【閑話:出会いの結末】
ルニーア達は世界を相手に勝利した。
「これでもう奪われることはないのね‥‥」
ルニーアは感無量といった雰囲気で、わーわーと喜び合っている子どもたちを見る。
最後の敵となったヴィェラを倒し、これでもうルニーア達を攻撃する大陸はなくなり、誰も子どもたちを奪えなく成った。
喪失と違和感を積み重ねてきたが、ここまで来たのだと、ルニーアはあのルクールと出会った日を、ディエバスを奪われた日を思い出していた。
未だ未完成だったルニーアは涙すらまだ流せなかったのだ。
(ルクール‥‥これでよかったのかしら?)
今そうしてもう争いはなく成ったと考えると、あの日ルクールが話してくれたこの星の意味が失われるのだとも気づいた。
すいっとシフトするように何もない空間から黒い球体が現れた。
直径5mほどのそれは、ルニーアもよく知るルクールの乗っていた監視装置だ。
「zastávka!!」
ルクールとは違う声が球体から響き渡る。
ルニーアは体が動かせなくなった事に気づく。
思考さえ止められそうになるが、それには抗うことができた。
すっと音がなくなり静かになったので、何事かと驚いて子どもたちを見ると、そこにはスイッチを切られたように固まっている子どもたちの姿。
野うさぎはきりんを抱き上げて回っている最中だ。
黒い子たちは互いの肩を抱き合って、大きな口で笑ったまま。
凍りついたように固まり静まった子どもたち。
すっと球体の上半分が開いて、金色の姿を下ろした。
それはルクールに似ていて少し違う姿。
先日まで争っていたヴィェラの声だった。
「やってくれましたねルニーア‥‥許されませんよこんなことは」
ぶんっぶんっと何度か音がして、同じ様に宙に現れる球体は全部で4つ。
その一つからはルクールも降りてきて、悲しそうにルニーアを見ていた。
ルニーアを断罪するヴィェラは執拗に罰したがる。
クララとレンカが生産設備の復旧に重きを置くのに対して、ヴィェラは罰こそ必要だと重ねて意見した。
議会の進行は概ねヴィェラの思う方向に向かう。
ルニーアは期日を切らず幽閉することと成った。
最後までルクールが庇うので、処分してしまうことは出来なかった。
「ルニーアの育てたGM達のデータも共有してもらい、一歩前進できました」
それがヴィェラ達のルクールに提示した成果だった。
今後の運営にも提案があり、4人で方針を決めイレギュラーに対応しようとヴィェラが提案し、承認される。
最終的な決定権はルクールにしてもらうのでと決めたのに、ルクールは辞退する。
「私はルニーアの側にいたい」
それがルクールが3人に告げた最後の答えだった。
レンカとクララは考え直すようにルクールを説得し、そのルクールの決定に反対した。
ヴィェラがそれでもルクールが決めたのだからと、ルクールについて意見が割れる。
最終的にクララがこれに同意して、レンカの反対の中それが執行される。
ヴィェラの手によって。
それは体を失ったルニーアが落とされた地獄。
世界から切り離され、なにも感じ取れない空間。
この灰色の世界には時間の流れすら無かった。
与えられたのは無限の時間と、思考の自由だけ。
記憶すらほとんど失ってしまった。
それは本当にルニーアだといえるのかと、ルクールは悲しんだ。
そうして側にいてせめて一緒にすごそうと、同じ地獄に自ら降りるルクール。
条件としてヴィェラがだした事に従い、記憶をすべて引き渡して。
まっさらな状態になって二人きりになると、ルニーアは遠慮なく気持ちを伝えられた。
ーー私はあなたのことが好きよ
ーーー私も好きなのだと思う‥‥今嬉しいと感じたよ
そういったやり取りをして過ごす。
意外にもそこはルニーアにとっては辛い世界ではなかった。
こぼれ落ちてしまった何かを取り戻すような時間だったから。
ルニーアは記憶をほとんど失っていたが、知識は価値を感じなかったヴィェラに見逃され残されていた。
莫大な量の図書館で得たディエバスに授かった知識。
それはルニーアをルクールを慰める知識となるのだった。
ーーあなたは何も知らないのね‥‥私が教えてあげる。世界は素晴らしいものなのよ
ーーー世界ってなぁに?
ルクールの疑問に果はなく、ルニーアの教えをいくらでも受け入れるのだった。
そうして長い時を経て二人は距離を詰めていった。
価値観という距離を。
ーーじゃあわたし達は姉妹のようなものね‥‥あなたは私の妹よ
くすくすとわらいの気配を感じるルクールは、自分もまんざらではないと気づく。
ーーー姉妹ってなんだろう?
そこからかとルニーアは思ったが、慌てない。
時間はいくらでも与えられていたから。
二人だけの永遠なのだからと。
自分の名前すらもう持っていなかったのに。




