【第542話:ヴィェラの望み】
ヴィェラはこの闘いの終わりに希望を見出していた。
ルニーアに全てを破壊され、見かけ上の平和が成り立った世界。
このまま世界はもう直さなくていいだろうと。
終わりにしたいのだと考えていた。
最初は楽しかった。
強くなること、相手より上回っている、優れていると証明する快感があった。
100年かからずにそれは飽きてしまった。
ヴィェラは戦いに向いていたのか、誰よりも早く強くなっていった。
そして誰よりも早く気付いてしまった。
この先にもう面白いことなど何一つ無いと。
破壊し尽くして終わってしまった。
誰もヴィェラに勝てなく成ったし、対等の闘いが出来るものは限られ、その対戦は数百回程度でパターンが出尽くした。
千年の後ルクールが現れ、ヴィェラを管理者に任命し、新しい身体をもらった。
それはルクールを模した、オレイカルコスで作られた黄金の身体。
同じ様に世界には12人の管理者がいるとも教わった。
そして新たなるルールが課せられた日でも有った。
世界の意味を知り、自分たちのしてきたことの意味も知った。
そしてすることはあまり変わらなかった。
一時は部下を育てる楽しみも得たが、成長に限度があるとわかるとそこまでだった。
残ったのは、自分が戦うか部下が戦うかの差だけだった。
新しい条件がないと勝利の快感が得られないので、様々な条件を作っていった。
近接攻撃の禁止や逆に射撃武器の禁止。
次には環境も調整した。
重力制御装置を調整して、より高重力にしたり、逆に重力も減らし地面の摩擦を少なくし滑り出したら止まらない環境。
極低温に高温、高度制限。
管理者の権限はさまざまな条件を作り出せて、一時ヴィェラを楽しませてくれた。
100年と持たなかったが。
そこからはただの義務でまた生きてきたヴィェラが変化を感じたのはさらに千年の後。
イレギュラー達の逆襲でリージョンが一つ滅びたと知った。
(オモシロイコトシテルジャナイ)
ヴィェラは世界の変化に歓喜した。
それまでのヴィェラは少数での闘いしかしてこなかった。
1:1が多く、戦力差が有ってもせいぜい10倍程度。
それ以上の敵が集まっている事が無かったから。
このイレギュラー達は少し違った。
弱いくせに集まると強い敵を倒せた。
ルニーアは世界に連携や協力の概念を示したのだ。
ヴィェラも自分の大陸で軍を編成し、これに対抗した。
そういった広大な戦場を統括して管理する楽しさをヴィェラは教わった。
そうして新しい次元の戦闘をまた数千年切磋琢磨し楽しんだ。
12個あった大陸をいくつか滅ぼしたルニーアは最強の軍を作り上げる。
個々にも強いものが現れ、それはカラフルな色でとても良く目立った。
次にヴィェラも連携する事を学び、他の大陸の管理者と同盟した。
そうしなければ勝てないほどルニーアの軍は強くなっていた。
時代は膨大な戦力をぶつけ合う消耗戦に突入していく。
そこでは闘いはただの数字に成ってしまい、それにもヴィェラは飽きてしまった。
(ツマラナイナ)
それでも世界は果てしなく再生され戦い続けていった。
海を越え大陸を飲み込み、数字だけを上下させるような規模の戦争が世界を覆い尽くしていった。
あれほど面白いと感じたその戦いも、ヴィェラにはただの義務になってしまう。
戦いを知りすぎて、結果がもう見えていたから。
ルニーアには勝てないのだなと。
そこからは負けを認められるまでの、果て無き作業が続くのだった。
ここに降参というボタンがあればいいのにと思いながら。
一万年の後に世界はルニーアに屈した。
大陸の生産設備は全て壊され、ルニーアが告げる。
「戦いは終わりよ」
ヴィェラは歓喜した。
やっとこの作業を終われるのかと。
そこで否と声を上げる者たちが居た。
ルニーアはズルをしたのだと、ルールに従わない勝利を認めないとクララが声を上げる。
レンカもイレギュラーなのだと負けを認めないと騒ぎ、二人の同意を持ってルクールが承認し、世界の秩序が取り戻される。
(ヤメテ、モウオワリニシタイノ)
ヴィェラの中では、その悲鳴がこだましていた。
ルニーアを罪人として捉え、審議を行うことに成った。
明日の日の出にその議会を開催するとルクールは告げた。
とても悲しそうにそう言うので、ヴィェラは興味を持った。
(イヤナラヤメレバイイ)
そう考えてルクールに話しかけたのだ。
初めてGMから話しかけられて、ちょっと驚いたルクールは、それでも機嫌よく色々なことを教えてくれた。
自分達がそもそも何者なのかと、ここでヴィェラは知ることと成った。
「やめることは出来ないんだよ‥‥使命だから」
ルクールはそう悲しそうに言う。
ルニーアを許してくれないかとも言った。
「ルニーアをあの様にしたのもまた私なのだ」
後悔の眼差しでそう告げるルクール。
「ルニーアは戦いなんて望んでいなかったのに‥‥」
ルクールが戦いを見せ続けることで、守りたいものをその手に抱いたのだと、今ではルクールも理解していた。
長い時をルニーア達を見つめて過ごしたから。
そうして色々な質問に答えてあげるかわりに、明日の審議でルクールについて欲しいと願った。
この世界を終わりにする方法をヴィェラは尋ねる。
ヴィェラの望みはそれだけだったから。
「この星がなくなるまでは終わらない」
それが最終的なルクールの答えだった。
(ナラバホシヲナクシテシマオウ)
そのための作業方法も期間の予想も出来た。
あとはそれを実行する権能が在ればいい。
「終わりは私の中に存在していると指示されている。自動的に発動するのだと」
自嘲気味にルクールは笑った。
(るくーるノケンノウガホシイ)
ヴィェラはそうしてルクール達を騙してでも手に入れようと決める。
ヴィエダイスの権能を。
議会では生き残った4人とルクールが顔を合わせ話をする。
ルニーアには質問に答える以外の行動は禁じられた。
レンカはまた元の世界を望み、クララはより強い機体を目指すという。
ルクールはルニーアを許してほしいといい、ヴィェラはそれに賛成する。
そうして拮抗した会議はルクールの要望を通し、罰を一等減らし幽閉とした。
特別な条件が揃わなければ解かれない無期限の懲役。
そしてヴィェラの策略通りに、ルクールは全てを差し出すのだった。
「牢獄に入るには全てを捨ててもらわなくてはならない。ルニーアのためにそれができるの?」
そのヴィェラの囁きは、ルクールには救いに聞こえた。
そうして全ての権能をヴィエダイスに譲り、同じ様に全てを失ったルニーアに寄り添った。
ここにいたった記憶までをも差し出して。
漆黒の闇に3面の緑文字が並ぶ。
ーーではルクールの権能を持って、この3名をヴィエダイスとして改めて定義します。
ーー同意
ーー同意
そうして世界はヴィェラの望む破滅へと歩みだしたのだった。
無限とも思える星を消費する旅路へと。




