【第533話:いそぐ理由がありました】
結局まともに動かせるのはアイカのスヴァータイス02だけと成った。
母艦も、ヴェスタの戦闘デバイスも復旧させるのに時間がかかりそうだとわかった。
「戦闘しないのなら、このままでも動かせますけど‥‥護衛一機で本船もぼろぼろでは怖いですね」
そうして一旦拠点までこそこそと戻ることにした。
「03と04もコアユニットをやられてしまいました‥‥復旧には数日かかりますね」
もちろん真っ二つになった01と05も修理は諦めることにして、パーツだけ回収した。
戦闘デバイスとしていた母艦の前部分も、深刻なダメージがあり装甲パーツなどはほぼ全滅なので組み直しとなる。
「‥‥まだ戦うことになるのかな?」
ユーリアは心配そうに胸をおさえ視線を下げた。
ルクールがそっと抱いて支えるが、その顔色もかなり悪い。
二人はしばらく式に乗せられないかもと、アイカは判断する。
胸を貫かれた痛みはしばらく忘れないだろうなと。
「少し落ち着いて復旧させましょうね、まだ次の打ち上げまで時間も有るんだし」
ヴェスタがそう言って、二人の肩を抱く。
がんばったねとねぎらっていた。
アイカはジュノと復旧のスタンスを話し合っていた。
どこまで直すかねと。
まだ早い時間にもどったので、一旦色々と拠点で整理をした。
「一旦3機分のパーツで01を作りましょう」
アイカがばらばらのスヴァータイス01と03,04を並べてそういった。
全部合わせたら1台分になりそうと言うので、ジュノは作ってもらうようお願いした。
「てつだうよぉ!」
ジュノとルクールがそう言って、3人でスヴァータイスを組み始めた。
コアユニットと右足だけがスヴァータイス01から引き継がれた。
ユーリアとヴェスタは晩ごはんの準備をゆっくりしながら、お茶を飲んだりしている。
「ユーリアもだいぶ料理出来るように成ったね」
にっこりと褒められて、うれしそうにするユーリア。
「えへへ、アイカが教えてくれたよ」
器用に野菜を切り分けながら、そういうユーリアは確かに危なげない手つきになってきていた。
「もうお腹痛いのは大丈夫?」
拠点にもどるまでユーリアはずっとお腹に手を当てていた。
「大丈夫だよ!なにしろ初めての経験で‥‥貫かれるとあんなに痛いなんて‥‥」
頬を染めてもじもじとそんな事を言うユーリアだった。
なんだか別の意味に見えるわねと、ヴェスタはにんまりした。
「すぐ慣れるよ!きっと」
ぱちんとウインクするヴェスタと、きょとんのユーリアには温度差が有るのだった。
しまったと口に手を当てヴェスタは思ったが、まあ間違ってはいないかと、勝手に納得するのだった。
寝る前にアイカがアストラル・プロジェクションをしてマナミと連絡を取る。
ここの所は黒対策で滞っていたので、互いに報告しあった。
(そうなの?ん‥‥ほんとだ!アイ達が近くにいる!)
マナミ達はもう川沿いを北上していて、明日にはこの拠点まで着くだろうと言われたのだ。
(まあショップを出てからは敵機も出ないしね、好調に飛ばしているよ)
マナミはにっこりとそういってアイカを励ます。
リーベもうんうんと嬉しそう。
アイ達を一番ケアしているのはリーベなのだった。
(あれ‥‥でもなんだかアイ達の気配がよわいわ‥‥距離は近いと感じるのに‥‥)
アイカが淋しそうに言う。
(どうゆうことだろ?間違いなく距離は近づいているのだけど‥‥)
じっとアイカがマナミを見る。
すっとリーベも確認する。
(‥‥これはまずいかもです‥‥二人の気配も遠いのです‥‥透けて見える)
もともとアストラル・プロジェクション中は少し半透明に見えるのだが、気をつけてみてみると後ろがよく見えた。
(ほんとうだ‥‥リーベははっきり見えるのに、アイカは透明感が高いわ!)
マナミも慌てて、確認してそういった。
(私からは二人はおなじに見えるわ‥‥これって‥‥)
マナミもリーベも息を呑む。
(位相が更にズレているのかも‥‥)
アイカの顔色は透明ながらも悪くなった。
(ど、どうなるというの?)
マナミがわたわたとするが、アイカは静かに答えた。
(どうなるのかはわかりませんが‥‥急いだ方が良さそうですね‥‥これは)
少しのんびりしようなどと考えていたアイカは、慌てるのだった。
まだ何も終わってなどいないのだと。
翌朝ヴェスタ達にも相談し、先を急ぐこととした。
スヴァータイス01も、ほぼ元通りの構成に戻せたので、護衛は2機とできた。
母艦は戦闘を諦めれば動かせるので、先を偵察してみてスヴァータイスで進めるのなら行こうと決めた。
谷の有るあの壁が、直径1000㎞程度と考えると、その中心まではあの戦場から100㎞程度だと予想された。
幸い敵機とは当たらず、中心部近くまで索敵で進んだアイカとジュノは、そこにまた壁を見つけた。
純白に輝き空を映す金属製の壁だった。
「これはまた‥‥とんでもないね」
ジュノはちょっと呆れるが、もうこの星のスケール感に慣れてきていた。
「この曲率なら、直径は50㎞くらいですかね‥‥高さは1000mくらいありそう?‥‥これが発射台なんですよ、きっと」
アイカはそう予想し、ジュノも頷けた。
「入口を探そう」
ジュノに言われて、アイカと左右に分かれた。
ヴェスタ達の本体が追いつく前にジュノが入口を発見した。
スヴァータイスがギリギリ入れる大きさの扉が有り、調べるとコアユニットからの操作で開閉出来た。
「これ‥‥母艦が通らないかも‥‥」
アイカも追いついてきて確認する。
「通りませんね‥‥足を畳んでも入れなそう‥‥Bセクターの探索型当たりが限度ですね」
高さは100mほどで、横も同じ程度にしか開かない。
中も同じ大きさの通路だと確認していた。
「‥‥気温が上がったね」
ジュノが外気温を確認して言った。
「4℃もあります‥‥ヒーターが要らないですねこれなら‥‥重力は2.4Gのままです」
色々とまた環境が変わるのが感じられた。
「あれは‥‥」
扉の外側に何かを見つけ、ジュノが機体を降りた。
扉の横の壁に背を預け、並んで2人分のシルエットがあった。
アイカはスヴァータイスで警戒を続ける。
「これ‥‥キリンと野うさぎだわ」
ジュノはAセクターで二人の最後を看取っている。
全く同じ容姿なので、身間違いようはなく眠るように動かない義体をただ見下ろしていた。
二人は手をつなぎ座り、安らかな顔で眠るように死んでいた。
黒達と同じソリッドステート義体なのか、腐食はあっても腐敗した雰囲気はない。
「そうとう昔に停止しているわ‥‥手をつないでるの」
ジュノはなんとなく手を合わせ、目を瞑った。
神を信じて祈ったことはないが、死者には祈りを捧げると決めていたジュノ。
これは残骸ではなく、遺体なのだと。
そう感じたのだった。
穏やかな微笑みに。




