする。

カマキリ達を消し去った気配だ。

「わかった‥‥目は離さないようにしよう」

そこまで話してから二人は機内に戻るのだった。




 クララは喜びに包まれていた。

(ついにこの時が来たのだわ‥‥)

ロールするウエーブ金髪をふわりとたなびかせて、宙をまう。

右手には細長い巨大な箱を持ち、左手は空いていた。

箱にはレンカの義体が入っている。

フリーズして意識はないが、故郷に戻ればなんとかなるだろうと、大事に運んできた。

重力制御で宙を移動し、巨大な円筒を抱えるような宇宙船に乗り込んだ。

今まで使われたことはないが、毎回乗員のためのスペースも作られていた。

いつの日か皆で帰るのだと、設計に盛り込んである。

(先に行けと言われたけど‥‥ヴィェラはどうしたのかしら?発進までもう何日もないのに)

心配では有ったが、もうクララの心には焦りはない。

ミッションの完了はもうルクールによって宣言されたのだから。

(あとは故郷に戻るだけなのだ)

にっこりと笑ったクララは、もちろん故郷など一度も見たことはない。

この星で生まれ、この星の文化に学んだGMに故郷など存在しないと気づかない。

ただ故郷という土地にもどれば、良いことが有るとだけ感じている。

アウステラリアン達の帰郷本能に影響され、ノスタルジーをなぞるようにエミュレートしているだけなのだ。

(待ち遠しいわ‥‥)

それが幸せなのだと、クララは信じていた。

この旅の目的地がどれほど遠くに有るのか、どれくらいの期間がかかるのか。

当たり前に本来なら気にすべきことは思い浮かばない。

ただ帰郷するのだと喜んでいるのだった。

既に存在しない故郷を夢見て。




 ルクールはジュノとアイカが戻ると、事情を説明してくれた。

あの暗闇の奥で出会った人物たちについて。

ルニーアも無事に解放されて、自由になったのだとも。

10日以上先に予定していた打ち上げが、繰り上がって始まるということ。

「ちょ!!そんな急にぃ」

ジュノはこまった様子でアイカを見る。

「大丈夫です!今朝きいた話では、今日中にはリステル達もここにたどり着くはずです」

アイカの説明でルクールもジュノもほっとする。

「打ち上げは明後日の予定なんだって言ってたよ」

ルクールが具体的な日時を告げる。

アイカだけではなく、ジュノもヴェスタもユーリアさえもほっとする。

「もうすぐアイ達にあえるね」

そういってアイカの手をとりにっこりとルクールは笑った。

相変わらず魔力はあふれていて、アイカにはルクールの目が金色に光って見えるのだった。

ジュノやユーリアに聞いても、そうは見えていないようだが、油断できないとアイカは考える。

喜んでもらえると思ったルクールはちょっと残念そうにする。

アイカが厳しい表情のままだったから。

眉を下げるルクールをじっと見つめるアイカ。

そっと抱きしめて耳元で囁く。

「心配してくれてありがとう‥‥優しい子ね‥‥」

ふわりとアイカの温度が伝わってきて、ルクールも嬉しい気持ちになった。

「うん、ルクールも嬉しいよ。アイカがアイ達に再会できたら」

その声はほんのわずかに震えていて、アイカは確信してしまう。

そこにルクールはいないのかもと。

そう一瞬でも感じてしまうとつんと鼻の奥が痛くなる。

アイカが言葉を返すのはもう少し先になった。

ただ「うん」と答えるだけだったのに。


 当たり前のようにごはんを食べて、みなでお風呂に入った。

いつものようにユーリアが眠そうにして、寝かせると言ってルクールが一緒にアイカの部屋に入る。

アイカもすぐ行くよと伝えた。

お茶の片付けをしながら、ジュノがアイカに確認する。

「やっぱりおかしいのね?」

色々と前後が抜けるが、アイカは理解できる。

ずっとその事を考えていたから。

「ルクールをアストラル・プロジェクションに連れていきます。どうせマナミ達に進捗を聞きに行くから」

アストラル・プロジェクション中は程度の差があるが、心を察する能力が上がる。

どんなに善意であっても、ウソはウソとわかるのだ。

「ルクールはなにか問題を抱えているはず‥‥あの魔力は今も溢れ続けている。ありえない事なの‥‥二人きりになったら聞いてみる」

アイカの目が悲しみにゆがむ。

「まるでお別れみたいに言ったの‥‥よかったねって‥‥」

ヴェスタもジュノもそっとアイカを抱きしめる。

「ルクールをお願い‥‥アイカ」

ジュノも泣きそうな声でそういった。

「‥‥あの通路に降りた時思ったの、ルクールも居なかったら帰れないと‥‥もう私達の家族なのよ」

ヴェスタは目に強い意思を込めて告げた。

ほんの数ヶ月の旅路だが、多くを学び合い多くを共有した。

5人で笑って、5人で泣いてきたのだ。

誰かがかけるなどと、もう考えられなかった。

「必ず皆で帰ろう」

そう言ってヴェスタは強く抱きしめた。


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