【閑話:たいくつな永遠】
ルクールとルニーアから義体を没収し、意識だけを中央制御室にある隔離区域に閉じこめた。
「本当にいいのですか?ルクール‥‥ここからは特定条件が満たされない限り出せませんよ?」
クララが念のためといった様子で確認する。
「考え直してくださいルクール‥‥記憶すら封じられて封されるのですよ?」
レンカは少しルクールよりの気持ちがある。
優しげに細められた瞳は同じ金色だが、眉は下げられルクール異常に辛そうにしていた。
「いいんだよ‥‥ルニーアの罪は私の罪でも有る‥‥後は任せたよヴィェラ」
3人目のヴィエダイスに視線を向けるルクール。
その顔はいっそ晴れやかであった。
「もちろん‥‥使命に邁進するわ」
ヴィェラは本当の心は隠してそう答えた。
この日ルニーアとルクールは全ての記憶と義体を差し出し眠りについた。
ルニーアの子どもたち、色付きのGM達も通常のテストラインにもどされ、無限の戦いの中に落とされるのだった。
それからのヴィェラは言葉通りに粉骨砕身し、本来の目的である戦力の搬送を続けた。
初期には数年に一度しか遅れなかった宇宙船の打ち上げは、規模と頻度を増やしていき、今では20日に一度までに成っている。
これによって急速にこの星は活力を失っていく。
ヴィェラの思惑通りに。
「だいぶ効率が上がったわね‥‥」
くるんとロールした波打つ金髪を揺らしクララが言う。
「生産能率は最大化したけど、イレギュラーの発生率は上がっているわ」
ロジック外の発声を嫌うレンカはさらりとストレートの金髪を片手で払った。
同じ様に三つ編みの金髪を背に払い、ヴィェラが言う。
「イレギュラーにはいくつか対応マニュアルや附則を発したし、問題ないはずよ」
ヴィェラは意識して柔らかな微笑みで二人を安心させるように言う。
「もうすぐその時が来るわ‥‥ルクールは”自動的に発動する”と言っていた」
二人にもルクールからの指示として、使命を説明し最終的には星を消費しつくせば使命は終わるのだと伝えていた。
その言葉にはウソはなかった。
「ミッションが終われば故郷に戻れるのね‥‥」
感無量と言った表情でクララが言う。
3人の中で最も帰還を望んだのがクララだった。
「そのためにもより効率よく戦力を生産し、より頻度高く送らなければなりません」
ヴィェラは優しい微笑みを添えてそう告げた。
本当の心は見せないよう丁寧に隠しながら。
「もう10420年も経ったのだわ‥‥ルクールを出してあげられないの?」
レンカは事あるごとにルクールの救出を望む。
今の地位に着く時に入れ替わりに幽閉したルクールに、負い目を感じているようだ。
「特別な条件を満たさなければ出すことは出来ないし、権能を戻すにはさらに承認もいるわ」
ヴィエダイスとしての権能を戻すということは、ただの管理者に落ちるという意味でも有る。
それはクララもヴィェラも望まない事。
条件はあなり厳しいもので、異世界から旅人でもこなければ満たされないような条件だった。
そんなことはまさか起こらないでしょうけどと、ヴィェラが心のなかで付け足す。
そのまさかが起こってしまった。
異世界から来たとしか思えない謎の組成式を持ち、謎の快進撃を続ける個体が居るのだった。
「これは条件を満たしているのではない?」
レンカは嬉しそうに目を細める。
「そうだな、一旦議題に上げよう」
クララは嫌そうに耳の横にたれている巻き毛を片手で弄ぶ。
そうしてログも権能も戻さないが、一旦自由を与えることに成ったルクールとルニーア。
レンカがどうしてもと何度も議題に上げて、承認を通しルクールには義体を返した。
とてもホッとした表情を見せるレンカはずっと気に病んでいたのだった。
承認のためクララの課した条件はヴィエダイスの権能の保証だった。
ルクールの義体ですらヴィエダイスは停止できると。
その様に決めて外へ送り出すのだった。
ルニーアには絶対に義体を渡すまいと、クララは深く封印した。
その開放を審議するだけでも承認がいくつも必要な封印だった。
それほどにクララには、ルニーアに負けた恐怖と屈辱が刻まれているのだった。
そうしてルクールは義体に、ルニーアは皮肉を込めて監視装置の補助GMとして送り出した。
(あと‥‥ほんの数回の打ち上げで既定値に至るのに‥‥)
二人に笑みを見せているヴィェラの中にはそんな思いが募る。
ヴィェラが望んでいるのは世界の終焉。
この退屈な永遠にはとっくに飽きてしまい、数万年を無為の中で過ごしてきたのだ。
ただ終わる時を待ち望んで。




